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◇第32話 特技の開発と秘密基地

◇第32話 特技の開発と秘密基地


今日の第三区は快晴だった。

準備運動のあと、三人は基礎体力の強化の第三区を一周する日課にでかけてる。


数日で新年を迎える、ゴア暦299年になるわけだ。日本的な風習はなく、お祝いの言葉をかける程度で終わる、孤児院も祭事の類いの催し物はしない。アッサリしたものだ。


第三区は外周を歩いて一周すると1時間ほどかかるから5km以上はあるだろう。三人は一周を10分位で走ってる、タラればだがマラソンの距離を1時間半で走破する速度、驚異の世界記録になること間違いない。一方カグヤは3倍遅く30分で走れるようになった、こちらもマラソンなら4時間半の計算になるが、長時間走る体力も持久力もない今のカグヤは無理だ。

ユーキたち三人は走り終わっても汗一つかいていない、カグヤは肩で息をするほど乱れている。



カグヤは教えられた技の自主訓練を始める。


特技の成果を実戦で確かめるため、カレンとゴーキは戦うことになった。

数日の訓練で完成する程度の難易度でない、成功する時の技の感触を掴むため、失敗した時の対処などなど知るため実戦することになった。


動きにいつものキレがない、二人は失敗を恐れるあまり慎重になっている。いや成功させようと意識するあまり、ぎこちなく肩に力を入れ過ぎているが正解か。


まずゴーキは最初から衝撃を受け流す姿勢で待ち構えている、この時点で失敗である。これでは実戦形式をとる意味はない。実戦訓練形式の目的は単一の練習と違い総合力の戦い、自分の力量を知り相手の些細な動きや表情を読み取り、読み切って勝利に導いていく力を養うためもある。


技は連携することにで最大限に発揮される、戦闘の中に組込んでこそ技は生きる。前もってこれやりますなどバカのすることだ、抜けているゴーキらしい。

(ゴーキ 攻撃される前から待ち構えてどうする!バレバレだぞ・・・  そこへ誰が打ち込む!)

「そりゃそうーだ ハハハハ」

盾持ちはゴーキの専売特許、連携技を身につければ強力な武器になるはずだ。


カレンも似たようなものである。跳躍して跳び、空中で最初の跳躍は上手くいく。問題はそれからだ、跳躍する度に精度は落ち制御しきれていない。流れるような連続跳躍でなく一時停止の繰り返し。

意図的に空中で停止するなら、騙しや目くらましに効果はあるが。制御のために停止したら逆に格好の標的になってしまう。


(カレン 制御できなくなったら一旦中止し、降りて最初からやり直したらどうだ?)

「一理ある、その方が良さそうねー」

(2度目の跳躍が上手くいか、そこがカギだな! 3度目以降も理屈は同じだろ~)

「そうーか~ 連続で跳ぶことに気を取られていたわ」


(二人とも、まだ実戦で使えないな。訓練あるのみだ)

「わかった!」



ユーキは立ててある9本の丸太を跳躍で飛び周る。カレンから空中戦をしたいから覚えて欲しいと頼まれたからだ。

カレンみたいに跳躍で空中を飛び回らず、丸太を使って感覚をつかんでからするみたいだ。跳躍というより瞬歩の技に近い動き、高さ3mの丸太の上部部分を蹴って次々に移動するさまは見応えはある。

後は何もない空中で同じ動きをすれば問題ない、けれど簡単にいかないのが連続跳躍だ。

悪くない考えだけど、結果はカレンと同じになる気がする。


(集まってくれ!・・・ まずは練習の仕方を工夫しよう)


(ユーキ・カレンの跳躍だけど、最初の跳躍を高さ2mにしよう、丸太だと上から3分の1の所だね。高さは大人の頭に近い方がいいし、丸太の手前1.5mなら攻撃もできる位置になるから場所的にいいだろう)

まずユーキに正確な位置に立ってもらい、腕を上げ手を回し目標の場所を確認する。丸太の手前1.5m、高さ2m。

隣の丸太までゆっくりと歩きながら説明していく。

(そこから2度目の跳躍に入り隣の丸太まで跳ぶ、隣の丸太まで5mほど、跳びすぎだけど目印ある方が返って訓練しやすい。出来るようになったら徐々に短くしていき3.5mを目標に跳ぶ、隣の丸太の高さ2m、手前1.5mの位置に跳べれば成功としよう)


