象さんと王都
「うわ~、ここが王都なんだ~。すごいね、兄ちゃん」
「ああ、すごいな。本当に街が壁で囲まれているし、旧王都の風車よりもでかい木が街の中にあるぞ」
「まずは王城へ向かうよ。みんなは一応来賓ってことになるから、しばらくは王城で過ごしな」
「はい、うめ様、ありがとうございます」
「ああ、感謝する」
「いいってことよ。これも王都と旧王都の友好事業だからね」
旧王都でのバトルから数日、ぴぴ達一行はのんびりと王都へと帰還した。その中には、王都のバトル大会の見学者が10名同行しており、その中にはエレフとファントの姿もあった。
エレフとファントの2人は、王都の門でも騒いで、街中の道路でも騒いで、王城についてからも騒ぎっぱなしだった。そして、いまはみんなで応接室にてくつろぎ中だ。
「ねえ兄ちゃん、旧王都で食べてた草よりも美味しくない?」
「ああ、こっちのほうが美味いな」
「気に入ってもらえたようでなによりだよ。これは、王都の近くにある草原の草さ」
「それって、牛モンスターのいた草原?」
「その通りだよ」
「王都の牛モンスター。もしかして、牛の女王様お気に入りの、牛のモンスターがいる場所の美味しい草ってやつなのか?」
「おや、エレフは知ってたのかい?」
「ああ、噂程度だけどな。ただ、牛の女王様がそこの草が好きで、そこでしばらく生活してたって話は、旧王都ではそこそこ有名だからな」
「あたしらも旧王都へは草を輸送するけど、やっぱり輸送中に多少は品質が低下するんだろうね。夜もこっちで食べたほうが美味しいって言ってたんだよ」
「この草の生えている場所は、僕と兄ちゃんでも行けるのかな?」
「奥へ行くのはおすすめしないけど、入り口なら2人でも問題ないはずだよ。もし行きたいなら声をかけておくれ、案内人を兼ねて、護衛を何人か付けさせてもらうから」
「はい、ありがとうございます!」
どうやらエレフもファントも行く気まんまんって感じだ。一緒についてきたほかのメンバーも、ちょっとは興味があるようだけど、あくまでもバトル大会の見学メインといった雰囲気だ。
「ねえうめ、バトル大会は何日後なの?」
「3日後だね。場所は王都の北門からちょっと南東に行ったところにある闘技場と、北門の外でやるよ」
「闘技場はわかるけど、外でやるの?」
「そうさ、ランクでいうと、☆3~5の試合は闘技場でやるけど、☆6以上はけっこう派手な戦いになるからね、外でやるんだよ」
「それじゃあ、直接は見れないのか~」
「そうだね。☆6以上の試合は、こないだ旧王都でミニ大会をやったときみたいに、中継でやるのさ」
「みんながどこに出るのかはわかるの?」
「みんなって言うと、うすき達に、リオン、アオイ、グラジオラス達ってことでいいかい?」
「うん、それと出来ればカリンやピヨ、エリカもだね」
「ちょっと待ちな。マルバ、わかるかい?」
「ええ、把握しております。みなさん☆7以上のランクに出場予定ですね」
「そうなんだ。アオイ、ピヨ、エリカは、☆6ランクじゃなかった?」
「そうなのですが、もうご存知のように王都のバトル大会はチーム戦です。そこで、チームの実力を確認した際に、☆7に出場ということになったようですね」
「そっか~、じゃあ、みんなが戦うこともあるのか~」
「チームとしても面白い組み合わせになっておりますよ。まず、アオイはカリン殿のチームのようですね。先ほど名前の出たお2人も同じチームですので、4人チームでの登録となっております」
「なるほど、わたしと一緒に修行したメンバーそのままなんだね」
「ねえねえ、我輩と一緒に果物狩りに行った、グラジオラス達も☆7ランクなの?」
「ええ、あの3人はハピさんと帰ってきてから、正式に☆7ランクに昇格しましたからね。今回の大会でも、あの3人でチームを組んで、優勝を目指すといっておりますよ」
「そっか~、元気そうでなによりだね」
「はい、ライオンのギルマス達は組んでるの?」
「ええ、リオン殿はうすき大臣、クロ将軍、ブランシュ殿と組んで、4人チームで出るようですね。今回の優勝候補筆頭といわれておりますよ」
「へ~、ギルマス達も組んだんだ。ちょっと意外だったかな」
「そうですね。皆さんそう言っておられますね。このほかにも、ナノハナ団長をはじめとした、軍の大物が出場しますし、ハンターからも、☆7チームが何チームか出場するようですよ」
「それは楽しみだね」
「そうだ。エレフとファントもせっかく来たんだし、出てみれば?」
「ええ、僕らはいいよ、よわっちいし」
「ああ、旧王都で嫌というほど本当の強者の強さを思い知ったからな」
「じゃあ、☆3の大会にエントリーしといておくれ」
「「うめ様?」」
「安心おし、☆3の大会は普段狩りなんかをしない、非戦闘職が出る部門なんだよ。出てくるのは基本的には商人や料理人とかその辺だね。戦い方も、トーナメントのような本格的なものじゃない。勝っても負けても1回戦うだけっていう、それこそ軽いお祭りのようなものだからね」
「う~ん、ならいいのかな~?」
「そうだな。一応出てみるか」
「そうだね、兄ちゃん」
「それじゃあ、あたしはそろそろ行かせてもらうよ。あんたらの世話役も来たみたいだしね」
「はい、うめ様ありがとうございました」
「ああ、感謝する」
こうして、この場は解散となった。うめ達はそれぞれの場所に帰って行き、エレフやファント達も、それぞれの個室に案内されるようだ。なので、ぴぴ達も自分達の部屋に帰ることにする。
「みんな元気にしてるかな~?」
「たぶんみんな元気に修行してたんじゃないかな。3週間くらいあったもん、きっと強くなってるね」
「じゃあ、明日はみんなの様子でも見に行く?」
「そうだね、そうしよっか~」
部屋に帰ると、手紙が3通置いてあった。
「手紙だね。丁度1人1通ずつ?」
「うん、早速開けてみよ~」
3通は、どれも似たような内容だった。早い話が帰ってきたら来てほしいという内容だ。
「ぷう、ハピ、なんて書いてあったの?」
「なんかね、いろいろ技開発したりしたから、バトル大会の前に見てほしいって」
「我輩のは時間あったら王城の訓練場に来てくれって書いてある」
「私のも似たような内容だった。そういえば、私達が一緒に修行したメンバーが、それぞれチームで出るって事だよね?」
「うん、そうだね」
「我輩のところは果物狩りだけどね」
「ちょっと面白そうな展開だね。でも、勝つのはギルマス達かな?」
「ううん、勝つのはアオイ達だよ! ちょっとアオイのところに行ってくる!」
「あ、ぷうずるい、私もギルマスのところ行ってくる!」
「え、え? じゃあ、我輩も訓練場に行ってこよっかな」
こうしてバトル大会は、ぴぴ、ぷう、ハピがそれぞれ一緒に特訓をしたメンバーがチームで出るという、なかなかに面白い展開になるのだった。




