14話 「冬を走る、街を支える」(前編)
12月下旬。
池巣自動車営業所の会議室。
細野孝太郎。
山下恒一。
大森恒一。
川村健吾。
四人は金城恒一の前に座っていた。
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「昨日の話の続きだ。」
金城は資料を開く。
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「冬コミ臨時便。」
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4人は改めてその言葉を聞いた。
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「コミケ自体は夏にも開催されている。」
金城が説明する。
「毎年、多くの来場者が集まる大きなイベントだ。」
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「これまでは。」
「別の営業所が担当していた。」
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細野たちは頷く。
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「俺たちが新人だった頃ですよね。」
細野が言う。
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「ああ。」
金城は頷いた。
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「当時のお前たちは、まだ入社したばかりだった。」
「担当路線を覚える。」
「安全に運転する。」
「それだけで精一杯だった。」
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山下が苦笑する。
「確かに。」
「毎日必死でした。」
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大森も頷く。
「先輩方が大きな輸送を担当している姿を見ていました。」
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「すごいと思っていました。」
川村が続ける。
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金城は4人を見る。
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「そして今年。」
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「担当の順番が、池巣営業所に回ってきた。」
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一瞬。
会議室が静かになる。
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「俺たちが……。」
細野が呟く。
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「ああ。」
金城は頷く。
「お前たちが中心になる。」
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4人は顔を見合わせる。
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新人だった頃。
先輩たちの背中を追いかけていた。
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その仕事を。
今度は自分たちが任される。
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「覚えているか。」
金城が言う。
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「初めて一人乗務した日のこと。」
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細野たちは黙って聞く。
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「最初は誰でも不安だった。」
「でも。」
「少しずつ経験を積んできた。」
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「今では後輩を教える側だ。」
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「営業所を支える側になった。」
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金城は続ける。
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「だから任せる。」
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「ただし。」
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表情が引き締まる。
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「大きなイベントだからといって、特別な運転をする必要はない。」
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「いつも通り。」
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「点検する。」
「確認する。」
「安全に運ぶ。」
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4人は真剣に頷いた。
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「はい。」
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冬コミ当日。
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まだ夜明け前。
池巣営業所には明かりが灯っていた。
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「早いですね。」
川村が時計を見る。
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「大きな仕事だからな。」
山下が答える。
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細野は担当車両の前に立つ。
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車両点検。
灯火類。
タイヤ。
車内設備。
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一つずつ確認する。
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「細野。」
金城が声をかける。
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「緊張しているか?」
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細野は少し考える。
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「少しは。」
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「でも。」
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「やることは変わらないと思っています。」
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金城は笑った。
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「それでいい。」
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冬コミ臨時便。
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池巣営業所として初めて担当する大きな輸送。
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4人にとって。
新人時代には想像できなかった仕事が始まった。
(第14話・後編へ続く)




