10話 秋の街を支える運転士(前編)
10月。
池巣自動車営業所の朝は、少し冷たい風とともに始まっていた。
車庫には青と白のバスが並び、運転士たちはいつものように出庫準備をしている。
「涼しくなりましたね。」
川村健吾が空を見上げる。
「夏が終わったと思ったら、もう秋だな。」
山下恒一が笑う。
「でも、秋は忙しくなります。」
大森恒一が予定表を確認する。
「地域イベントもありますから。」
「大森は本当に予定表が好きだな。」
細野孝太郎が笑った。
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点呼後。
寺島主任が細野たち4人へ声をかけた。
「新人3人の教育についてだ。」
「はい。」
4人が姿勢を正す。
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池巣営業所へ入社した新人運転士。
佐伯直人。
高木亮。
村上拓也。
三人は少しずつ営業所の雰囲気にも慣れてきていた。
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「金城さん。」
寺島主任が声をかける。
「2か月間、お願いします。」
「ああ。」
金城は頷いた。
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「よろしくお願いします。」
新人3人が頭を下げる。
「まず覚えることがある。」
金城は車両を見る。
「運転技術だけじゃない。」
「安全を守るために何をするかだ。」
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最初の指導は車両点検。
金城は新人たちの動きを黙って見ていた。
「終わりました。」
佐伯が言う。
金城は点検表を見る。
「もう一度確認してみろ。」
「何かありましたか?」
「間違いじゃない。」
「でも、自分で納得するまで見るんだ。」
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佐伯はもう一度車両の周りを見る。
すると、ミラーの汚れに気づいた。
「……ありました。」
「小さいことですけど。」
金城は頷く。
「その小さいことを見逃さない。」
「それが安全につながる。」
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高木には接客を教える。
「声は大きければいいわけじゃない。」
「相手が安心できる声を出すんだ。」
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村上には路線確認。
「経験がある人ほど、思い込みには注意しろ。」
「前の仕事でできたことが、そのまま通じるとは限らない。」
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少し離れた場所から、細野たちは見ていた。
「金城さん、やっぱりすごいですね。」
川村が言う。
「一つ一つ理由があります。」
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「俺たちも、あんな風に教えられるかな。」
山下が呟く。
細野は頷いた。
「なりますよ。」
「俺たちも、もう教える側ですから。」
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数日後。
営業所に一つの連絡が入った。
「近くの小学校から職業体験の依頼だ。」
寺島主任が伝える。
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「職業体験ですか。」
新人の佐伯が聞く。
「そうだ。」
細野が答える。
「池巣営業所の仕事を知ってもらう機会だ。」
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「何を見てもらうんですか?」
高木が聞く。
大森が答える。
「運転だけではありません。」
「出発前の点検。」
「安全確認。」
「お客様への対応。」
「全部です。」
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川村も頷く。
「バスは、ただ人を運ぶだけじゃないですから。」
「この街の生活を支えているんです。」
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山下は少し考える。
「昔は、俺たちも先輩の背中を見て覚えた。」
「今度は伝える側ってことか。」
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金城はその様子を見ていた。
「いい経験になる。」
細野たちが振り向く。
「教える側になると、自分の仕事も見直せる。」
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そして。
ハロウィンイベントの日が近づいていた。
仮装した子どもたち。
家族連れ。
地域の人々。
池巣営業所が支える、秋の大きな一日。
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新人を育てること。
地域と向き合うこと。
運転士として成長すること。
池巣自動車営業所では、それぞれの新しい役割が始まっていた。
(第10話・後編へ続く)




