牛の国③ 牛の王デイジー・ミーノス
初めてのブクマをしてくださった方に心よりの感謝を。
河内弁ネイティブな方がいたら御教授ください。
「お嬢! ウチのカボチャ持ってかんかい!」
「お嬢! こいつは竜の鱗で作ったフライパンじゃ!」
「姫様、冷たい牛乳はどうだい?」
私たちは港に隣接した市場の中を歩いていく。
市場は活気に溢れ、王女たるサンフラワーに気軽に声を掛けていく。
サンフラワーもシゲミに肩車をされながら街の牛たちに手を振っている。
ミーノス王国。何よりも獰猛と言われる牛獣人の住まう国。
成る程、確かに牛の国だ。男達は皆2メートルを優に越え、女の牛たちでさえシゲミと同じ位の身長だ。
サンフラワーも一人で歩いてよく踏まれそうになったと言っていたが、確かにその通りだ。
彼女が人混みに紛れれば、まるで牛たちの目線に入らない。だがそもそも王女を踏むな。ケガじゃ済まないぞ。
人間がこの中に混じれば少なからず恐怖を感じるだろう。
「うへへー、ここの牛乳を飲むと国に帰ったーって気になるよー」
「あらまあ、お上手だね。もっとサービスしようか?」
でも、サンフラワーはこの牛たちに愛されて育ったのだろう。それは見ただけで解る。
牛たちは皆彼女に優しく、彼女もまたそれに応える。
牛たちが獰猛だと言うやつらにこの景色を見せてやりたい。もう二度と獰猛などと言わせない。
「なあ、サンフラワー。このまま城へ向かうのか?」
「うん、ちょっと待ってねー。ねえ、みんなー! お母様どこにいるか知らない? どうせその辺ぷらぷらしてるでしょー?」
サンフラワーが王の所在を牛たちに尋ねる。王がぷらぷらしてるのか。自由だな。
「デイジー様なら広場のテントじゃ!」
「今日は年に一度の催し物じゃからのう」
「だって。シャオエン、行ってみる?」
「そうだな、早いうちに会っておこう」
大道芸でも来ているのだろう。私たちは市場を抜け、大通りの広場へと向かうと、お目当てのそれはすぐに見つかった。
大きな天幕。
天幕の天辺にはこの国の紋章である【笑み牛】―活きがいいよっ! って感じのニッコニコした牛―が風見鶏の様にくるくる回っている。
サンフラワーが入り口の牛に声を掛ければ、中に光が入らぬ様にそーっと幕を開けてくれる。
その瞬間。
「グエーー!」
断末魔の様な叫びが聞こえた気がするが聞き違いだろう。気を取り直して中に入る。
中に入れば溢れんばかりの熱気。
中央を囲む様に観客席を設けた会場には牛たちがギッシリと詰まっている。
そしてその中央には闘技場。
「気合い入れんかー! ボケー!」
「みんなお前に賭けとるんじゃー!」
闘技場に容赦なく降り注ぐ怒声。
なんて獰猛な奴らだ。
闘技場を観れば、下半身が地中に埋まり気を失っている牛。
天幕の天辺には、上半身がテントに突き刺さり力無くぶら下がってる牛。
ここは処刑場かなにかだろうか。
中央では二人の牛が向かいあい、互いに腕を取り合っている。
「なあ、サンフラワー。本当にここで合っているのか?」
「あ! お母様ー!」
どうやら母親を見つけたようだ。貴賓席を探すが中々見当たらない。
やがて片方の牛が空高く投げ飛ばされ、もう片方が投げ飛ばした牛をブリッジの様な形で固め一緒に落下していく。
いや、投げ飛ばした方は牛じゃない、人間だ。人間と牛が素手で戦っているのか?
「モーー!」
悲鳴と共に地面に叩きつけられた牛はピクリとも動かない。
ゴングが鳴り人間の方は高々と右手を掲げる。
「今夜は焼き肉じゃーー!」
一斉に起こるブーイング。
「それが牛の王の言う事かー!」
「クソがー!」
「負けたー! おけらじゃー!」
容赦ない罵声と投げ入れられる空瓶。
……今牛の王と言ったか? と、言う事は―
「お母様! ただ今戻りました!」
「おう! サンフラワー! 息災そうだな!」
これがサンフラワーの母親。
牛の国に君臨する人間の王。
この国は大丈夫なんだろうか。
「お母様ー!」
サンフラワーが闘技場に降り立ち、母親に駆け寄る。
だがこんな頑強な母親でも親子の感動の再会だ。熱い抱擁が見れるのだろう。
そして、母親の胸に飛び込むかと思いきや直前でピタリと止まる。緊張でもしているのだろうか。
「どうしたサンフラワー? 遠慮はいらんぞ?」
「それじゃあ遠慮なく。……お母様。私はあなたに決闘を挑みます!」
は? なんて言った今?
「……ああ?」
女王の怒気が一瞬で高まる。
もう一度言う。この国は大丈夫なんだろうか。
リ◯ンジャー!
イン◯ェルノ!
ス◯ーク!