「聞く限り出来そうですね」

「口で言うほど簡単じゃないわよユーキ」

「そうなの・・・」

「方向もズレるし縦横に回転するんだからね、跳躍距離が短いから酷くはならないだけよ」

「そう言えば、前の連続跳躍のときは散々だった」


無回転で5m横に平行移動しなければならない。


(カレン 案なんだけど。跳躍するとき小さな面でなく、大きな面で気衝すれば方向や回転を抑えられて横移動できるんじゃないか)

「大きな面? どういうこと?」

(体でいうと前面・後面・側面の大きさ、横移動だと側面全体から気衝を放つこと)

「そうねー 全体ならズレは少ない・・・・・・いやいや、面全体で放つなんて無理でしょ!」

呆れ顔のカレン。

(そうかな、数か月前に不良どもを脅した時に、地面に拳で直径1mの穴をあけたんだけどね。あれだって気衝の大きさを拡大させて放った。なら側面でもいけそうな気がする)

「はぁーあぁー? 直径1mの拳の穴?」

「僕も見ました、地面が1mの広さで陥没、もうビックリです」

「不良たち死ぬほど驚いたぜ、ハハハハ」

「直径1mの拳を出せるんですか? タローさんは人外なんですね」

人外と酷い言い方をするカグヤ。俺はもと人間だ???・・・いや人外か?。

「タローなら今更ね、広く出来るなら側面全体とかもいけそうーね・・・」

(気衝だけじゃなく、気装壁も同じく可能だな。面全体なら防御力は格段に上がるからね、残念なのは習得する人がいないことだろう)


頷いてはいるがカレンは難しいことは理解していた、タローみたいな規格外ならできて当たり前だろうけど、気装壁を広げるなど一般の人は無理、剣士や騎士でも普通はしないだろう。

理由は簡単だ、面単位に気装壁を作れるまでに熟練度を要し、修練の期間が途轍もなく長くなる。

剣士や騎士は覚え使いこなさなきゃならない錬気は沢山ある、気装壁だけに長時間を割けないことが大きな理由だ。防御より攻撃系の錬気を優先するのが一般的であり、合理的にいって間違いじゃない。



(ユーキとカレンはその方向でやってくれ、お次はゴーキなんだけど一人なんだよな。ユーキの訓練中に気弾は無理っぽいし、気衝できる人を頼むのも無理か。  えっ、カグヤ まともな気衝できるのか?)

手からそこそこの気衝を出すカグヤ、ドヤ顔です、いつのまに成長した?

ここにも天才少女がいた。


(ならゴーキは丸太と打ち込みの練習し、カグヤはゴーキへ適当に気衝や気弾を放ってくれる。怪我させるとか心配しなくていいから全力でやちゃって!)

カグヤも一人でするより相手はいた方がいいだろう、気衝や気弾の練習になるから一石二鳥だ。


(それぞれ訓練始めてくれ~)



タローは訓練風景を眺めていた、やっぱり錬気は楽しいな~。この世界に来てから寝ても醒めても錬気に熱中している、寝ることも休息休憩もいらない、食べる必要もない疲れもしない精神体、これこそ寝食を忘れるに違いない。それは嬉しいのか悲しいのかわからないけど、ハハハハハ。




▽秘密基地


特技の訓練はすんなりと会得するといかず、体力に自信のある三人も疲労困憊になってきた。そろそろ今日の訓練は早めに切り上げてもよさそうだ。余った時間は骨休めと気晴らしに、知りたがっていた秘密基地の話しでもして上げよう。


(皆、訓練止めて集合してくれ! 話しもあるから早めに切り上げるぞ)

「は~い」

「話しってなんだろう?」

「急にあらたまって、またトンデモナイ発言するのかしら?」

「きっと、そーだぜ」

カグヤにとってトンデモナイは三人の方だと感じていたが、ユーキ達の会話からタローは人外みたいな発言を聞いて驚いていた。念話だけで姿を見せないタローも普通に考えれば変だと気づけるけど、ユーキ達の異常に高い身体能力(錬気)に目が行きがちでタローのことは見落としていた。


(今日は皆が知りたがってた秘密基地の話しをしてあげるぞ)

「僕はどうして知らないのだろう?」

「来たー 秘密基地の暴露、名前からして怪しい胡散臭い名称ね」

「ついに暴かれる秘密基地の謎、ワクワクもんだぜー」

「私などに大事な秘密を漏らしても宜しいのでしょうか?」

(連れて行くわけじゃないからカグヤ大丈夫だよ)

「そうですか、なら安心ですね」

実際に連れて行けない場所にあるから問題ない。


(その前にカグヤに聞くけど、タローは近くにいないのに、目の前で観たようにユーキ達の状況をつかんでることか不思議に思ってない?)

