第14話 恐 喝 悪ガキのヴィクター
第14話 恐 喝 悪ガキのヴィクター
農作業の帰り眼付きのキツイ悪ガキのヴィクターとペーターが寄ってきて話しかけてくる。
「おい ユーキよ、あの事どうなった?」
「何だ、ヴィクターか? あの事とは何のことだい?」
「前に聞いとけと言ってあっただろ、てめえー忘れてんのか!」
「忘れただと、俺達を無視してんじゃねよー」
「ハエみたいに五月蠅いけど、いったい何の用だい」
ユーキは馬鹿にした風にみえないけど、言葉は辛らつだな。
「五月蠅いハエだと・・・でめえー もう一遍いってみろ!」
カチンときたらしい顔は怒気を含み、今にも突っかかってきそうだ。
「ペーター 少し黙れよ、話しが進まない」
「あぁ 分かったよ。 チッ!」
「ユーキ 前にカレンのことで話しした事あったよな?」
「カレンのこと、聞いたような気もするけど、何だったか憶えてないな~」
「はぁー7期生の不良のヴーリィァンさんからの言伝を伝えたはずだ。忘れたとは、いい度胸じゃねーか!」
「あっ 思い出した、何んか仲間になれとかやつだろうかい」
「急に思い出したか、ヘヘへ お前でもビビるか、7期生の不良のヴーリィァンさんは怖いだろうからな」
ユーキはヴィクターの言ってる意味を理解していない、ヴィクターが勝手に勘違いしてるだけだった。
「何で僕が怖がる必要はあるのかい、そもそも不良のヴーリィァンさんを知らないけど・・・」
ヴィクターは素直に驚いた、誰でも知っていると思ったけど、ユーキのように間抜けな奴もいるんだなと知ったのだ。どこの世界でも悪い奴はいる、普通は関係なくても一度や二度は話題になったり、噂で聞いてたりするもんだと思ってた。
「知らないなら教えてやる、ここで一番恐れられているのが不良のヴーリィァンさんなんだよ。その名前を聞いただけで大抵はビビッてしまうほどにな」
「へー それは知らなかった」
ペーターは追い打ちをかけるように言う。
「逆らう者はよー 必ず絞める。武勇伝は1つ2つじゃないぜ。どうだ、ちびっただろう!」
「何でちびるんだよ、お前バカじゃないの」
「バカだー! またコケにしやがって舐めてんのか・・・」
茹で上がったタコみたいに顔は真っ赤になる。威嚇するけど手は出そうとしない、実はユーキの方が力は上なのを知っている。
「うるせいぞペーター。さっきから黙れといってるだろうが」
「あぁ分かったよ」
「ペーターの言ってること間違ってねーぜ。ところでよー、カレンの事はどうなったんだよ?」
「そのことね、まずカレンに聞いてないな。僕じゃなく直接カレンに聞けばいいんじゃない」
「お前にも関係あるじゃねかー 班を抜けて不良のヴーリィァンさんの所へ来いって話しなんだしな・・・」
「カレンが抜けると言うなら仕方ないけど、僕から抜けてくれとは言わないよ」
ユーキの言葉にヴィクターはまた驚いている。
「お前ら三人とも特待生は外されたよな」
「外されたねー」
「ところで、誰か後ろに、裏にいたりするのか?」
「裏? あぁー だれとも繋がりはない、三人だけだよ」
特待生は院長の肝入りで始めた制度だ、当然に優遇されているし注目されている。特待生と問題を起こすことは院長と揉めることと同じ意味になる。
「自分の置かれてる状況を知ってて、不良のヴーリィァンさんに逆らうとどうなるか分からねーのか?」
院内で不良のヴーリィァンは裏の番長ということだろう、後ろ盾のない人間が逆らえば痛い目に合うと言いたいらしい。
「逆らう気もないけど、従う気持ちもないな」
「呆れたぜ、 最後にもう一度聞く。不良のヴーリィァンさんの言うことに従わないと伝えてもいいんだな?」
「お好きなように伝えてもかまわないよ」
「随分と余裕かましてんな、まぁー後で泣きみるからいいけどな」
「ペーターの言う通りだ。伝えたら黙ってる人じゃないぜ、困って泣きついてきても知らんからな。怪我しないように十分気をつけるこったな」
