第17話 対外試合
第17話 対外試合
第三区は快晴だった。
基礎体力の強化のため第三区を一周の日課をする。また準備運動も念入りにする。
今日は第二区教練場へ殴り込み、いや練習試合をするのだ。
教練場は1~3に区分されている、第一区は年長者の一部と特待生が主に使っている、施設に一番近い場所で使い勝手がいい、広さはテニスコート3面くらいあるだろうか。
第二区は1区以外の人が集まっている、整備されているから訓練は問題ないし第一区の3倍は広い。
第三区は整備されてないただの原っぱだ。所々に林があったりする丘陵地帯もあり、施設からもかなり遠いため人はこない、教練場は名ばかりでただの大規模の空地だ。牧草地だという噂もある。
今まで第三区で訓練しているのは戦闘や技を見られないためだ、タローは常に探知で索敵して人が来た時はユーキに遊んでいるふりをさせていた。
錬気の訓練や鍛錬を見られない為に、他の人たちと関わりを持たないようにしている。
「じゃー 第二区で相手してくれそうな人を見つけようか。元特待生だから無視されないと思うけど、なんなら強引にいちゃいますか?」
と言いながらカレンは第二区へ向かっていった、三人とも足取りは軽くウキウキしている。
この半年他の人と絡んだのは不良たちだけだった、カレンは不良たち二人をやっつけたけど、ユーキとゴーキは気力切れもあり本来の力を出せず痛めつけられた。実力を出せないまま終わってしまい、不良たちの力を見定めるまでに至らなかった。そんな関係で三人は不良たちを雑魚だと勘違いしてしまっていた。武闘大会の本戦に出られるくらいの力はあったはずだ、多分?
第二区に入り辺りを見回していたカレンの元へ走り寄ってくる少女がいた。
仲良しのアイリンだった。背は高くない、愛くるしいぽっちゃり型の少女。
「珍しいわね、カレンが第二区に来るなんていつ以来かな。そう一年以上前になるわよ、どういう風の吹き回し、嵐でもこなきゃいいけど!」
「バカなこと言ってないで、ちょっと聞いてくれる。練習試合をしたくて第二区きたわけよ、先輩の胸を借りにきたのはいいけど、私達知り合い少ないから困ってたんだ」
「そういう事なら私に任しといて聞いてきてあげる。私の班に強い人いるからお願いしてあげるよ」
彼女は脱兎のごとく駆けて行った、自分の班の人たちに事情を説明してるようだ。そして手を上げお出での仕草をしている。三人は其方に向け歩きだした。
一人の青年がユーキたちのもとへやってきた。
「私はこの班の責任者で9期生のトーマ・イートンといいます。君達かい練習試合したいのは、・・・うむ、『夜の徘徊者』と『奇跡の少女』、そして『お付きの人』か・・・」
ゴーキを『お付きの人』ってなんだよ笑える、当然ごとくゴーキは怒っていました。
「確か君達は12期生で断トツの特待生三人組と呼ばれていたよね。特待生を外された理由はしらないけど、前回の大会で歴代最高の成績、有り得ない成績で噂になった三人組だ。アイリンがとっても強いからって言う訳だ」
彼らは渾名が付く前に、もともと有名だった。
「僕の班からは6人が対戦できるよ、君たちが望むなら2戦も可能なんだけど体力的に無理かな?」
「いえ体力はありますから一人2戦でお願いします」
「初出場の前回の大会ですごい良い成績の残した。特待生の資格は無いんだよね。前大会ら一年、君らもさらに成長して強くなったと思う。特待生と戦える機会は少ないから願ったりだよ」
「大会は60位くらいですから大したことありませんよ」
「いやいや、初めて参加、技も使えない人が60位は普通ありませんよ、それが歴代最高になった訳ですしね」
「あの程度の力じゃー 偉そうにいえねーぜ」
