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第16話 特訓の日々

第16話 特訓の日々


季節は9月の秋、無事に感謝祭も終わり、これからは一日中訓練に励むことができる。


12月の模擬試験まで3ヵ月、三人とも大会に重きを置いてないが、それでも大会となればワクワクするに違いない。


訓練時間は長くなるけど、体力の基礎訓練と錬気の基礎を徹底的にすることに変わらない。今までより基礎時間が長くなる程度だ。

派手な応用技とかに行きがちだが、ここは我慢のしどころ。



この世界に体系化された錬気の本はないらしい、それぞれの時代で書かれた錬気本は、錬気を断片的にまとめた本ばかりで、全体を網羅する書物は読んだことがない。


広まってない理由は2つある。


1つ目は、紙と印刷が発達してないせいで書物は非常に高価だ。

作者が違っても書かれてる内容は一緒だったりする、購入しても無駄になることも多い。大金持ちでない限り、無駄な出費になると分かって大量に所蔵するなど無理だった。


2つ目は、恐らく錬気の技を他人に教えないことが影響している。

基礎錬気なら問題ないが、自分の編み出した技を易々と他人に教えるバカはいないだろう。

戦士・剣士は武術や剣技が生死を分けている、優れた技は他人より優位に一歩前に立てる。

その技を広めれば自らの命を危険にさらす、誰にも知られたくないのは最もな話しだ。



少ない情報で苦労したが【錬気】帳・・・第二版(タロー自作)を書いた。第二版の目玉は、新たに追加した『予気・感気』だ、これは三人の能力を飛躍的に伸ばすだろう。習得はまだ先になるが楽しみは増えた。





季節は10月の秋、気温は少しづつ下がり暑さはない。湿度も低く、絶好の訓練季節だ。


この季節の第三区は快晴だった。

基礎体力の強化のため第三区を一周の日課をする。準備運動も念入りにする。

今月も基礎体力と錬気の基礎を重点的に強化する。


三人は計画通りに順調に力をつけてきている、異常なほど急速に上達しているといえるだろう。


計画は、あくまで理想、希望的観測の計画案だった。


最近、大きな誤りに気づかされた。大失態!


この世界に詳しい訳でもないが、書物で読んだ限り1つの技は数か月~数年単位で修めるとある。


覚えたての程度の技など使い物にならない。


風切りの刃で例えると、覚えたては、そよ風程度の威力しかない。夏に扇風機代わりににするならいいが、相手に痛手を負わせるとなると数か月の特訓は必要になる。実戦に使えるまで数か月だ、これで《初級》の技量になる。


上級者と対峙したら初級の技は牽制や足止めにもならない、実用性を考えると中級の技量は必要になる、中級となれば上達するに年単位の時間がかかるらしい。


剣士として生きるなら気装(壁)、気衝、瞬歩、剣装、風切り、5つの技は必ず取らなければいけない。この5つを中級にするまで10年はかかると言われてる、実力は兵士のなかで中位程度の力量に相当する、上位者は気衝撃や剣衝撃を使いこなす技量も必要だとなっている。


半年前はそんな事を知らず、立てた計画は実現不可能な代物、希望的観測テンコ盛りだった。


俺は精神生命体のせいなのか錬気の習得と上達に苦労はなかったし、簡単に出来るので難しいものだと考えもしなかった。

それに三人も順調に計画を消化していく、いや、それ以上にこなしてる姿をみて、錬気の習得と上達の難易度を最近まで見誤っていたのだ。


三人は初級を終え中級の領域に入ったところだ。さすがに気衝撃や剣衝撃はまだ初級から抜け出していないけど、常づね上達の度合い早くて驚いていたが、いくら何でも10年の修業を半年って異常すぎるだろう!・・・という結論になった。


摩訶不思議なところだけど、まぁ成長していることは良いことだ・・・としよう!

《南無さん》





11月になっても過ごしやすい気候だ。雨も少ないし訓練に最適な季節。


訓練始める前にカレンが言ってきた。

「タローなら判るかな?、私達ってどれくらい強いのか気になるのよねー」

「俺も知りたい、分かればやる気もでるぜー」


(そうだね、『気』の大きさは上位者の方じゃないか。錬気の方は判断する情報が少ないから難しいけど、時たま見る限り年中者、年長者も錬気はそれほど高くない感じだね)


「はぁ! 今さらっと重大な事実を言ってくれたわ、また聞くと驚くことになるんでしょ?」

「なに、僕は分からないけど」


(カレン 重大な事実とは何かな?)


