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第33話 秘密基地の秘密

第33話 秘密基地の秘密


建物は飾り装飾類はない、床は肌色・壁は薄茶色・天井は白色で単色で統一されている。扉はこげ茶・書棚は茶色・イスやテーブルは白色の一色である。簡素と云えば聞こえがいいけが見栄えのいい趣向じゃない。

(タロー 色使いが随分単純じゃない。そうしてる理由があるのかしら?)

早速カレンは気づいたみたいだ。

補助脳の総量に関係してて、やたらと増やすと容量が足りなくなるのだ。情報量を節約するたに敢えて単一の色している。困ったな、カグヤがいるので本当のことを説明できない。


(錬気本や本の収集に掛けてしまって、建物や什器備品に手がまわらなくなったんだよ。ハハハハ)

誤魔化せた気がする。チラッとカレンに眼を向ける、これで気が付いてくれればいいけど。


(それでもよー、単色はないぜ。壁は木目調や床はタイル張りして豪華にした方がいいぜ、ちょちょいとすれば変えるの簡単だろう)

このバカ、ゴーキ! 上手くかわしたと思ったのに振り出しに戻しやがって。


(こんな大きな建物を所有してるだけですごいのに、内装をちょちょいと簡単に変更できるって、タローさんはすごい大金持ちなんですねー)

(そ、そんな金持ちじゃありません、ゴーキは大袈裟なんですよ)

(大袈裟?お金の話しなんてしてないぜ?)

(ゴーキ黙っておけ~! あんたが絡むと面倒になるわ)

もう無視無視、これはドツボにハマっていく流れだ。



(タロー 気になったんだけど、この状態で戦闘とか出来るのかな?)

(・・・誰と、俺?)

(仮にユーキと私とかで戦闘することは可能なのかなと・・・)

(ウーン どうなんだろう? この映像は俺が造りだして皆にみせているだけだから、予測不可能な戦闘は再現できないかな・・・・・・)

基礎情報、行動・判断規範を加味し、身体能力に錬気の能力等々を組上げ・・・他に何を組込んでいけばいいんだ。性格とかいるのかな?後はなんだ?何が必要だ?模型とかいるか・・・・・・補助脳に定着させれば可能か。情報で行けるか!制御はどうする、人工知能だな。・・・・・・ 


頭の中に血が昇ってきて、思考は混乱し暴走し始めた。


(タロー~・・・・・・・・・帰ってこいよ~)

(おおっー カレンかすまん、ちょっと混乱して収拾がつかなくなった)

(急にブツブツいいだすし顔は真赤になるわ、驚いたわよ!)

他の皆もタローの急変した姿に心配している。

(ビックリさせてすまない。熱中すると変な癖で時たま暴走するんだよ、だから心配しないでくれ)

(普段は念話しかしてないので、変な癖あるなんてしりませんでした)

(ほんと驚いたぜ、心配させんなよ)

(大丈夫なのでしょうか?)

(病気じゃないから大丈夫ですよ)

本人以外から《病気だ》って返ってきそうな雰囲気だった。

昔から変な癖で熱中過ぎると独り言はするわ、歩き回るわ、周りから変人扱いされることがあった。

実に興味をそそられる事案だ。仮想空間の戦闘かー・・・



(さっきの話しだんだけど、戦闘する場合は大量の情報を瞬時に処理しなきゃ映像化はできない。このままじゃ不可能だね)

(タローでも難しいってことね)

(4人から送れてくる情報、つまり話す歩くなど行動や思考の情報を統合して、この場所に反映させることの制御が難しい。制御するだけで《気》を大量に消費している、4人が長時間ここに滞在することも出来ない、もって30分くらいだろう)

(こんなこと出来るのはタローだけ、私達が想像もつかない世界みたいね)


(現状は無理なんだけど、何か引っ掛かかる?、何だろう?)

(タローさんは諦めてないんですか?)