念話でタローが話すとカグヤはキョロキョロと辺りを見回すことが多かった。

「申し訳ございません、タローさんをついつい捜しておりました」


(実はユーキと波長が同調しやすいようで念話だけじゃなく、ユーキの眼から観ている映像も俺の脳に伝わり流れてきます。原理は解りませんが今の所はユーキ君だです、これ内緒にしてくださいね)

「は、はい 内緒ですね。聞いたこともない錬気です・・・」

そりゃーそうーだ、そんな錬気はない。

でも納得してくれたらしい、これで少しは誤魔化しはできただろう。本当のことをカグヤに話しても良かったけど、タローの秘密をシャンティ院長に知れたらカグヤは問い詰められ誤魔化しきれないだろうから、なら最初から知らなければ、素直に知らなかったと話せばいいだけで心配はなくなる。


(秘密基地にご案内するけど、4人で輪になり手をつないで眼を閉じてくれるかな)

4人の波長をタローの周期と同調するように瞑想していく。

「何かぽあんっとしてきましたわ?」

(カグヤ 4人と同調するため集中しないといけないので大人しくしてくれますか)

「申し訳ございません」


初めて4人を同調させるため苦労していた、秘密基地を具現化して4人の脳に描くことも簡単でなかった。試行錯誤の末に具現化に成功したようだ。

(今観ているのが秘密基地の全貌です、単に映像として観せてるだけで実際に来たわけじゃないことを理解してくれ。もう会話してもいいよ)


(もしかして、タロー ここって・・・・)

(初めてじゃない気がするぜ?)

周りの周囲に無数の神経線が走り時々光を放つ、中心部に白い円形状の丸屋根が建っている。カレンとゴーキは一度入ったことがあるから気づいたのだろう。そう、ここはユーキの補助脳の中を想像したものだ。


カレンは白い円形状の丸屋根を見て感づいた。以前に補助脳でタローに云われて牢屋を造ったことを思い出した。

(まぁー! なんて幻想的で綺麗なところでしょう?)

カグヤは感嘆な声をだし不思議な光景を眺めていた。


上空からゆっくりと降下し中心部にある丸屋根の前に降りていく。そこに一人の少年が立っていた。


(タロー 久しぶりね~)

(久しぶりだぜ)

(タローさん こんにちは?、本当にお久しぶりです)

この姿で会うのは久しぶりで間違いない。

(初めましてカグヤと申します、まさか私達と同じ年齢だとは思いもしませんでした。もっと年長者の方と想像してました。あっ! 申し訳ありません、失礼いたしました)

何度もお辞儀をして謝る。

(ハハハハハ カグヤ あながち間違っていないわよ)

カレンの謎めいた言葉に首を傾け不思議がるカグヤ。


(そーかー ここはあれかー やっと理解しました)

先ほどから考え込んでいたユーキは納得したかのように何度か頷いて中に入っていった。


(外では何だから、さぁー中に入ってくれ)

(お邪魔するぜ)


(・・・・・・)

カグヤはここが何処なのか気になって仕方がなかった。謎の人物だったタローが大人でなく子供なのも驚かされた、自分が勝手に大人だと思い込んでいただけのようだ。三人は子供のタローを見て《久しぶり》と挨拶してる辺り本人で間違いない。

こんな施設は孤児院にないし、タローと呼ばれる人物もいない。余計に謎が深まっただけである。


(ボーっとしてないで、カグヤ入るわよー)

(あっ はい お姉様)


丸屋根の中に入っていくと、10m四方の広間に丸テーブルとイス5脚が置かれ、左右の壁には書籍の棚があり数百冊の本がまばらに収められている。


(わぁー本がたくさん有ります、・・・でも孤児院の図書室にある本と同じ物が多いですね?)


カグヤの疑問は当然だ、大半は図書室の本を複製したのだから間違いない。タローの能力は本を読む必要はない、パラパラと見るだけ、ページをめくるだけで記録することができる。記録した紙をまとめれば一冊の本ができあがる仕組み。


(タロー さすが図書室より錬気本の数は多いわね)

頭の回転が速いカレンである、錬気本の大半は月に一度訪れる正騎士からの複製本になる。『徘徊者』の成果になる訳だが、ただの盗人だと言われれば観もふたもないけど。

(タローさんはここで勉強してるんですね、いつか僕も勉強したいな?)

(あぁ錬気本を読んだり、訓練はここでしている)

ユーキの奴、自分もここで学びたいために含みのある言い方だ。


奥の扉を開けると円形状の練習場がある、大きさは学校の体育館並みの広さである。

窓のない建物なのに明るい、照明器具は一切ないのに昼間のように明るい。照明がないせいか影はできない不思議な空間である。


更新は不定期です。

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