「フッ バカな野郎だぜ」
「帰るぜ」
虎の威を借る狐いう諺があるが、悪ガキの威張り方は狐だった。力量は狐じゃなくネズミでいいくらいの小物なんだけど。
ユーキにとって不良のヴーリィァンだろうが眼中に入ってなかった。強かろうが弱かろうがどうでもよかった、目指してるのは頂点、つまり一番強くなるために日頃から努力しているのだ。タローから言われている基礎練習は欠かさずやってる。基礎は地味で飽きもくる、でも手を絶対抜かない。ユーキの中にあるのは、ただ、ただ強くなりたい一心で真面目に励んでいる。
院内の頂点が目標でない、もっと先にある頂を目指している。ユーキ達は目指さなければならない理由があった。
タローは断片的に聞いていた、三人に技の鍛錬を教えてからは表面上に顔を出さなくなった。最近は自分の訓練に忙しく、必要な最低限しか口を挟まないようにしている。三人が分からなければ助言をし、間違ってれば指摘する。基本は三人の自主練習だ、自ら考え悩み練習していくことも、上を目指すなら大切な部分だろう。
タローは訓練に最適な場所を発見した、剣術や錬気をする場所の心配はなくなっり効率はすこぶるいい。副産物のお陰で理想といえる場所になった。
いつものように午後から訓練の開始。
夕方くらいに三人とも倒れる寸前まで、いや気を使い果たすまで追い込んでいく。平常で技を使って気を放出しても総量は増えないことが解る、総量は実戦形式でしか増えないらしい。
これは誤算だ、世の中そう簡単にいかない見本だな。
夕方の終了時は疲労困憊で立つのがやっとの状態だ。
事件があったのは次の日の午後であった。この日はカレンは3時から総代会の会合があるからといって抜ける。
第三区教練場に目つきの鋭い厳つい顔の大人が2人やって来た。
「この辺でいいのか、うむ、何だこの丸太の木は1、2・・・9本も立ってるじゃーねか」
不揃いに立つ丸太は一見すると練習場に見えない、規則的でないことで異様な雰囲気があった。
「おい、あっちで練習してる二人が目当てじゃないか」
ターブリィが丸太の陰で見えなかった二人の姿を指を差して言った。
「お前らユーキって奴を知らねーか」
「ユーキは僕ですが、どちら様ですか」
「オメーがユーキっていうのか? もう少しガタイのいい奴を想像してたんだが、見たところあんまし強そうに見えねーな。・・・俺はなヴーリィァンで、そいつがターブリィというもんだ」
「ヴーリィァンBさんですか、それで何か御用ですか」
『ヴーリィァンは納得した、ユーキは人をおちょくった話し方をするからと聞いてた通りだ。しかし、俺の名前を聞いても怖がらないし平然としている、ひょっとしてアホな奴かも知れん。もう一方はガタイもいい背はまあまあ高い、見るからに脳筋バカぽい雰囲気の奴だな』
「用ってのはヴィクターに頼まれてよー、お前らに稽古をつけてくれとお願いされて、わざわざここに来たわけだ・・・」
「悪ガキのヴィクターに頼んだ記憶はありませんが、ご足労いただきありがとうございます」
ユーキの返答にターブリィはヴーリィァンと見合わせ呆れた素振りをする。俺達の事を分かっていても、こんな態度をとるほど実力があるのか?いや、ぜんぜん強そうにみえないな、きっと状況を判断できないバカなのだ。
「まぁー いいってことよ。折角きたんだから、みっちり稽古つけてやるかな」
「そうですね、来ていただいたのに申し訳ありませんから、稽古お願いしましょう」
「ユーキ これ、どうゆう流れなんだ?」
「ヴーリィァンさん ゴーキと打ち合わせしますので待ってください」
「おお 好きなだけ打合わせしてくれ」
ゴーキは全く流れについてこれないでいた、当然だ先日の悪ガキのヴィクターのことの件を聞いていなかった。
ユーキは脅しにきたことを簡単に説明する。
「そうゆう事か、何か面白そうな話しだぜ。稽古つけてくれるなら万々歳よ ハハハハ」
(ハハハハ ゴーキらしいな。ところで俺は参加した方がいいか?)
