第19話 模擬試験前日
第19話 模擬試験前日
何時もの通り第三区教練場に3人は集まってきた。
軽く朝練をする、休んでもいいのだが落ち着かない様子に許可した。
一汗かいて休憩しに来た。
(汗を拭きながらでもいいから聞いてくれ、模擬試験、本大会、今後について再確認しとくぞ)
大事な話しだと感じたから大人しく聞いてくれた。
(まず模擬試験だが上位16人に入らないでくれ、参加者は120名だから良くて30、40番台を目途に調整した方がいい。活躍したい気持ちは分かるが、今の実力じゃ中途半端な力しかない。目立って潰されることになれば元も子もない)
年少組の三人が上位になれば警戒される、危険におもわれれば排除しようなどと行動されれてもかなわない。院長一派の意図がみえない現在、こちらも目立った動きをするのは良策と言えないだろう。
「実力を出せないのは悲しいですけど、我慢しましょう!」
(では本大会はどうしたら良いか聞きたい)
「優勝したら、まずダメですよね」
「優勝はさすがに無理なんじゃねー、頑張っても4位くらいだろうな?」
「またアンタなに言ってんのよ、4位なんてマズイに決まってるでしょ。タローは目立っちゃいけないって言ってるのに考えなさいよ!」
さずがにユーキは優勝したいと言ったわけでなく活躍したらダメの確認だった。ゴーキはそのままの意味を取ったのだろう、相変わらずだ。
「僕は本戦の32名の枠に入るくらいがちょうどいいと思う」
「特待生と上位者が2、30人くらいだろう、あんなの目じゃないぜ、ケチらしてやるぜ」
「あっそー 好きにしなさいよ。本戦の1回戦負けって寂しいから、一人くらいは1回戦突破なら目立たないんじゃない」
「そうだね1回戦勝てば16位の順位だから、間違って勝ち上がった程度で考えてくれるかも?」
「3つ勝って4位はダメか?」
「バーカ、仕方ないね ゴーキに1回戦突破の栄誉を譲ってあげる。それ以上勝ったらボコボコにして川に投げ込むわよ。わかった!」
「おおおっわー、こえー・・・」
ある意味無敵だ、何も考えていないゴーキは気楽で無頓着な発言をする。
「僕は要注意人物だろうから目立ちたくないし、予選3回戦敗退か本戦1回戦で負けるよ」
「私も予選突破でいこうか、本戦1回戦負けでどう! タローどうだろう?」
(ちょっとゴーキはやり過ぎにみえるが、その計画でいこう。予選3回戦目と本戦を勝つときはギリギリ勝ったように細工してくれよ。ゴーキは特に計画をぶち壊さないように気をつけてくれな)
「俺なの? 信用ないよなー」
「アンタが一番心配なのよ」
「へい、へい」
「へいじゃなく、はいよ それに2回いらない!」
(ハハハハ)
模擬試験は大会16名の選出と予選の組み合わせを決める試験だ。試験は上位16名に入らず予選にまわることに決定した。
(今後についてだが。まず、対外試合で皆の実力を自覚できたのは良かった、確かに上級者と対等に戦えるまで強くなったし実力もついた。よく頑張った、この成果に喜んでいる)
院長達のことは何度も注意を促してきたが、再度話しておいた方がいいだろう。
(強くなったいえ、あくまで孤児院の中の結果しかないと気付いてるずだ。大人の中に入れば、ひよっこでしかない、簡単にあしらわれて終わりの実力だ)
自覚しなければならない。8歳児に強いるのは可哀想だが、院長一派みたいな不気味な連中と対峙するためには、こちらも覚悟を決めなければやって行けない。
(大人を頼ればいいのだが、誰が味方で敵なのか判別つかない。まだ危険は去っていない事実がある。頼れないなら自分たちで対抗するしない)
「はい」
三人に気掛かりなことをぶつけてみた。
(確認だが教官や菜園長はいい人だと思う、どうだ!)
「思います」
(じゃ何故、長く居るのに補助脳や「呪い」のことを全く知らないんだ。知らんぷりしてるのか?)
「・・・・・・」
(カレンが倒れたとき親身に助けようしてくれたが、あれは演技じゃないと自信もっていえるか?)
「自信はありませんが演技じゃないと思います」
(俺もそう思うが。前世でも人が良さそうなのに性悪がいたから確信が持てないんだ)
「タローさんの世界は、そういう人もいるんですか?」
(人生長いから一杯みてきたぞ。本当に悪い奴は外見はいい人ってのが多いな)
(お前たちも、絶対信用できる人を見つけて欲しい。ただし本当のこと話しちゃいけないぞ)
「わかりました」
「僕はタローさんと一緒だから見つけなくてもいいのでは?」
(俺、たまに返事しないことあるよな)
「最近はちょくちょくあります」
(ユーキと接続切っているのは、外界を遮断して錬気の訓練してる時なんだ。身体を使わない錬気は何時でも訓練できるわけだ。だからユーキが何をしていたのか全部は知らないのだよ)
「へぇー」
(話がそれたが、・・・そう人だったな。信用できる人が見つかるまで自衛するでいいか)
「はい」
口で言うほど教官や菜園長を疑っていない、信用のおける人だと思ってる。
けどユーキが院長一派から脳に補助脳を埋め込められ、操られるているなど話しても信じてもらえるのか自信はなかった。
逆に少年の空想や妄想に落ち着きそうな話しだ。
事の顛末を知っているのはタローしかいない、ユーキじゃないしカレンやゴーキでもない。まさかユーキの脳に別の人がいて言ってますなど、骨董無碍の話しを信用してもらえる自信がない。
証明しようにも証拠は全くない、補助脳を埋め込められた本人も気づいていない、まさか脳を開いて確かめようなど言語道断だし。
騒ぎ立てても世迷言にすぎず、訳のわからない繰りごとを言う少年少女だと笑われるのがおちだ。何故か、今は沈黙している院長一派もさすがに黙ってはいないだろう。騒ぎ立てれば真相を闇に葬る行動に出てくる可能性もある、孤児院を放逐したあと暗殺するなど手はいくらでもあるだろうしな。
今も孤立無援の状況はかわらない、あと少し力をつければ院内は安全になる。外部から最強の暗殺者を送られたら困るが、そんなバカなことはしないだろう。向こうから手を出さない限り、こちらも目立った動きをしないことが無難で一番の安全策、君子は危きに近寄らずだ。
気掛かりというか、三人も気にしてることも聞いてみる。
(次の問題も山積みなんだが、特待生に付いてる「呪い」をどうかしたいと思ってないか?)
