表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トランスポーター✕サービス  作者: カバクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/33

11話 受け継がれる技術(後編)

金城恒一による新人3人の指導も、残りわずかとなっていた。


 池巣自動車営業所の朝。


 車庫には冬の冷たい空気が流れている。


「おはようございます。」


 新人3人の声が響く。


 少し前まで緊張していた声。


 今では、すっかり営業所の一員らしくなっていた。


---


「ずいぶん変わったな。」


 山下恒一が細野に言う。


「最初は挨拶も小さかったのに。」


「今では一番早く車庫に来ています。」


 大森恒一が時計を見る。


「時間管理もできています。」


---


 その日の教習。


 金城は3人を連れて路線確認へ向かった。


「今日は実際の運行を想定する。」


「ただ走るだけじゃない。」


「周りを見るんだ。」


---


 交差点。


 停留所。


 狭い道路。


 それぞれの場所で金城は質問する。


「ここで注意することは?」


 佐伯が答える。


「右側から出てくる車両です。」


「歩行者も増えます。」


 金城は頷いた。


---


「高木。」


「はい。」


「この停留所では何を見る?」


「乗車される方の足元。」


「特に高齢のお客様は急がせないことです。」


「いい。」


---


「村上。」


「はい。」


「雨の日ならどうする?」


「視界が悪くなるので、速度を落とします。」


「いつもより早めに危険を予測します。」


 金城は満足そうに頷いた。


---


 教習が終わった後。


 細野たち4人が新人3人へ声をかける。


「かなり成長したな。」


 細野が言う。


「ありがとうございます。」


 佐伯が頭を下げる。


---


「でも。」


 高木が少し不安そうな表情を見せる。


「一人で乗務するのは、まだ怖いです。」


 その言葉に、山下が笑う。


「怖いと思えるなら大丈夫だ。」


「本当に怖いのは、自分は大丈夫って思うことだ。」


---


 その言葉に、細野たちは頷く。


 山下自身。


 事故を経験したからこそ分かることだった。


---


 数日後。


 営業所で新人3人の最終確認が行われた。


 点検。


 接客。


 運転姿勢。


 路線理解。


 一つずつ確認していく。


---


 金城は3人を見る。


「よく成長した。」


「でも、これで終わりじゃない。」


「運転士は、乗務するようになってからも毎日勉強だ。」


---


「はい!」


 3人が返事をする。


---


 その日の夕方。


 車庫。


 細野は金城に声をかけた。


「ありがとうございました。」


「まだ何も終わってないぞ。」


 金城が笑う。


「これからが本番だ。」


---


「でも。」


 細野は続ける。


「教えるって、大変ですね。」


 金城は頷く。


「だから意味がある。」


「自分が分かっていることを、相手に伝える。」


「簡単なようで難しい。」


---


 山下、大森、川村も加わる。


「俺たちももっと頑張らないとな。」


 山下が言う。


「新人に見られてますから。」


 川村が笑う。


---


 そして。


 冬の準備が始まった。


 スタッドレスタイヤの確認。


 車両設備の点検。


 雪の日の運行確認。


---


「冬は大変ですね。」


 佐伯が言う。


 細野は頷く。


「でも。」


「必要としている人がいる。」


---


 池巣営業所は、下町の生活を支える場所。


 寒い日も。


 雨の日も。


 雪の日も。


 人々の足を守る。


---


 2か月の研修を終えた新人3人。


 そして、教える側として成長した細野たち。


 それぞれが新しい一歩を踏み出そうとしていた。


(第11話・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