12話 小さな手紙、大きな力(後編)
小学校から届いた手紙から数日後。
池巣自動車営業所では、冬に向けた準備が始まっていた。
車庫には整備担当者の姿が増え、運転士たちもいつも以上に車両を確認している。
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「冬の準備って、こんなにあるんですね。」
新人の佐伯直人が驚く。
細野孝太郎が頷く。
「雪が降ってから準備するんじゃ遅いからな。」
「何事も、起きる前の準備が大切なんだ。」
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大森恒一は点検表を確認する。
「冬は車両状態の変化も出やすいです。」
「タイヤ。」
「ワイパー。」
「暖房設備。」
「一つでも問題があれば、お客様に影響します。」
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高木亮が真剣な表情で聞く。
「普段の点検と同じように見えますけど。」
「意識するところが違うんですね。」
「そうです。」
大森は答えた。
「季節によって、見る場所も変わります。」
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一方。
金城恒一は村上拓也の路線確認をしていた。
「冬になると、同じ道でも状況が変わる。」
「日陰は凍ることがある。」
「歩行者の動きも変わる。」
「経験だけで判断するな。」
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村上は頷く。
「常に確認する、ですね。」
「そうだ。」
金城は答えた。
「慣れた時ほど、初心を忘れるな。」
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休憩室。
新人3人は、届いた手紙をもう一度見ていた。
「まだ実際に乗務していない自分たちのことまで書いてくれた。」
佐伯が言う。
「期待されているんですね。」
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山下恒一が笑う。
「だからって、無理するなよ。」
「新人の頃の俺みたいになるぞ。」
「どういう意味ですか?」
高木が聞く。
山下は少し苦笑した。
「焦って、周りが見えなくなるってこと。」
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「でも。」
山下は続ける。
「今のお前らなら大丈夫だと思う。」
「分からないことを聞けるからな。」
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夕方。
細野たちは新人3人と一緒に車庫へ向かった。
「覚えてるか?」
細野が聞く。
「最初にこの営業所へ来た時。」
新人3人は頷く。
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「俺たちも、先輩からたくさん教えてもらった。」
「点検の意味。」
「お客様への向き合い方。」
「安全への考え方。」
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川村健吾が手紙を手に取る。
「今度は、自分たちが伝える番ですね。」
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その夜。
営業所の事務所。
寺島主任が細野たちを見る。
「いい顔になったな。」
「え?」
細野が聞き返す。
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「新人だった頃は、自分のことで精一杯だった。」
「でも今は。」
「誰かに何を伝えるか考えている。」
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細野は静かに頷く。
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数日後。
新人3人の研修も次の段階へ進んだ。
車両確認。
路線確認。
接客。
少しずつ任されることが増えていく。
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そして。
池巣営業所には冬の予定が届いた。
雪の日の対応。
年末年始の輸送。
冬の臨時便。
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「忙しくなりますね。」
佐伯が言う。
細野は笑う。
「そうだな。」
「でも。」
「必要としてくれる人がいる。」
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車庫の奥。
小学校から届いた手紙が掲示板に貼られていた。
運転士たちは、その前を通るたびに思い出す。
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自分たちは。
ただバスを運転しているのではない。
誰かの毎日を支えている。
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池巣自動車営業所。
小さな手紙は。
運転士たちに大きな力を与えていた。
(第12話・完)