特待生の中でどれくらい補助脳を持っているのか確認できてる訳じゃない。
「私は死にそうになったから分かるけど、二度とそんな人を出したくないわ」
「許せないと思います、助けられるなら助けて下さい」
「俺も助けて貰ったから何とかして欲しいぜ」
暗い話しが続いたので重い空気がパットはれ表情が明るくなった。
(・・・・・・)
助けたい、そうなるよな、タローはやけに気持ちが重くなる。
確かにユーキたち三人を治療したのはタローだ、一見すると同じようにみえるがユーキ以外は治療していない。「呪い」が掛かってる場所は補助脳だけである、ユーキの脳に住んでるタローはユーキの補助脳を治した。これは間違っていないが、カレンやゴーキはタロー指示で自分自身で治したという事実だ。
何故、タローがしなかったか?
答えは簡単だ、治せなかったのだ。
ユーキ以外の補助脳は治療できないから本人たちにお願いした。あの時は急いでいたこともあり深く追求しないで最適な処置する方法を選択していた。
(希望を持たすのは良くないから結論を先に言おう、「呪い」の解除は難しいと思った方がいい)
晴れた顔が一瞬で曇った。
そうだろうな、ここは孤児院なのだ。
好き嫌いだろうが、全員は孤児というもので繋がっている特別な仲間だ。
彼らにとって特待生だって仲間なんだよな。
(暗くなっても進まない、確かめたい事があるのでカレン実験に付き合ってくれ)
「いいわよ 何すればいいの?」
(カレンの脳に潜る、この前みたいにいてくれ。目を瞑って安静にしてくれよ慎重に頼む)
「わかった、バッチグーよ」
(バッチグーか そりゃいい! では始めよう)
ここはカレンの深層なのか解らないが、頂上から暗闇の中を降りていく、カレンが眼下で手を振っている。実に不思議だ、現実の脳内にカレンは存在していないのに、あるかのごとく見えるのだから。
「ようこそ タロー また会えて嬉しいわ」
「そうかー ここでしか会えないんだな。暫くぶりだな、いつも会ってるのに変な気分だ」
「そうよ いつでも会いに来てもいいのよ フフフッ」
「ここじゃ何だから、補助脳へ向かってくれるか」
カレンに連れられて補助脳へやってきた。綺麗に整理されてる大丈夫だな。
「大きさはどうでもいいから四角い牢屋を作れるかい、想像すればいいと思う」
「やってみる、扉はいるわね」
一瞬で現れた3m四方で鉄格子の牢屋、鍵付きの扉も付いてる。
扉を開け何度か出たり入ったりしてみた、出入りは大丈夫だな。
「中に入ったら鍵をしてみてくれ」
中に入り鍵をかけもらった、出ようとしたが鍵を開けられなかった。
カレンに開けてもらい牢屋は消してもらった。
「ロープを出して手を縛ってくれないか」
「タロー嫌らしいこと考えない?」
「馬鹿いうな、まず右手だけ次は両手で頼む」
時間がかかったが右手一本なら縛ったロープは外せた、両手は無理だった。
「だいたい 解った 帰ろうか」
「ちょっと待って、もう話しは終わりなの?」
とカレンがタローの腕をつかんだときビックリした。払うことも外すことも全く出来ないのだ。
「大事な話しは外に出てからにしよう」
手を放したので俺は頂上に向かって風船のようにゆっくり昇っていく。そして目覚めた。
味わったことのない恐怖に襲われた。
(タロー 聞こえてる?)
(・・・・・・)
俺は先ほどの事の一部始終を語った。三人は覚悟をしたのか落胆はしなかった。
それよりタローが捕らわれる心配をしたみたいだ。
他人の脳に潜るタローはそこで何もできない事実が明るみになった、拘束されたら脱出も不可能になる。ユーキと切断され、自身は消滅しないけど他人の脳内に縛られることが分かった。
「無敵のタローに弱点もあるのね、今度きたら鳥かごに住んでもらおうかしら」
(バカいうな、顔まじで笑ってないぞ。恐ろしいやつだな!)
(補助脳と「呪い」は迂闊に手を出せなくなったな)
「私達はタローのお陰だけど、とても運が良かったんだねー」
カレンが思い出したように、しみじみと言った。