「はぁー その言い方からすると、今は凄く強くなったってことかな?」
「今は何倍も強いぜー」
ゴーキが勝ち誇った態度にイートンは引き気味なのはおかしかった。大会で初出場は7歳児になる、錬気始めて1年に満たないから基礎の気装・剣装だけである。気衝、瞬歩、風切り、気弾などは8歳児以降になってから始める。大会に出ても最下位で終わるのが普通だ、60位代の順位は有り得ない、だから歴代最高になるわけだ。ゴーキの『何倍も強くなった』は大袈裟だろうけど、相当な実力を付けているとイートンは感じた。
「君 ゴーキ君か・・・ 話しが事実なら、こちらも作戦会議するから待ってね」
「嘘は言ってませんが、気になさらずに戦ってもらえればいいです」
「ユーキ君ですよね。 何だか自信ありそうにみえますが」
「大会以来、僕達は試合したことないから実力知らないんです」
イートンからすると、三人は決して弱そうに見えなかった。自分の方が引き気味になってることに驚いてる、ひょっとして自分より強いかも? いやいや、いくら何でも錬気始めて2年弱の人に、有り得ないはずだと思い直した。
「12期生で年下ですが、試合は全力で戦いますよ。それで構いませんか?」
「勿論、手加減は必要ありません。手加減されるならお断りします」
ユーキの言動は上位者の物腰にみえるし、ゴーキとカレンもニコニコ顔で聞いてる。上級生に試合を申し込んでる雰囲気にみえない、その姿にイートンはちょっと怖くなった。
「試合の時間は10分間の何でも有りでいいよね」
「はい」
《さて、普通に戦っても面白くない、班長はそこそこだけど全体の実力は中堅そうだ、ここは縛りを設けて戦った方が良さそうだな》
(こちらも作戦会議を始めよう。まず技は気装と剣装だけで、初戦は70%の力で、2戦目は上級者だろうから80%内で納めて戦うはどうだ)
三人は「えぇー マジっすか!・・・」と口を揃えた。
(勝たなくていいですが負けるのはダメだな。まずゴーキ、カレン、ユーキの順番で行こう)
7,8割の力と技なしで戦えは驚くのも無理はないが、これなら真剣に戦うだろう。顔は不満爆発しそうだだが戦ってみれば納得するはず。
練習試合を開始だ!
初戦はゴーキと11期生の男子と戦いに決まった、1つ上の先輩になる。
試合開始して、数度剣戟を交わした。ゴーキの動きがぎこちない、力を抑えてるせいでもなさそうでどちらかというと戸惑ってる雰囲気だ。
相手は気衝や瞬歩、風切りの技を繰り出して倒しにかかる。技のキレも威力も大したことない、やっと使える程度になった技量といえる。力を抑制してるゴーキは余裕でかわしてる。
ゴーキが俺達の方をみて困惑している。
試合中によそ見するなどバカの所業だスキをつかれる、すかさず相手の攻撃がくる。
「ゴーキ! よそ見してんじゃーないわよ!」
見もしないで相手の攻撃をかわした。ゴーキは戸惑っているのが分かった。けれど70%の力で相手を倒すことに苦心していた。そして10分が経った。
ゴーキに疲れた様子はなかったが、しゃが見込んでお経を唱えるごとくブツブツと呟いていた。
「よっしゃー 次は私の番ね」
とカレンは元気よく出ていった、2つ上の10期生だったが同じだった。
ユーキも同様の引き分けの結果に終わった。
彼らが戸惑ってる理由は力を70%に落として戦うことばかりでない。経験不足からくる相手を見切る力が足りていないだけだった。
イートンは疲れてるだろうかろと10分の休憩を貰える。
三人とも考え込んでいる、彼らは現実について行けなかったのだ。
理由を知っている俺は意地悪爺さんの心境だ。
(次は9期生以上だろうから80%以下の力でやってくれ、出来れば倒すつもりで頑張れよ!)
