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人魚大戦  作者: 鮭さん
16/33

閑話 赤いピカピカ①

本日2本目です。

このエピソードは物語の後半に入れる予定だったのですが、「今入れるべきだ」と衝動が抑えられませんでした。

 鳥はどこにでもいる。


 この大陸の鳥達が見たものは全て我々に共有される。


 その情報を元に他の国相手に上手く立ち回る。


 それが鳥の国の生き方。


 英雄12の功績の一つ、『ステュムパーロスの鳥』。


 我々はその末裔と言われる。



 ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶


 アイツと初めて会ったのはまだ10になるかならぬかのガキの頃。


 親父に連れられて牛の国に来た時だ。


「ゲゲ、向こうにも同い年の娘がいるから仲良くしろよ」


「フン、向こうが下手に出て来たらそうしてやる」


「牛だからデカいぞー。オマエの倍はデカい」


 空から眺める街並。行き交う牛たちを見ればそれは分かる。鳥の国とはこんなにも違うものなのか。


「フン、デカけりゃいいってもんじゃないだろ? 俺は負けない」


「おう、その調子だ。あの屋敷にゆっくり降りるぞ」


 そして門の前に立ち、俺が耳を塞ぐと親父が声を張り上げる。


「うしのーー!!」


 街中に響く様なデカい声。


 すぐに屋敷の方からドタドタと揺れる様な足音が響く。


「とりのーー!!」


 全力で走って来る牛の王。山の様な巨躯と全身の傷。笑顔なのに身体の芯から冷える様な威圧感。


 俺は親父以外の『王』と言う物を肌で感じた。


「よう来たのう! 汚い所じゃが上がってくれや!」


「おう、ゆっくりさせて貰う。それから、コイツが俺の息子だ」


「ワキンと言います! 牛の王にお目に掛かれて光栄です!」


「坊(ぼん)、堅っ苦しい挨拶は抜きじゃ! ……デイジー! お前もこっちに来て挨拶せんかい!」


 俺の倍はある牛の王の娘。最初が肝心だ。どんなに強そうな奴が来てもビビるな、俺。


 すると、玄関がギッと開き、首に赤いピカピカをぶら下げた俺よりもずっと小さい何かがドア越しに顔を出した。


 そして、その小さな何かがそのままこっちへ走って来ると牛の王の足にギュッと捕まりながら挨拶する。


「……デイジーじゃ」



 俺はその時、初めて人間を見た。



「……親父、騙したな」


「ゲゲッ! その顔を見ただけで騙した甲斐があったもんだ!」


 カラカラと親父が笑う。


「そう言う訳で人間じゃがこいつはワシの娘じゃ。仲良うしてやってくれや」


 牛の王に促され、改めて目の前の小さな人間に挨拶する。


「初めまして。ワキンだ。オマエと仲良くなりたい」


「……お前、ヒョロヒョロのガリガリじゃのう。飯はちゃんと食っとるのか?」


 初めて人間に暴言を受けた。言い返さねば男じゃない。


「……オマエだってチビだろうが。チビ!」


「ヒョロガリがなんか言うておる!」


「ヒョロガリ言うな!」


 親父たちはニコニコするな! 俺たちは初対面で喧嘩してるんだぞ?


「なら確かめたるわい!」


 生意気なチビが飛び掛かってきた。


「やれるもんなら―」


 俺は大きく翼を広げると、


「やって見ろ!」


 チビが首にぶら下げた赤いピカピカを奪い空に舞う。


「あ! それはワシのじゃ!」


「俺は光るモノが大好きだ。この赤いピカピカは俺にこそ相応しい。返して欲しかったらここまで飛んで来い」


 ほんの3メートル程の高さでも、このチビじゃどうしようもないだろ。


「……」


 するとチビは下を向いた。ふん、泣いたら許して返してやる。


「……今夜は」


 今夜は?


「焼き鳥じゃあー!」

「モッ!」

「ゲッ!」

「はあぁぁっ!?」


 あり得ないだろ! このチビ、俺の親父と牛の王を踏み台にして俺に飛び掛かって来た!


「返せー!」


「バカ! 落ちるぞ! ちゃんと掴め!」


 この高さでも落ちたら大怪我だ。俺は必死で身体の向きを変えながらこのチビが落ちない様にしていく。


 そして、俺の首に掛けた赤いピカピカを取り返して自分の首に掛けると、チビが大声を出す。


「はああー! 親父! ワシ飛んどるぞ!」


「……オマエはこの高さが怖くないのか?」


「ワキンとか言ったの! お前、凄いのう!」


 訳が分からない。さっきまで喧嘩していたのに、今はキラキラした目で俺を見つめる。


 でも不愉快じゃない。


「なんならもっと高く飛べるぞ」


「本当か! なら牛の国が全部見える位に!」


「上に行くと風が強い。せいぜいこの辺り一帯位の高さだ」


「構わん! 親父! ちょっと空行って来る!」


 俺の親父と牛の王が顔に足あとを付け、手を振っている。


 俺はチビを連れて空高く飛んでいく。


 上昇を続けながら、今思い付いた事を口に出してみる。


「……おい、牛の国は強い奴が王になるんだろ? 今の王の代が変わればお前は王の娘じゃなくなる。それでもし、牛の国で居場所が無かったら鳥の国に来るか?」


 目一杯の勇気を出して言った。さりげなく言えたつもりだ。


「いいぞ」


「本当か!?」


「ワシが牛の王になれなかったらな!」


「約束だぞ! 絶対に俺の国に来い!」


 その時は空から鳥の国を見せてやる―


 ―その時はそう思った。


 俺の計算外は、このチビがやがて本当に牛の国で一番強くなり、牛の王になった事だ。


 そんな未来を知る由もなく、俺は背中にチビを乗せてどこまでも高く飛んで行く。


登場人物辞典(前話とちょっと違うよ)

ワキン 鳥の国の王。年齢はデイジーと同じ位(27、8)。元ネタは色々。サンダーバード、◯◯◯◯◯◯、ステュムパーロスの鳥等。


先代ミーノス国王 強い牛さん。デイジーにより、彼の笑顔を元に『笑み牛』の刻印は作られている。

先代鳥の国の王 声デカい。しかも結構いい声。

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