ぷりぷり
ハピはぷうの案内でゴブリンキャッスルの地下へと降りていく。そこには、巨大な空間が開いていた。もちろん土が大きくえぐれている理由は、ゴブリンキャッスルの下の土を使って、ゴブリンゴーレム軍団を作り出したからだ。
「このお城の中って、こんな風になってたんだね。でも、頭でっかち恐竜のゴーレムだと、出るのにスペース足りなくないの?」
「そこはかっこよく地面から飛び出す予定なの。ゴブリンキャッスルの下から、大きなお口を開けてゴブリンキャッスルを飲み込みながら登場する。かっこいい気がしない?」
「うん、それはかっこいいかもしれない!」
そして、ついに頭でっかち恐竜ゴーレムが姿を現す。おお~、迫力満点だ!
「乗り降りは頭の後ろから出来るよ。いこ~」
「「お~!」」
そして、頭でっかち恐竜ゴーレムに3人で乗り込むと、起動させる。
「それじゃ、もうゴブリンゴーレムの製造は一旦止めるね」
「うん!」
「これをこーしてっと、うん、いいかな。ゴブリンキャッスルの防御魔法も解除したから、いつでも出撃できるよ」
「よ~っし、それじゃあ、早速出発してもいいかな?」
「「うん!」」
「では、出撃~!」
3人の乗った頭でっかち恐竜ゴーレムは、ゴブリンキャッスルと、ゴブリンキャッスルの屋上にいたゴブリンキングゴーレムを一口で飲み込んで地上に飛び出した。そして、気合をこめる意味も込めて、大きな雄たけびを上げる。
「ぎゃっおおおおおおん!」
「くくくくくく、見せてやろう、我輩の真の実力を!」
時は少しさかのぼり、うめ達は、ウォークライのかかったゴブリンゴーレム達に大苦戦していた。
「うめ様、全戦力を投入しましたが、押し返せそうにありません」
ウォークライのかかったゴブリンゴーレムの強さに、1つのチームが前線をキープできる時間が極端に短くなり、前線を支えるチームの交代ピッチは、すでに限界にまで上がっていた。
「ハピはどうした?」
「ダメです。いまだに見つかりません」
「く、こうなったら仕方ない。ハピの捜索は中止、防衛軍のメンバーも全員前線に投入するよ」
「はっ!」
そして、妖精族で構成させる旧王都防衛軍のメンバーも、全力投入となった。うめとザクロすらも前線を支えるために前に出たその時、ゴブリンキャッスルが食べられた。
がごおおおん!
巨大な地響きが周囲に鳴り響く中、ゴブリンキャッスルの下から突如現れた大きなお口は、ゴブリンキャッスルと、その屋上にいたゴブリンキングを一口でその大きなお口に収めた。その瞬間、全ての時が止まった。いや、実際に時間が止まったわけではないのだが、全てのゴブリンゴーレムが活動を停止し、地面の下から現れた、それに、旧王都軍に参加している全メンバーは、目を釘付けにされた。
バキバキバキバキ!
そして、その大きな口で思いっきり咀嚼する。ゴブリンキャッスルの頑丈さゆえか、バキバキという咀嚼音が辺りに鳴り響く。その光景は、まるで凶悪な肉食獣が、獲物を捕食しているかのように、その口からはゴブリンキャッスルやゴブリンキングゴーレムの材料である土が、滴る血のように零れ落ちる。そして。
「ぎゃっおおおおおおん!」
「くくくくくく、見せてやろう、我輩の真の実力を!」
すさまじい音量の咆哮が、大気を揺るがした。見たことも聞いたこともない圧倒的な存在感、全長100mという頭でっかち恐竜ゴーレムの登場は、旧王都チームを恐怖のどん底に追いやった。旧王都軍の時間は、いまだに止まったままだ。頭でっかち恐竜ゴーレムは、どすんどすんぎゃお~んと、地響きをともないながら一歩ずつ近づいていくが、誰も動けなかった。
「イブキ、マルバ、行くよ」
「行くって、うめばあ、あれとやるのかよ」
「ふふ、確かにあんな大物、あんたらも見たことはなかったね。よし、あたしが行くから、あんたらはザクロに協力しておやり」
「はい、うめ様」
「おいマルバ、おまえ、ついて行かないのかよ」
「情け無い話ですが、全身震えてしまっています。これではまともな戦闘は不可能でしょう」
「イブキ、あんたもだよ。ザクロを頼むよ」
「ああ、わかったよ、うめばあ」
「では、我々はこれで。うめ様、御武運を」
「ああ、じゃあね」
イブキとマルバが飛んでいくのを見守って、うめは動き出す。