(まぁーなー 無理は無理でも、考えるだけなら損はないしタダだろう)

(諦めのわるいタローだ、ハハハハ)

(タローなら今更じゃん)

(別世界の話しですね)


(悪い、暴走した分、滞在時間が短くなったみたいだ。断線するとドンでもないことなるかも知れない。急がせて悪いが回線を遮断する準備してくれ)

(了解)


視界は開け、見覚えのある第三区が映ってくる。現実世界の戻ってきた、不思議な感覚に陥る、仮想空間を旅してきたからだろう。






新年明けましておめでとうございます。誰に対して挨拶なん?・・・

年末年始にかけタローは円形丸屋根の建物に引き籠って調べ物をしていた。


新年といっても特に祭事はなく新年の挨拶を交わす程度で終わる。タローの出番はない、それで引き籠って何をしてたかと云えば《仮想空間の戦闘は可能か》を検証していた。


早くからタローは補助脳で訓練を始めている。いつからだったか忘れたが自分の複製を造り出し実戦も行っていた。自分の複製を作成することは一見難しいように思えるが実は簡単だった。基礎的な情報はすでに蓄積してるから、その情報を使って複製を動かすだけで寸分違わない動きが可能だった。

外部からの人間だと、複製を造り出しても基礎情報がない状態だと動かせない。その前に他人と複製を同調させて動かす方法も知らない。八方塞の状態であった。


《補助脳内なら自由自在に構築できると云っても、大量の情報を相互通信で処理できる超高速演算処理持ってなきゃ無理だ》と呟いていみたり、《制御が複雑すぎて脳で処理する速度追いつかいない》とか意味不明をわめききちらすタローだった。


脳内でタローの複製を造れるなら他人の複製も造れるこれは問題ない。ただ脳内で複製を自由自在に動かすとなると、複製に乗り移って操作出来るようになればならない。他人が操作出来れば問題解決である、なんだ簡単なことじゃないか?


乗り移る方法がないため他の手段を思案してて行き詰まってる状態。結局、堂々巡りしている。

乗り移る方法は複製人形と人を同調させて高速通信で遠隔操作させればいいだけかも知れない。しかし、その方法も全く想いつかない。


数日間籠って研究しているが、さすがに万策尽きた状態になり、書棚から本を引っ張り出して助けになる切っ掛けはないか捜している。書棚にある本を片っ端から読んでいる。

複製の人形は九分九厘完成してるけど最重要部品がないため未完成のままになってる。喉にトゲが刺さった状態にモヤっとしたままでイライラしている。


書棚には図書室の本を複写しているから色んな分野の本がある。童謡や児童文学、料理本や伝記物など様々なあり、興味ない本まで複写しといた。



今読んでるのは『呪術使いと王子』という童話。

あらすじは龍が暴れて村々を襲い苦しめられていたところ、ヘンデルという青年が龍と和睦して平和を取り戻した。龍は和睦の条件として年に一度の貢ぎ物をよこせば襲わないと約束した。最初の数年は約束を守っていた龍が、段々と無理難題を強要するようになり、従わない時は以前より暴れるようになり酷くなった。ある時、村長の娘で絶世の美女がいた、龍は貢ぎ物として要求したが、村長は他の村の青年と結婚する許嫁がいるので断った。怒った龍は青年の村を一夜に滅ぼしてしまう、悲嘆にくれる村長の所へ、旅の王子がやってきて龍を退治したら娘を嫁に貰うことを約束する。悪戦苦闘して龍を退治したらヘンデルという青年だった。村は王子と娘が結婚して幸せになり平和になったとさ、めでたし、めでたし。


物語は良くある実話に基づいた童話だろう、領主か王の悪政に苦しんでいた所、青年が反乱を起こし領主か王を退治し喜んでいたら、実権を握った青年の悪政で更に悪くなった。そこへ他国の王子が征服して平和になったお話しかな? 勧善懲悪、悪を懲らしめる物語だ。

お伽噺の話しては大して面白くない内容だった、気になったのは題名の『呪術使い』の部分と龍になって村を襲う所と龍が死んだら青年だったことだ。


この世界で呪術使いは職業としてある。薬剤師や祈祷師、医術師などと呼ばれている人達の中で稀に呪術使いはいるらしい。嫌われる職業なのは毒や呪詛を使って苦しめる人がいるからだ。その技術は秘匿されてて世に知れ渡っていないため解毒や解呪は厄介にやってる。

