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第13話 技の鍛錬と習得(3)

◇第13話 技の鍛錬と習得(3)


▽跳躍で飛ぶ

跳躍の初歩訓練も終わった。


カレンがもう待機してる。ここまで期待してるのに延ばすのは気が引ける。

(カレン やる気十分だな?)

「えへへ・・・ だって飛びたいんだもの待ってられないわ!」

(仕方ないな、けど2段跳びは危険だ。最初は軽くやることと、落下した時は必ず気装壁を張ることが絶対条件になる)

「軽めでやること、気装壁を張るね。了解!」

他に細々と注意事項も説明していく、念には念を入れても安心はできない。



カレンは3mほど高さに跳びあがり、すぐさま跳躍を繰り出すした瞬間、身体はあさっての方向へ飛ばされていく。

7mほど先の草藪まで飛んでいったが、気装壁で衝撃を防げば大丈夫だろう。

「わぁー ビックリしたー。2段目は全く予想もつかない方向へ飛ばされるのね。でも飛んでる感覚は楽しいわ!」

カレンは身体についた草を払いながら、満面の笑み浮かべて喜んでいる。


まだやるつもりだ。

何度も挑戦するが方向は前に飛んだり後ろだったり四方八方の方向に飛んでいく。

無理もない空中では平衡感覚が鈍るのだ、気衝の角度、方向とタイミングがずれると上手くいかないどころか、あらぬ方向に飛いんでいく。


跳躍の2段飛びは3つの問題をかかえてる。

1つ、飛ぶと空中からみえる地面が判断基準になる。水平から飛ぶ時は感覚のズレがなくいいが、斜面から飛んだ場合は、斜面(地面)が水平の時と同じに見えることの問題。斜面から飛ぶと間違いなく方向を誤り失敗する。

2つ、気衝で体が横、縦回転してしまう問題。これは簡単に解決できない、そもそも人間は飛ぶような身体や器官を持ってない。鳥と同じ翼があれば制御できるかもしれない、鳥人になるか? それ人間といえるのか疑問だな。

3つ、気衝の発動までにコンマ数秒の誤差が生じる問題。この時間差も考慮しなければならない、脳内で高速演算が可能ならば少しはマシになる。瞬時にコンマ数秒先の気衝の角度、方向とタイミングを割り出せればいいけど、そんな人間はまずいないだろう。


これらが跳躍の2段跳び以上を推奨されない理由だ。


鳥人になるは100%無理だろうし、可能性があるとすれば、人体と繋がったジャイロセンサーがあれば飛行は可能かも知れない。


カレンに刺激されたのかユーキとゴーキも2段跳びに挑戦し始めた。『人間が飛びたい』はどの世界でも欲求はあるのだろう? カレンと同じ結果に終わる。



飛ぶことに浪漫はあるが現実は難しいってことだ。


今日は好きなだけ跳躍の練習をさせてやろう。さすがに呑み込みの早い三人でも無理臭いことは理解しただろうし、今のところ楽しんで励んでいるのを邪魔したくない。



そろそろ練習の潮時かな三人は疲れ肩で息をし始めた、気も底を尽きかけている。


何を考えたのかカレンが目一杯の跳躍をする、まずい体が少し横回転して上がっていく。そこで止めればいいものを2段跳びしてしまった。後方に飛ぶつもりが真上に回転しながら上昇しまってる。

高さは20mも昇ったであろうか上がり過ぎだ、悪いことに体が回転している。もし回転してなければ地面に当たる瞬間に手か足かで気衝を発動して衝撃を和らげる方法はできる。回転すると気衝の方向を間違える可能性も出てくる、気衝を発動すると地面に加速して激突することだって考えられるのだ。そうなれば軽傷じゃなく大怪我になってしまう。


(何やてんだか? ユーキ借りるぞ!)


タローはカレンの落下速度も考え一気に跳躍をかけた、上空15mの高さでカレンを捕まえ飛び続けて20m先に着地した。

(へへへ 失敗しちゃった。イライラでついムキになってやり過ぎたわ)

(集中力が切れたら余計に上手くいかないぞ)

(・・・だね! それにしてもタローは凄いわ、私を一気に捕まえ着地する時に気衝で速度を落としたんだもの・・・)

(地上から飛んで捕まえるのはさほど難しくない、けど飛行することは俺でも出来ないな)

(何だ~! タローでも出来ないのね、なら私もきっと無理だわ)

(自由自在に飛行することは不可能だと思うが、使い方次第で役に立つことはあるだろう)


その場から緊急離脱する、つまり逃亡などに使える気がする。ただし壁や地面にぶつからない技量は最低限必要だけど、飛んだら壁に激突して捕まるとか笑えない話しだ。


ここで休憩する。


思う存分に跳躍の練習をしたからカレンも満足しただろう。連続跳びは費用対効果が悪すぎる、訓練しても飛行することは出来ず、逃亡する程度の技に時間を割くことは無駄が多すぎる。暇つぶしにやるならいい。


次は気の回復量・総量を増やすことだが、これは難しくない。毎日気の総量を使い切ることで成長する、自動車で云えばガス欠状態近くまでガソリンを使いまくる。注意することは気の総量を完全に使い切らないことだ、運動のやり過ぎて疲労が貯まり故障するのと同じで、完全に使い切ると逆に弊害の方が多くなる。