「さて、あたしの全力がどこまで通用するかだね。せめて、あの子達が逃げれる時間を稼げればいいんだけど、って。あたしまで雰囲気に流されちゃってたけど、よくよく考えれば、あれもぷうのゴーレムだよね。ぴぴの言ってたちょっと面白いことってのがあれってことだね。ふう、咆哮に混じってた魔力から、明確な悪意を感じたからびびっちゃったけど、よくよく観察すれば、2歩進むごとにぎゃおんとかいいながらポーズを決めてるあたり、向こうはあくまでも全力でお遊びの最中ってことかね」
うめは自身の十八番にして、最大火力の魔法である、竜を模した火魔法を構築すると、全力で飛翔する。少しでも威力の減少を抑えるために、近づいて撃ちたいからだ。
「くらいな、ドラゴンフレイム!」
うめの高速飛翔からのドラゴンフレイムが、頭でっかち恐竜ゴーレムを襲う。しかし、頭でっかち恐竜ゴーレムは、うめのそんな攻撃をまったく気にせずに一歩踏み込んで、高速の噛み付き攻撃をうめに対して繰り出した。うめのドラゴンフレイムごと、うめを一口で飲み込んだ頭でっかち恐竜ゴーレムは、ごくんと、うめを丸呑みにして、勝利の咆哮をあげる。
「ぎゃお~ん!」
「うめばあ・・・・・・」
「うめ様・・・・・・」
「あれっておい」
「ああ、妖精族のうめ女王様だったはずだ」
「食われちまったぞ」
「「「「「うわああああ!」」」」」
一気にパニックになった旧王都軍だったが、ハピの操る頭でっかち恐竜ゴーレムは一切容赦しない。歩幅の違いから一瞬で旧王都軍に追いつき、次から次へとパクパク食べていく。地面ごとその大きなお口で食べ歩くさまは、まさに地獄絵図というのにふさわしかった。妖精達も大パニックだ。空に逃げようにも、頭でっかち恐竜ゴーレムは思いっきり空気を吸い込み、周囲の空気ごとまとめて妖精達をお口に運んでいく、そしてもぐもぐされる。もはや誰も抵抗すること叶わず、一目散に旧王都へと逃げていく。
だが、ザクロだけは冷静だった。
「みんな、旧王都に逃げちゃダメ! あの怪物を街に入れることになるよ! どこでもいいから全力で旧王都から離れ、きゃ~!」
ザクロの指示は実に冷静なものだったが、ハピの操る頭でっかち恐竜ゴーレムはそれを途中で妨害した。思いっきり空気を吸い込み、ザクロも一口で捕食した。
とはいえ、実戦ならともかく、今はミニバトル大会の最中に過ぎない。旧王都防衛軍の要塞も、旧王都を囲う森林地帯も、ぴぴ達が壊す可能性は0だった。そのため、今回に限って言えば、ハピの頭でっかち恐竜ゴーレムの脅威から逃げるには、要塞の中に入るか、森林地帯に逃げ込むのが正解だったのかもしれない。
そして、ザクロの指示がもっともだと思った旧王都軍のメンバーは、ちりじりに旧王都以外の場所へと逃げ出した。とはいえ、ゴブリンゴーレムとの戦闘ですでに満身創痍で、まともに走ることすら出来ないものが多かった旧王都軍が、ハピの頭でっかち恐竜ゴーレムから逃れられるはずもなく、結局、全員捕食されるのだった。
戦いは終わった。戦闘開始から1時間半、旧王都軍が全員捕食されて終了だ。
「そういえば、司会のザクロもいなくなっちゃったから、終了の合図どうしよう?」
「そうだったね。まずはザクロを探そうか」
「うん」
ちなみに捕食された旧王都軍のメンバーは、頭でっかち恐竜ゴーレムの体内で回復魔法をかけられ、頭以外を土団子に閉じ込められたうえで、お尻からぷりっと排出された。食べられたらこうなるんだからね! っていうことを、わかりやすく教えるための、ぷうのにくい演出というわけだ。
「う~ん、あ、みっけ。あれがぷりぷりザクロだね」
「ほんとだ。お~い、ぷりぷりザクロ~」
「ちょっと待って、なにそのぷりぷりザクロって」
「え、今のザクロの状況? だって頭でっかち恐竜ゴーレムに食べられて、お尻からぷりって排出されたでしょ?」
「お願い、私も女の子なの、その呼び名はやめて・・・・・・」
ザクロもなんとなく自分の状況はわかっていたが、やっぱり面と向かってあれと一緒にされるのは、女心に耐えられない。いや、男でもかなりつらいだろうが。
「まあまあ、ところで、勝負ありってことでいいのかな? いちおう、広場に出ていた旧王都のみんなは、1人残さずぷりぷりモードになってもらったんだけど」
「そうね。ここまでされて負けを認められない人もいないでしょう。終わりにしましょうか」
「うん」
こうして、旧王都軍とぴぴ達のバトルは、大量のぷりぷり動物と妖精を排出し、ぴぴ達の圧勝で終わったのだった。