あと呪術使いが使う道具についてだ、あれは錬気と組合わせて使う気導道具(錬気道具)と呼ばれてる道具だと思ってる。気導道具も錬気本の中で単語として出てくるだけで説明してる文章はない。

忌み嫌われる職業のせいか、呪術使いと名乗る人はいないらしいから、見つけるの苦労しそうだ。



滅多にいない呪術使いだが、タローは目星はついているシャンティ院長だ。転生した次の日に院長室で尋問を受けた時、机から出した怪しげな機械はまさしく気導道具(錬気道具)だろう。あれは一種のウソ発見器のたぐいの物であろうし、『感謝の祈り』に使っていた呪いの付呪の水晶玉も気導道具(錬気道具)に違いない。それと書棚に『初めての錬気道具』『やってはいけない治癒錬気』『治癒錬気概論』など置かれていたのを脳内に記録していた。


これらの本は複写できていない。


タローでも院長室に入ることは難しかった。教官と職員は官舎の宿泊施設に入るはずが、院長室の左右の部屋に技師の寝室部屋と奥に院長の研究室、寝室を割り当てられている。シャンティ院長が就任してから改修したらしい、実に怪しい研究をしてますと云ってるもんだ。


技師は夜にちょくちょく街に飲みに出かけていたが、シャンティ院長は夜に出かけることもなく、一度も外泊したこともなかった。

さすがに『夜の徘徊者』の異名とるタローでも手の打ちようはなく潜入する機会はなかった。


それが年末年始にかけ王都のエゾ商会組合の会合に出席するために出かけた。余程重要な会合なのか孤児院のことは副院長に任せていなくなった。これはまたとない絶好の機会、あとは技師がいなくなれば院長室に忍び込める。技師のことは心配してなかった、こいつは機会があれば街に飲みに行くことは知っていた。


院長がいなくなれば、すぐ街に飲みに行くものと思ったが期待は外れた。

出かけることを禁止されてたはずが、年末に我慢しきれず副院長と街に繰り出すことにしたらしい。こいつバカだから自ら吹聴して、こちらに情報を漏らしてくれる。

千載一隅の機会を逃してはいけない、あの院長のことだから、すんなりと部屋に入れるか不安はある。きっと罠を仕掛けてる可能性もあるだろう。



寝静まった夜、タローは院長室の手前にある通路の扉の前に佇んでいる。日中は開いてて夜に鍵を閉める扉だ。扉の先に技師の寝室がある、今は飲みに出かけて誰もいないはず。慎重に鍵を解除する、ゆっくりと扉をあけると技師の部屋からチリンチリンと音が鳴る、心臓がバクバクと鼓動し飛び出そうなほど驚かされる。

何も起こらなかった、扉を一旦閉め再度開けると、またチリンチリンと音が鳴る。これは不意の侵入者を防ぐための防犯の仕掛けだった。

深夜に忍び込んでも最初に技師が気づくように、単純だけど効果的な仕掛けだ。


恐る恐る院長室の扉の前までくる、開けようかどうか逡巡する。

扉に罠は仕掛けてない気がする、院長室は日中出入りする人は多いはず、間違って罠を解除し忘れたら大事になるからしないのではないか。院長室にある机の引出しや書庫の扉などは、本人以外は開けないから罠を張ってる可能性は高い。


鍵を開け室内に入った、何も起こらない予想は当たったらしい。安堵する。


本棚に置かれてる『初めての錬気道具』『やってはいけない治癒錬気』『治癒錬気概論』を記録し戻す。その他は棚の扉を開けないと無理だ、下手に触って毒でも塗られてたら助からない。くわばら、くわばら、そんな危険を冒せないわ。


探索は諦め早々に退散することに決めた。体は汗をかいていた、今までにないほど身の危険を感じた。

二度と御免だ。



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