「気の大きさの事よ、そもそも気の大きさを量る機械はないの、なのにタローは平然と大きさが判る話しをしてるでしょ?」

「確かにな・・・」


(何だそのことか、まず量る機械は持ってない。それと正確に気の大きさ、量も分からない。漠然とした大きさが判るだけの話し)


「それでも判るんだ?」


(種を明かせば不思議だとと思わないよ、索敵錬気の中で探知ってあるだろう、あれの応用技で出来るんだ。念話じゃなく探知に使う時、頭の中に人や動物の位置が点になって浮かんでくると思う)


「うん、薄っすらと点で浮かぶよ」


(探知をもっともっと訓練し鍛錬すると、点の大きさが違うことに気付く。気の量が大きいと点も大きくなるし光度も上がる仕組みになってる。そうなると一目瞭然だし見分けるの簡単だろう。気弾も判別できようになれば、不意打ちされても心配しなくなる。あと訓練中なんだけど気を自在に小さく出来るようだ、実験と実証は必要だが・・・)


「はいはい、トンデモ発言は何時もの事だけど、またまた来ましたか。・・もう3つもあるじゃん」

初めて聞いた事らしく3人は啞然としていた。


(3つ?・・・)


「3つはね『気』の大小の判別すること、種別できること、変化できることよ」


(『気』の大きさを適正な数値化はできないけど、自分だけの数値化は工夫しだいで可能だ)


(まずは基準になる人を作り、その人間を100点として点数を決める。その人間より低いと98点とか高い人は102点とか点数を付けていけば分類は可能になる。分類の仕方は点数でもなくてもいいし、仮に大中小の3段階の分け方でも問題ないだろう)


「なるほどね。でも基準の人を決めても、その人が変化しらおかしくなるんじゃない?」


(確かにそーだ、だから基準にする人は当然に変化しない人を選ぶ、例えばタイラン教官を基準にするとかすれば問題ない)


「そんなに人を細かく錬気で判別できるものなの?」


(細かく判別するには相当修練しなければ無理。その時は自分のできる範囲内で分類の仕方を作るのもいいだろうし、最低でも先ほど言った大中小の3段階くらいからでいい、できれば10段階は持ってた方が理想だろうな)


「10段階ねー 今まで考えたこと無かったけど、それくらなら出来そうね・・・」

「俺は強い・普通・弱いの3段階だな、まてよ勝てない、同等、勝てるの3段階か! ハハハッー」

「アンタは気楽でいいよね~」

「僕も5段階ならいけそうです」


(気の大きさ=強さの大きさじゃないので、区分の過信は厳禁だな)

「でもよー 気が大きいの強い奴ばかりだぜ」

ゴーキは直観型の人間だ、年長者の『気』を肌で感じて強さを判断してるんだろう。


(ゴーキの言ってることは間違いじゃないんだが、正解でもないだよ)

「??? 違うのか何でだよ!」

(納得してないみたいだな、なら何時も世話になってるタイラン教官と月1にくる騎士はどっちが強いと思う?)


「おぉー 難しいな? いつもくる正騎士の方が強いんじゃないか?・・・でもねーか」

「どうだろうかな~、正騎士の人って見かけ倒しの雰囲気あるじゃん!」

「僕も分かりませんが、タイラン教官はつかみどころないんです」

さすが三人だ、月に一度、特待生を指導にくる正騎士を推さないのは見所があるな。ゴーキは微妙なところはあるが。


(気の大きさは判断つくかな?)

「これは簡単だな、正騎士の方が断然大きいぜ!、俺達とタイラン教官はそんなに変わらないしな」

他の二人もうなづいている。

それを気づいているのか大したもんだ。


(俺からすると正騎士よりタイラン教官は強い、それも断トツに強い。団長の強さは知らないが、少なくとも部隊長になってもおかしくない強さはあると思ってる)

「えぇぇー マジすっか? すんげーぜ!」

「嘘ー それって国でも相当の剣士じゃん!」

「そ、そんなに強いんですか?」


えっっー 何この驚き! あの、おっちゃんを弱いと思ってたの? ああー可哀想に・・・


(タイラン教官を低評価とはお前達もまだまだな。『気』の種別と変化だが、卒院までに訓練して身につければいいから今は参考程度に憶えていればいい、卒院近くに詳しい説明と訓練すれば問題ないだろう)



ふと思った、タイラン教官はいつも俺達をちゃんと見つけて声をかけてくれる。

ひょっとして探知錬気を使って見つけているんじゃないのか?


