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第20話 模擬試験

第20話 模擬試験


ドンドンと早朝に花火が上がった。


開催の花火が上がり講堂に子供達が続々と集まってきた。

《武術大会の参加者を決める》模擬試験の始まる合図を待っている。


壇上に院長ほか教官たちが上がってきた。


「えー皆さん・・・ これより本大会へ向けた模擬試験を二日間に渡り開催したします」

と副院長が宣言すると会場からは歓声が上がり拍手が起こった。


「開催にあたり院長より一言ご挨拶を受け賜りたいと存じます」


「今日の試験は本大会に向けた大事な試験です。皆さんもそうですが、特に特待生は日々の鍛錬を遺憾なく発揮するよう頑張って下さい。特待生を上回ることは難しいかもしれませんが、順位が悪くとも予備戦は出れます、本大会に出られるよう挑戦して下さい」


《何だよ、その一言は、特待生以外はどうでもいいみたいな発言は責任者として失格だろう》


「毎年エゾ商会で武術大会を開催していますが、来年の大会に少年の部を設けるそうです。まだ具体的な日時は決まってないそうですが、当孤児院からも数名の代表者を出すことになると思います、出場し活躍すれば名誉だけじゃなく、将来はエゾ商会での職・地位も得られます。それでは例年以上に頑張って成果を出してください」

院長の発言に会場は「おぉー」と異常な盛り上りを見せ拍手があがった。

卒院者はほぼエゾ商会の会員の商会に就職している、なかでも本店と呼ばれているエゾ商会組合に就職すれば将来安定した収入を得られる、みんなの憧れの職場なのだ。



「院長ありがとうございました。続きまして、タイラン教官から試験内容を発表して下さい」


「まず試験科目は気装壁の試験と剣装の二つの試験になる。一つ目の気装壁は第二教練場で行う、やぐらに六本の鐘つき棒を設置してあるが、やぐらの中心に立ち、四方から飛んでくる鐘つき棒を気装・気装壁で防ぐと得点になる試験だ。あと逃げてかわしても点数にならないし、鐘つき棒を止めて自分からぶつかっても得点にならないから注意するように、やればわかる以上!」

《教官殿は相変わらずだな》


「二つ目の剣装はヴォーグ教官からお願いします」


「剣装は明日になりますが会場は第一教練場で行います。会場には木人樁もくじんとう、人を象った木の人形が置いてあります。人形は左右に90度回転し、手足も自在に変化するようにしてありますから人形だと思って油断しないで下さい。人形に頭・胴・足の三か所の的が付いてます、その的に当てると1得点になります。人形の動きを止め素早く連撃を行うと高得点を狙えますよ、無理なら地味ちに得点する方法もいいでしょう。私からは以上です」


「以上を持ちまして開催式を終了いたします。詳しい内容は会場で説明しますので移動してください、あと補助する方も準備のほどよろしくお願いします」





第二区教練場にやぐらが5基設置されている。一通り説明を受けた後、試験が開始された。


持ち時間は15分もあるので時間配分が大切になる。陸上競技で言えば長距離走の部類に入るだろう。考えなければいけないのは配分を間違えると後半は手足が動かなくなる可能性が出てくることだ。

15分間全力を出せれば270点前後取れるらしいが、現実的に無理な訳で8割って所が最高得点らしい(過去の例)。そうすると220点前後が1番の成績になる。



ゴーキは182点で終わった。

「チクショー 思ったほどいかないぜ~ もっと練習しとくんだったなー」

ユーキ、カレンは160点ちょっとでした。

ゴーキは120人中40番台、ユーキ・カレンは120人中60番台


「タロー やっぱり練習していた方が良かったのでは?」

(高得点を取りたければ練習も必要だけど、実戦に役に立たないからしなかったんだよ。)


「最高は232点の特待生Aか、次は224点のBだね。上位陣は特待生が占めたわけだ」


(まぁー得点として優秀なわけだが、高得点に大した意味ないけどな。飛んでくる鐘つき棒を完璧に気装壁で防ぐと時間がかかる、見てると中途半端で防いで次々と鐘つき棒に気装壁を当てに行ってるだけだろう。実戦でそんなのたっやら倒され殺されてしまうな。要領良くやった得点に意義を見出しても時間の無駄だろうぜ)