ゴーキの相手はやはり8期生か、流石にいい動きをしている。
相手の攻撃威力は大したことない、最初から気衝や風切りの技も入れきた面白い戦いになりそうだ。
互いに決定打をだせず引き分けに終わった。
カレンの方の相手は少女で体格はカレンより小さい8期生だ、この年齢だと気衝や風切りは普通に使いこなせるようだ。
ありゃーカレンの野郎、小さな瞬歩を入れてやがる。分からないと思ったのかちゃんと見えてるぞ。最後は瞬歩を使い横飛びして剣を振った、勝っちまいやがった約束反則だぜ。
ユーキの相手はトーマ・イートンかー
今までの人と立ち姿が違う、自然体で気負うところもない。
剣を流れるように中段から下段に下ろしていく気負いない構え。一方のユーキは剣を水平に目の高さに上げ、剣先を相手の顔を向け構える。
(ユーキ100%の全力でやってもいいぞ)
(いえ、80%でいきます)
ユーキの額に汗が浮かぶ、かなりの手練れの上位者と感じたに違いない。
じりじりと間合いを詰めていく。その瞬間、イートンが瞬歩で間合いを詰め下段から突きを繰り出す。早い、今まで戦った5人の力と比べ段違いの実力だ。
ユーキは体を半歩前にだし半身になりながら突きの剣を上段から当てた。受け止めた剣をすぐ真横に切り出した反撃する。
イートンは両手で剣を押さえ盾にして受ける、と同時に左手から気衝を繰り出した。
ユーキは焦って咄嗟に後方に下がってしまった、これは愚策だった。
気衝は真っすぐしか威力は飛ばない、それを真後ろに飛ぶなど最悪の悪手。
幸いだったのは半減した距離で受けたため打撃は少なかった。
カレン・ゴーキは食い入るように二人の戦いの様子を観ていた。
この後、ユーキは勝てないと悟ったのか更に慎重になった。
イートンも決定打をだすが、ユーキの天性の感なのだろう、ギリギリ気装壁で何とか凌いでいる。
ユーキはハァーハァーと息を切らし額からは大粒の汗をながしてる。
一方的に容赦ない攻撃、連撃も必死に凌ぐ。防戦一方の苦しい戦い。
攻撃に転じないのは時間まで耐える戦法なのだろう。
ゴーキやカレンなら負けていただろう、天性の感のあったユーキは何とか最後まで耐えぬいた。
小休止したあとイートンは近づいて不思議そうな顔して切り出した。
「先ずはありがとう、君達と戦えていい勉強になったよ・・・」
「しかし、君達は全力を出してなさそうに見えるが。 1戦目と2戦目の実力差、彼女は2戦目に瞬歩を使った。 ひょっとして全員使えるのかな? ユーキ君だっけ、私の気衝が当たる前に後ろに跳んだ、あれ実戦経験の少ない人が、よく間違って瞬歩でかわそうとする動きだよね。 やっぱり全員瞬歩できるんじゃないの?・・・ それと他の技も出さない、隠してない、縛りでもあるかのな、実に怪しいー?」
機関銃みたいにイートンは疑問をまくしたてた。まとまってないし、所どころ言葉被っている。
「気のせいですよ ハハハハ」
カレンは首を横に向け、鳴らせない口笛を吹いてる。お仕置きせねば。
「いやすまない。ここまで苦戦すると思ってなくて気持ちが高ぶってしまった、すまない!」
それにしても見事に見抜かれているな、眼力も鋭い優秀なのが分かる。
「全然 気にしてないぜ」
「これからも練習試合の相手をしてもらえないか。できるなら、またお願いしたい」
イートンは三人に向かいきちんと頭を下げた。これを年下の者に向けて素直にできるものではない、良くできた少年いや青年だ、真摯な態度は好感が持てる。
(みんな お願いしとけよー!)
「はい、こちらからも、お願いします」
大きな収穫があった試合だった、いい人を見つけられたし成果もあった。
本人達は自覚しただろう、君たちは相当強くなっている。そう滅茶苦茶、強い!
年中者の上位と戦って負けない実力はあるし、勝てるかは別として年長者や特待生と対等に戦えるだろうな。しかし年長者と対等程度で院長達に対抗するには心もとない。
院長達の陰謀や目的を捜しても情報を得られず不明のままだ。ユーキに何もしてこない、それが返って不気味で不安にさせる。
孤児院で院長達は浮いてる存在だが、他の職員ともめてる訳でない。勢力を広げるために職権使って仲間を増やしたり邪魔な者を追放したり排除もしない。
強者が強者の行動をしない、そこが返って不気味で恐ろしい。
まだまだ成長し強くなれる、それまでは院長達に目をつけられ潰されたくない。
あと一、二年は我慢の時期だろう。
ただ、タローから見ても三人の成長の度合いは早過ぎる、その原因は何なのか分からず心配になる。
三人は意気揚々と第三区に戻って来た。




