10話 秋の街を支える運転士(後編)
職業体験当日。
池巣自動車営業所の入口には、近くの小学校の児童たちが集まっていた。
「よろしくお願いします!」
元気な声が営業所に響く。
細野孝太郎たちは笑顔で迎えた。
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「今日はバスの運転士の仕事を体験してもらいます。」
細野が説明する。
「でも、運転だけが仕事じゃありません。」
「安全に走るために、出発前から仕事は始まっています。」
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最初は車両点検。
大森恒一が点検表を見せる。
「バスは毎日同じように見えます。」
「でも、昨日と違うところがないか確認します。」
「小さな変化に気づくことが大切です。」
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「タイヤも見るんですか?」
児童が聞く。
「もちろんです。」
大森が答える。
「タイヤ、ライト、ミラー。」
「全部確認してから、お客様を乗せます。」
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次は車内見学。
川村健吾が説明する。
「バスには、小さなお子さんから高齢の方まで乗ります。」
「だから、運転技術だけじゃなくて、相手を思いやる気持ちも必要です。」
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児童たちは真剣に聞いていた。
「運転士さんって、優しいんですね。」
一人の児童が言う。
川村は少し照れながら笑った。
「ありがとうございます。」
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最後に山下恒一が前に出る。
「山下さんは何を教えるんですか?」
細野が聞く。
「俺か?」
山下は笑う。
「じゃあ、安全の話をする。」
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「バスの運転で一番大事なことは何だと思う?」
児童たちは考える。
「速く走ること?」
「上手に曲がること?」
山下は首を横に振った。
「無事に帰ってくること。」
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「運転士は、乗っている人の命を預かっている。」
「だから確認する。」
「迷ったら止まる。」
「安全を一番に考える。」
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児童たちは静かに聞いていた。
その様子を見ていた新人3人。
佐伯は呟く。
「すごいですね。」
「説明するって難しいです。」
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金城が頷く。
「だから勉強になる。」
「教えることで、自分の仕事も見直せる。」
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職業体験が終わる。
「ありがとうございました!」
「バスの運転士になりたいです!」
児童たちは笑顔で帰っていった。
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数日後。
ハロウィンイベント当日。
池巣自動車営業所周辺は、多くの人で賑わっていた。
商店街。
公園。
イベント会場。
街全体が明るい雰囲気に包まれている。
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「今日はいつも以上に周りを見るぞ。」
金城が新人3人へ声をかける。
「特別な日でも、基本は変わらない。」
「安全に運ぶ。」
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臨時便が走り出す。
細野は車内の様子を確認する。
「足元お気をつけください。」
高齢のお客様へ声をかける。
「ありがとう。」
その一言が返ってくる。
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新人3人は先輩たちの仕事を見る。
時間だけを見るのではなく。
お客様を見る。
道路を見る。
周囲を見る。
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「これが池巣営業所の仕事なんですね。」
佐伯が言う。
細野は頷いた。
「そうだ。」
「この街で暮らす人たちを支える仕事だ。」
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夕方。
イベント終了。
帰宅するお客様で停留所は混雑した。
しかし。
新人たちは落ち着いて動いた。
点検。
確認。
声かけ。
金城から教わったことを一つずつ実践する。
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夜。
営業所へ戻る。
「疲れました。」
高木が笑う。
「でも、楽しかったです。」
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金城は3人を見る。
「今日できたことより。」
「気づいたことを忘れるな。」
「運転士は毎日勉強だ。」
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細野は車庫を見る。
昔は、自分たちが先輩の背中を追っていた。
今は。
新人たちが自分たちの背中を見ている。
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池巣自動車営業所。
秋の街を支えながら。
新しい運転士たちも、少しずつ成長していた。
(第10話・完)




