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人魚大戦  作者: 鮭さん
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ネメアの獅子③ 連合国会議

 堅っ苦しいのは苦手じゃ。


 ハーキュリアの33の国々が一堂に会し、テーブルを向かい合わせ並んどる。


 年に一度の連合国会議。


 人間と獣人の割合は7対3と言ったところかの。


 人間だけの国、人間と獣人の混在する国、そして獣人だけの国。10年程前は6対4だったからやはり少しづつ人間の割合が増えて来ちょるな。


 ちなみに我がミーノス王国はカテゴリーで言えば獣人だけの国に属する。隅の方に人間街があるものの、殆どの住人が牛じゃからの。


 まあ、話し合いと言えば、国と国を結ぶ鉄道の計画と進捗、農業国と工業国の連携、対オリアナへの貿易計画等を長々と言っておるが、正直ワシには右から左じゃ。


 すまん、この件に関してはワシの次の王が頑張ってくれ。


 そして議題は人魚討伐の件になる。


 さすがにこれはオリアナへの貿易に関わる事じゃ。どの国も「人魚討つべし」で一色になっとる。


「オリアナより魔物討伐の英雄『ワトソン家』の協力を取り付けましたぞ!」


 会議場の人間たちに歓声が上がる。


 おいおい、意味が分かっとるのかの。ワシらはその「魔物」の国の代表じゃぞ。見てみい、獣人の国の代表たちの嫌そうな顔を。


 お前らは、このハーキュリアも人間だけの大陸にれば万々歳なんだろうが―


 気に食わんのう。


「では、今回の人魚討伐に関して何か意見のある国はありますかな」


 議長の発言にワシは高々と手を挙げる。


「これはこれは珍しい。ミーノス王国の王、デイジー殿。発言をどうぞ」


 珍しいは余計じゃ。


 さて、あのひまわり頭の為にも時間を稼ぐとしますかの。


 ワシは会議場の面々の顔を見て、たった一言こう言った。


「勝てん」


 ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶


 今日は海から川に出張!


 他のみんなは船の財宝や食料を求めて船を沈めるみたいだけど私は違う。


 私は船を沈める事が好き!


 溺れる陸の生き物(おばかさん)達を眺めるのが好き!


 今日も漁船発見!


 必死で船を漕いで逃げるみたいだけど、残念ここは私の領域(ゾーン)。


 船の底をボコボコに穴を開けて全部沈めてやる!


 私は『カジキの人魚』!


 私はスピードスター!


 誰も私に着いて来れない!


 誰も私から逃げられない!


 ……その私を、一つの影が一瞬で追い抜いた。


 たかが人間が、回転する槍を動力に、私を一瞬で抜き去り、振り向きざまにこう言い放って来た。


「残念、ここは私の領域(ゾーン)」


 ……ふざけるな! その回転する槍さえ無ければ私に追いつけないクセに!


 ならば深さだ! この程度の深さの川でも、急激に潜れば身体を痛める脆弱な人間が―


 なんでもう川底にいる!


 なんでお前は平気でいられる!


「人魚のみなさーん、仲良くしましょー」


 棒読みでやる気のない台詞が余計に私を逆撫でる。


「ふざけるな! 誰がお前なんかとっ!」


「だよなー……かき混ぜろ、『神の三叉』」


 その日私は最高速度を更新した。


 普段の泳ぐ速度の数倍の速度で、一直線に川から海に押し流された。


 畜生、覚えてろー!


 ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶ϵ( 'Θ' )϶


「これはこれは。牛の国の王ともあろうお方が弱気な事を」


 あーあー、どいつもこいつも慇懃無礼じゃのう。


「ワシらは人魚より速くは動けん。人魚より深くは潜れん。ワシらの攻撃の届かぬ範囲から一方的に攻撃されるのがオチじゃ」


 そう、一番の問題は制海圏じゃ。人海戦術で押し切ろうと思っとる節があるが、それこそ焼け石に水じゃ。


 皆んな揃って海に沈む。


 むしろそれが目的かも知れんがの。


 戦闘力の有る獣人たちを船に乗せ、人魚に勝てれば良し、勝てなくとも良し。


 獣人のいなくなった地区に人間を住まわせればいいのだからの。


「ぐむ……」


 その口ごもりが答えじゃ。全くもって小賢しいの。


「ワシゃあ大事な国民をむざむざ死地に赴かせるのが忍びなくてのう」


 弱気な姿勢を見せて賛同してくれる国がどの位あるか。五分五分と言ったところかのう。


「ゲゲゲ。それじゃあヌルいな」


 横から嫌な奴がワシだけに聞こえる様に口を挟んで来た。


「牛の国の王。オマエ面白いモノを飼ってるだろ?」


 褐色の肌に腕と一体化した大きな翼。


 鳥の国の王、ワキン。こいつとは昔からの腐れ縁じゃ。


「目敏いのう、アホウ鳥」


「ゲゲゲ。我が国の情報の網から漏れると思うなよ。デイジー、アイツはなんだ?」


 もうシャオエンの事を嗅ぎつけておる。本当にこいつは油断ならん。


「知らん。サンフラワーが連れて来た」


「人魚討伐の要、海の王の神具を持つ奴をか? アレは今すぐにでも上手く使うべきだ」


 こいつの考えは分かった。


 つまり、漸く出来たばかりのサンフラワーの友をすぐにでも人魚討伐に駆り出すべきと言いたいのじゃろう。アイツらの願いなどお構いなしに。


「……いらん事は言うなよ?」


 体温が急激にに上がるのを感じる。


「議長! 私、鳥の国の王ワキンより提案があります! 牛の国は隠し事をしている! 牛の国には今、海の王の神具の所持者がいる!」


「ワキン、貴様!」


「ですので、人魚討伐を半年延期して貰えないでしょうか!」


 ……今なんと言った?


「その様な者がいるのなら、今すぐにでも討伐に向かわせるべきではないかね」


「同(・)士(・)討(・)ち(・)をさせるのですよ。その者に従う人魚もいるでしょう。半年もあれば、人魚たちの分断も出来るでしょう。我々はただ見ていればいい。お手並み拝見といこうじゃありませんか。でしょう? ミーノス王」


 やられた。こいつが何を考えてこんな事を喋っているのかは解らん。


「……アホウ鳥。よくもワシの手の内をバラしてくれたのう」


 だが、結果はワシの望み通りじゃ。


「これが情報の使い方だ。感謝しろ、時間を作ってやった。その時間をどう使うかはオマエの勝手だ」


 ……本当にこいつは嫌な奴じゃ。


 そして議会は閉幕する。


 ゲゲゲとアイツの高笑いを残して。

登場人物時点

ワキン 鳥の国の王。年齢はデイジーと同じ位(27、8)。元ネタは色々。サンダーバード、◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯等。

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