(えっタローさんが参加するんですか)
(お前ら、相当に体力消耗してるだろう。勝てないかも知れんぞー)
「そうですね、無理っぽい感じですかね」
「あぁー確かに・・・それもいいんじゃねー」
(ブチのされたら俺が替わってやる。あと気力切れは起こすなよ折角の訓練が無駄になる)
(分かりました)
「おい見ろよ。ゴーキといったか、あいつ笑ってるぞ気味悪い奴らだな、俺達のこと知らねんじゃーないのか」
「いやそれはない、ヴィクターが教えたらしいからなー。確かに得体の知れないところはあるけど、ただのアホとバカってこともあるだろうぜ。所詮12期生のガキだ、俺達がビビる必要はない」
「確かにな・・・、やり方は気絶させないで痛めつける方法でいいんだな」
「いつもの通りだ。なぁーに 少々痛めつければビビって何もできないさ。泣かれると面倒なだけだろうが・・・」
「そりゃそうだ、ハハハハハ」
1対1で同時に試合が始まった。
互いに剣を構える。
『ほうー なかなか構え方が様になってるじゃねか。先ずは小手調べといこうか』
不良のヴーリィァンは剣を上下段・横から繰り出す。ユーキは反撃できず受けたり躱すが精一杯。
『12期生ならこの程度だろうな、心配したのは考え過ぎだな、チラッと見た限りではターブリィの方も余裕で戦っているな』
『速度上げるか、瞬歩で度肝を抜いてやろう』
瞬歩でユーキの真横に跳び早めの薙ぎ払いを出す不良のヴーリィァン。
辛うじて受けれたが威力を消せないためユーキは数m飛ばされてしまった。
「ほうー いい反射神経してんな。そこは元特待生ってことだろうな」
「いえいえ、それほどでも」
不良のヴーリィァンは追撃をしなかった、時間をかけいたぶるから焦る必要はない。
通常の速度で剣を上下段・横、更に2連撃を入れていく。しかしユーキに当たらない。
『大したもんだな。動きは遅い割に防ぎやがる、全力でいくしかないな。悪く思うなよ』
それでもユーキは全力の剣を受けかわす、攻撃をやめ防御に徹する戦いに不良のヴーリィァンは苛立ち始めた。
連撃を止め鍔迫り合いになった時、強烈な足蹴りを繰り出した。予期してなかったユーキはもろに食らい数回転して転がっていく。
『ちっ! やっちまったか? 大怪我はしてくれるなよ』
不良のヴーリィァンは大人げないく本気になったことを悔やむ。格下の12期生に焦る必要はないはずだ、それも反撃しない相手に自分がビビってる。
ターブリィも同様に苦戦をしてるようだ。
ユーキが剣を杖代わりにして立ち上がってきた。
『立ち上がっただと、あれを食らって立ち上がった奴はいない、どうなってやがる』
剣を構えて立つユーキ、降参はしない意思表示だ。
『いい気になるなよ』
不良のヴーリィァンの方が冷静さを失ってる、連続の瞬歩で詰め寄り連撃を繰り出す。さすがに躱す余力がユーキに無かった。
致命傷はないがユーキは気を失ったようだ、程なくしてゴーキも倒される。
「こいつら何なんだ、ガキのくせに泣きも喚きもしない。何故か攻撃してこないし倒れても起き上がるんだぜ」
「こっちもだ、俺の会心の蹴りを食らって起き上がったのは驚いた」
驚くのも無理はない、不良たちの攻撃など普段の練習からみれば大したことない威力。そんなんで一々倒されたらやっていられない。




