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トランスポーター✕サービス  作者: カバクラ


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第6話 「夏の夜、特別な運行」(後編)

花火大会が終わった。


 夜空を彩った大きな花火。


 しかし。


 運転士たちにとっては、ここからが本番だった。


---


 駅へ向かう道路。


 多くの人が一斉に帰宅を始める。


 バス停にも長い列ができていた。


「お待たせしました。」


 細野は案内をしながら周囲を確認する。


 普段とは違う客層。


 浴衣姿のお客様。


 小さな子どもを連れた家族。


 疲れながらも楽しそうに話す人たち。


 それぞれの一日を終えて帰っていく。


---


 発車後。


 道路は少しずつ混雑していた。


『駅前通り、混雑しています』


 無線が入る。


「了解しました。」


 細野は落ち着いて運転を続ける。


 焦らない。


 急がない。


 安全を優先する。


 金城の言葉が頭に浮かぶ。


『忙しい時ほど、基本を守れ』


---


 営業所では運行状況の確認が続いていた。


「遅れは少し出ていますが、大きな乱れはありません。」


 大森が報告する。


「みんな落ち着いて対応しているからな。」


 矢野が頷く。


「こういう日のために、普段の訓練があるんだ。」


---


 深夜。


 最後の便が営業所へ戻ってくる。


「お疲れ様でした。」


 点呼を終え、4人は休憩室へ向かう。


「いやぁ……疲れました。」


 川村が椅子に座る。


「でも、達成感ありますね。」


「分かる。」


 細野も頷く。


「最初は大変だと思ったけど。」


「終わってみると、やってよかったと思えるな。」


---


「それがイベント輸送だ。」


 金城が言う。


「大変だから嫌だ。」


「そう思う人もいる。」


「でもな。」


 金城は笑う。


「誰かの思い出を支えていると思えば、少し見方も変わる。」


 細野はその言葉を聞いていた。


---


 数日後。


 夏祭りの忙しさも落ち着いた頃。


 休憩室。


「なあ。」


 山下が突然言った。


「夏だぞ。」


「はい?」


 細野が顔を上げる。


「出会いの季節だ。」


「嫌な予感しかしません。」


 大森が呟く。


「合コンだ。」


「やっぱり。」


---


 結局。


 同期4人で参加することになった。


 最初は緊張していた川村だったが、柔道の話になると少しずつ会話が増えていく。


「すごいですね。」


「いや、まだまだです。」


 照れる川村。


---


 山下はいつもの調子で場を盛り上げる。


「今日は楽しくいきましょう!」


 笑い声が起きる。


「山下さん、慣れてますね。」


 細野が言う。


「まあな。」


 山下は笑う。


---


 大森はというと。


「休日は何をしていますか?」


 と聞かれる。


「料理ですね。」


「料理?」


「簡単なものですけど。」


「体調管理にもなりますから。」


「意外ですね。」


 細野が笑う。


「もっと難しいことをしているイメージでした。」


「どういうイメージですか。」


 大森が真顔で返す。


 全員が笑った。


---


 そして細野。


 普通に会話をしているだけなのに。


「細野さんって優しいですね。」


 と言われる。


「え?」


 本人だけが理解していない。


---


 帰り道。


 駅へ向かって歩く4人。


「いやぁ、楽しかったですね。」


 川村が笑う。


 その時。


「あれ?」


 川村が足を止めた。


「あそこにいるの、西園寺さんと藤崎さんじゃないですか?」


---


 見ると。


 西園寺美月と藤崎彩が歩いていた。


「こんばんは。」


 細野が声をかける。


「皆さん、こんばんは。」


 二人も驚いた表情をする。


「今日は何をしていたんですか?」


 西園寺が聞く。


 一瞬。


 間が空く。


 しかし。


「合コンです!」


 川村が元気よく答えた。


---


 沈黙。


「……そうなんですね。」


 西園寺が笑う。


 ただ。


 少しだけ表情が硬い。


「楽しそうでよかったですね。」


 藤崎も笑う。


 でも。


 いつもの笑顔とは少し違った。


---


 その変化に。


 山下が気づく。


(あれ?)


 細野を見る。


 しかし本人は。


「いや、普通の飲み会みたいな感じだったぞ。」


 と説明している。


---


 山下は小さくため息をつく。


「細野。」


「ん?」


「……いや。」


 言葉を止める。


 隣を見ると、大森も同じような表情をしていた。


「二人とも。」


 大森が小さく言う。


「普段とは少し違いましたね。」


「やっぱり?」


 山下が返す。


---


「何の話?」


 細野が聞く。


「何でもない。」


 二人は同時に答えた。


「?」


 細野は首を傾げる。


---


 夏の夜。


 仕事では多くの人を支え。


 プライベートでは少しずつ変化していく関係。


 しかし。


 一番近くにいる本人だけは。


 まだ何も気づいていなかった。


(第6話 完)

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