「そう何だけどなー でも悔しいのは悔しいぜ」

ゴーキは三人の中でも気装壁はずば抜けて上手なわけで悔しがるのは分かる。

「バカにしてはいい事を言う、確かに・・・面白くないわね」

「クゥー バカって何だよ!」

「二人とも揉めないでよ」



そこにタイラン教官がやって来て、

「今日は頑張ったなー、三人とも良い成績だった」

「教官は節穴なんですか?ちっとも成績が良くないんですが、私達を馬鹿にしてますー」

「いやいや馬鹿になんかしてないぞ、ゴーキの182点は見る者が見れば感心するはずじゃ。だから誇ってもいい位だと思ってるぞ」

「誇ってもいいんですか、アハハハッー」

ゴーキは両腕を腰に当て胸を反らしながら笑い出す、すこし機嫌が直ったらしい。

「このー お調子者~」


「まぁー 点数のことは気にせず、明日も頑張れ!」




模擬試験の第一日目は無事終了した。


上位を目指しているわけじゃないから、こんなもんで良いだろうと思うのだが、当人たちは悔しがり不満だったらしい。



2日目は剣装の試験

動く人形(木人樁)に頭・胴・足の三か所の的に当てる試験だ。

3連撃   1分当たり 60秒÷4秒×3連撃=45回   ×15分=675点

2連撃   1分当たり 60秒÷4秒×2連撃=30回   ×15分=450点

突き・撃  1分当たり 60秒÷3秒=20回        ×15分=300点

15分間を連続で動けないし最高でも8割ってところだろう。突き・撃の技は疲れにくいから得点は少し上がるかもしれん。3連撃なら最高得点が540点となる、突き・撃は260点が目安だろか、普通は連撃と突き・撃の組み合わせだろから450点以上が上位陣に入る点数になる(過去の資料)


会場の第一区に人が集まって来た。


開始順は昨日の得点の低い方からすることになっている、ユーキ・カレンはお昼前の時間帯でゴーキは午後からになるだろう。


「始まったみたいだね」

「おーし 俺も準備運動でもやるかな?」

「何いってんのよ、あんたは午後からでしょ。今から気合い入れてたら本番前に疲れるわよ、少しは考えなさいな」

(ゴーキ、確かに今からは早いな。それと昼食は早めにとっていた方がいい、あと軽めの食事がいいだろう! あまり気にする必要はないんだけどな! 一応いっとくわ)

(タロー 得点あげる方法教えてくれねかー。連続で連撃を沢山入れればいいのか?)

(そうよね、なんかシュパッ シュパッ・・・とバシバシ連撃決めればカッコ良くない?)

(すごくカッコいいかも知れないです)


(やめ、やめー そんな事したらタイラン教官がガッカリするぞー)


「どうしてガッカリするの? すごくカッコいいのに・・・」

(今のお前たちなら連続の連撃を繰り出すことは可能だろうが、攻撃のほとんどは手打ちになるはずだ。見た目は派でだが、くそも役に立たない攻撃に意味がないってことだよ。そんなんで高得点だして喜んでいたら底がみえる技量・技能だと証明するもんだぜ。大抵は三流以下の奴だろうな!)


「そうなんだ! 僕は三流以下って見られるの嫌だな~」

「私もよ! それってカッコ悪いじゃない」

「三流以下そりゃー大問題だぜ、チクショー いい方法だと思ったのに残念だぜ」

三人は三流以下の言葉にガッカリした顔する。


(試験の方法は余裕があれば連撃を繰り出す、無ければ一撃か突きにする。あと的の中心に当てることも大事だな。得点が低くとも見る人が見れば評価はグーンとあがるはずだ)


(タローさん 別に的の中心に当てなくても円の中なら1点は1点ですよ?)

(そうよね?)

(確かにそうなんだが。人形は左右に回転してるだろう、的の中心に当てるには集中力が必要なことと正確な技量も求められる、つまり実力がないと無理ってことさ)

「実力者は的の中心に当てるってことだな? 分かったぜ!」


(考えてみろよ。今回の模擬試験は上位16名が本戦確定、それ以外は全員予戦に出場出来るんだから、それほど順位にこだわなくてもいいだろう。予選は対人訓練だと思えばそんなに悪いことじゃないはずだ)

「それは分かってるんだけどね、見栄も張りたいのよねー エヘヘヘ」

(高得点は欲しいだろうが今回は無しだぞ)

(タロー わかった!)