院長が呼んでる講師は騎士団に所属してる正騎士だから優秀な剣士だろう。

タイラン教官は引退してるのに現役の正騎士より強いってどんだけだ、教師としては三流のドヘタなのだが腕は一流なんだよな。そんな人だから探知使えてもおかしくないか。



まて、まて、それって三人の力がバレてるって事じゃねーか。

院長派に属してないのか、何も言われないし起きないな?

タイラン教官は穏やかに見守っていてくれる様子だし、人柄はいい人で間違いないんだよな。


まぁー 何かあってから考えるか。


半年前と比べて猜疑心が薄らいできたし、前は置かれてる状況と突拍子もない事態に混乱していたから冷静な判断を下せていなかった。




三人は半年で訓練の成果もあり『気』の量も大幅に増えた、さらに身体の方も少年少女から大人の身体つきになっている。8歳児は前世で10~11歳児相当になるが、体格は前世と比べると圧倒的にこの世界の方が大きいく身長も高い。

三人とも春から10センチ伸びてる、標準より大きいためか少年少女にみえない、大人の男女と言っても過言ではない、大人と言うより青年と表現した方がいいかな。

カレンの身体は大人の女性と同じだ、体形は胸はないけど、やや細身でスタイルのいい女優さんにみえる。痩せてなく引き締まった体、筋肉が身体じゅうにまとってる感じだ。










秋が深まるにつれ、最近の三人は覇気・元気がない。


基礎練習ばかりしていたからかも知れない。体に無理を掛けないように訓練したことも影響してのかな?

最近は応用技の訓練もするけど、基礎を重点に於いてるせいで、十分に時間は取れていない。


《うーん やる気が出ない、困った問題だな?》


半年間、三人だけの練習は変化や刺激に乏しかったかも知れんな。院長一派に目立たないように、他人と関わらないようにしたことも裏目に出てる。


上手くなった、強くなったと言葉で褒めていたが、慣れてしまうと効果はなくなった。比較する人はいないせいで、当人達は実感ないだろうし確かめようがないのも問題だった。


三人で訓練すれば、強くなる実感を持てるだろうと思ってたらそうでもなかった。どういう訳か三人とも一様に同じく力をつけていくので変化はなかった、これはこれで不思議なことだ。

例えば三人は100mを11秒で走っていたとする、訓練で10秒に走る知れるようになれば実力は上がった証明なんだが、三人で駆けっこすると11秒でも10秒でも差はなく代り映えしないのだ。機器で計測できれば証明できるけど、この世界に速度を量る道具はない。少々早くなった感覚はあるだろうが、力がついた実感はないのだ。


《やる気が出て簡単に実力が分かる妙案はなんだろうか?》


(もしもし タローさん! おかしいな回線が繋がっていない・・・)


(ユーキか 何だ!)

(ずっと黙ってるので心配になったのです)

(悪い、ちょっと考えごとしてので気付かなかった)

ユーキと接続を切ったので繋がっていなかった。

《繋がるか~・・・・・・待てよいいかも知れん?》


(みんな聞いてくれ!)

「なんですか?」


(実力もついてきたから、第二区教練場で練習試合をしようと思うけど、どうかな?)

「やったー大賛成です」

ユーキが感情込めて喜んでいる珍しいことだ。余程辛かった、いや飽きていたのかも知れないな。

「おぉー ビックでナイスなアイデアじゃん」

「おおー、燃えるぜ、男は戦ってなんぼのもんじゃーよ」

カレンよ、この世界で横文字使うの止めてくれ~、普通は通じないはずだ。


まぁーこの反応みれば答えは決まってしまうな。



(みんな練習試合に賛成みだいだな。ただし条件がある、院長一派と関わりがない人に限る、後々の面倒事は避けたいしな)

「は~い!」



かくして第二区教練場へ殴り込み、いや練習試合をすることになった。



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