11話 受け継がれる技術(後編)
金城恒一による新人3人の指導も、残りわずかとなっていた。
池巣自動車営業所の朝。
車庫には冬の冷たい空気が流れている。
「おはようございます。」
新人3人の声が響く。
少し前まで緊張していた声。
今では、すっかり営業所の一員らしくなっていた。
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「ずいぶん変わったな。」
山下恒一が細野に言う。
「最初は挨拶も小さかったのに。」
「今では一番早く車庫に来ています。」
大森恒一が時計を見る。
「時間管理もできています。」
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その日の教習。
金城は3人を連れて路線確認へ向かった。
「今日は実際の運行を想定する。」
「ただ走るだけじゃない。」
「周りを見るんだ。」
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交差点。
停留所。
狭い道路。
それぞれの場所で金城は質問する。
「ここで注意することは?」
佐伯が答える。
「右側から出てくる車両です。」
「歩行者も増えます。」
金城は頷いた。
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「高木。」
「はい。」
「この停留所では何を見る?」
「乗車される方の足元。」
「特に高齢のお客様は急がせないことです。」
「いい。」
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「村上。」
「はい。」
「雨の日ならどうする?」
「視界が悪くなるので、速度を落とします。」
「いつもより早めに危険を予測します。」
金城は満足そうに頷いた。
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教習が終わった後。
細野たち4人が新人3人へ声をかける。
「かなり成長したな。」
細野が言う。
「ありがとうございます。」
佐伯が頭を下げる。
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「でも。」
高木が少し不安そうな表情を見せる。
「一人で乗務するのは、まだ怖いです。」
その言葉に、山下が笑う。
「怖いと思えるなら大丈夫だ。」
「本当に怖いのは、自分は大丈夫って思うことだ。」
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その言葉に、細野たちは頷く。
山下自身。
事故を経験したからこそ分かることだった。
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数日後。
営業所で新人3人の最終確認が行われた。
点検。
接客。
運転姿勢。
路線理解。
一つずつ確認していく。
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金城は3人を見る。
「よく成長した。」
「でも、これで終わりじゃない。」
「運転士は、乗務するようになってからも毎日勉強だ。」
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「はい!」
3人が返事をする。
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その日の夕方。
車庫。
細野は金城に声をかけた。
「ありがとうございました。」
「まだ何も終わってないぞ。」
金城が笑う。
「これからが本番だ。」
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「でも。」
細野は続ける。
「教えるって、大変ですね。」
金城は頷く。
「だから意味がある。」
「自分が分かっていることを、相手に伝える。」
「簡単なようで難しい。」
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山下、大森、川村も加わる。
「俺たちももっと頑張らないとな。」
山下が言う。
「新人に見られてますから。」
川村が笑う。
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そして。
冬の準備が始まった。
スタッドレスタイヤの確認。
車両設備の点検。
雪の日の運行確認。
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「冬は大変ですね。」
佐伯が言う。
細野は頷く。
「でも。」
「必要としている人がいる。」
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池巣営業所は、下町の生活を支える場所。
寒い日も。
雨の日も。
雪の日も。
人々の足を守る。
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2か月の研修を終えた新人3人。
そして、教える側として成長した細野たち。
それぞれが新しい一歩を踏み出そうとしていた。
(第11話・完)