タイラン教官と三流の言葉が効いた、これで無理に得点を取りに行かないだろう。剣士として小さなこと、意味のないことであっても執着するのは悪いことではない。




順位の発表から3人が帰ってきた。


剣装と総合の成績はユーキ382点で合計545点総合33位、カレンが389点で合計549点30位、ゴーキは359点で合計541点36位の結果になった。

結果は順当だろう、高得点を狙いにいってない、狙えば16位内は確実だからこれでいいのだ。

予選の組分けはユーキが1班ー3番、カレンが4班ー2番、ゴーキが7班ー3番に別れた、3人の順位が近いため同じ班にならなかったのは幸いした。

各班(8班)の上位2名が本戦出場できる、予選は勝ち抜き戦で3回戦突破すれば本戦確定。



またタイラン教官がやって来た。


「今日も頑張ったなー、三人とも良い成績だった。今後も期待しているぞ、カレンは・・・まぁいいか?」

それたけ云って去って行った。言葉数は少ないけど何気に気にしてくるし見てくれているんだよな。


(そういえばカレン 何回か手打ちで連撃してたよなー?)

(えっー 何いってるのよ? 無いわよそんなの)

(あぁー 手打ち? きったねーな)

(うるさいわよ。たまたま、成り行きでそうなっただけ)

顔を横に向けヒューヒューと吹けない口笛を吹いている、すこし頬が赤い。

(たまたまねー)

(そーうよ たまたまなのよ! たまたま!)


三人は驚いていた、タローの予想通りタイラン教官が褒めてくれたことに。改めて見た目だけの点数を取らなくて良かったと内心ホットした、高得点を狙っていたらガッカリしただろうから、いや怒られたかも知れない。周りの人たちを気にしない三人だが、いつも気遣ってくれるタイラン教官は別なのであろう。聞けば入所してから変わらず助言をしてくれた、ともすれば集団に馴染まない三人が浮いた存在だっただけに教官の一言は安心できた。

三人だけでいること、孤立する状態は5歳児にキツイ、普通に考えれば先輩や班に参加して交流をはかり成長した方がいい。入所する前から三人は知り合いらしいが、そこまで三人に拘る必要がある意味はわからない。タイラン教官は三人に拘ることを注意しなかったらしい、三人の事情を知っているのか謎の多き人物だ。

ユーキの記憶を探れば分かるのかといえばそうでもない、1枚1枚の映像を観ることは出来るが、時系列に並んでいる訳じゃないので理解しにくい、分からないといった方がいいだろう。時間を掛けつなぎ合わせれば可能だけど、本人が話したがらないことに首を突っ込むつもりはない。



ユーキが苦虫を潰した顔で聞いてきた。

(タロー 大会までの計画って考えてるんですか?)

(おうよ! バッチシあるぞ!)

(また基礎訓練の強化とかじゃないわよねー!)

(基礎は外せないから心配すんな。あと新しい錬気の習得だけど少し地味かな・・・)

(基礎と地味な錬気とは重いぜ・・・)


(お~い!  沈むなよ。錬気が身に付けば2割増しくらい上昇するはずさ、強くなれるぞ!)

(マジっすか! やったぜ!)

(そんな魔法みたいなものあるの?  2割増ねー・・・フフフフ)

(それってスゴイですね)

(詳しいことは明日な、今日はゆっくり静養するような)

(はい)




帰りに元特待生キラク、通称『お邪魔虫キラク』に声をかけられた。

周りをキョロキョロしながら小声で。

「ユーキ君だよね。ちょっと相談があるんだけどのってくれないスか?」

「今ですか?」

「いやいや、暇な時で構わないから頼むスよ」

嫌な予感がする。

「考えておきます。では・・・」

ユーキは素っ気なかった、キラクと別れスタスタと施設に帰っていった。


お邪魔虫キラクはニヤついた顔して三人を見送っている。


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