気を『器』と考えて例えると分かりやすい。

気の『器』が満タンになるといくら頑張ってもそれ以上は入らなくなる。身体が生理的に拒否してくる、恐らく気の暴走を未然に防ぐための防衛本能だろう。この方法で『器』を大きくすることは不可能になってる。

気を限界ギリギリまで使っていく、『器』を強引に絞り気を出していく。

『器』は弾力性がある、絞ることで少し伸びる。これを繰り返していくと『器』は段々と伸び拡張される。これが『器』を大きくする方法になる。

気が限界近くまで減ると、身体は急速に回復しようとする働きがある。何千、何万回と繰り返していけば『器』の回復量と速度が高まる。

やり過ぎると『器』は壊れ修復するために時間を取られる、場合によって壊れたままになる可能性もあり危険だ。

気の回復量・総量は無限とはいかないず当然に限界はある、大きくなるにつれ成長速度は鈍くなり困難になっていく。

この成長速度が曲者だ。

人によって千差万別だということと成長に波があることだ、急に伸びたり停滞することが頻繁に起きる。いくらやっても伸びなくなると、人はこれが自分の限界だと決めつけてしまうことは多い。ただ停滞する原因は無数にある、それに気づけず努力しても報われずに終わる人がいる。

だからこそ良き隣人、良き師にめぐり逢うことはとても重要なのだ。『良き』とは善人の意味じゃなく、自分を成長させてくれる人のことを意味する。


世の中は結果を見て『天才』とか称する輩は多い、やたら使いだし陳腐な言葉に成り下がってしまったけど、本来は天賦の才のある者の意味らしい。昔は秀才と言ってたはずが、いつの間にか天才と言いだしたのは誰だ。

まぁ~ カッコいいし、褒め言葉として悪い気はしないけど安っぽくなったのは確かだな。


話しは脱線してしまったけど戻そう。気の回復量・総量を大きくする方法は分かったなら、後は簡単だ訓練の終わりごろまでに気を使い果たせばいい、これを毎日繰り返せば少しづつ大きくなれる。



跳躍の多段飛びで三人とも気を使い果たしたみたいだから今日の訓練はお終いでいいだろう。




午後の第三区は快晴

三人とも基礎体力の強化のため、日課になった第三区を一周している。


基礎・応用技の鍛錬も順調に進んできてる。

次の段階で新たに覚える技は気衝撃、剣装撃、剣衝撃だろう。他にも治癒錬気と索敵錬気があるけど、こちらはちょっと特殊なので躊躇している。


(全員集合、えーと 今日からは新しい技の勉強に入る。お待ちかねの必殺技 気衝撃、剣装撃、剣衝撃の3つだ、剣装撃と剣衝撃は違いはないから厳密にいえば2つとなるけどな)

「待ってたわー」

「よっしゃー やったぜぇ」

「頑張ります」

(三人とも嬉しそうだな、必殺技に憧れない剣士はいないから当然か!)


(まずは気衝撃についてだが、復習する意味で説明できるかな?)

「はい~」

ユーキが元気よく手を上げた。

「気衝撃は攻撃する瞬間に手や足から気衝を出す必殺の技のことです」

(正解、単純に静止したときに出す技は気衝、動いてるときに出す技が気衝撃。では難易度が高いといわれてる理由はなんだ)

「それはあれよ! 気装壁も併せないといけないからじゃない? 後は動きながら当てるの難しそうだしね」

(カレンでほぼ正解)

「でもよ 気装壁なくてもいいんじゃねー」

(そりゃー無理だな、気衝撃の衝撃は自分の手や足にも伝わる。威力が低いときは耐えれても増していけば手や足は必ず壊れる。通常攻撃の威力が上がると比例して気衝撃も増す、仮に気装の耐久が30だとする、通常威力が10から20に増えると気衝撃は2倍の20から40に増える。威力10から20は2倍強くなるだけだが、気衝撃だと40なので4倍になる計算だ。つまり耐久30-40=ー10になり自分の気衝撃で傷つくことになる。気衝撃の威力が3倍4倍に上がれば、数値は飛躍的に高くなって結果的に身体が耐えれなくなる)

「大体理解したぞ。気衝撃の威力は2倍~あるんだ、初めて知ったぜ!」

(最低2倍だな、さて練習台はどうするかな?    無ければ作るしかないが・・・)

的がないと練習しにくい、的は樹木で構わないが近くにない。

(よし三人は山林へ行って直径30cmで3mほどの丸太を3本集めてくれ、農場に寄ってシャベルも借りてくるように)

「了解!」


この世界の身体能力の凄さを実感する、3本を束ねた丸太を二人で軽々と担いでいる。重量は200kgを越えてるはずだ、元の世界なら化け物級だな。


地面に1mほどの穴を掘り丸太を立て根元に石を置き囲う。確か根元に石を置けばズレにくくなると聞いたことがあったのでやってみた、ダメならまた考えよう。掘った土を穴に戻し固めていく、高さ2mの丸太を5m間隔で3本立てた。


これで一人ずつ練習ができる。特訓開始だ!


(一人ずつ丸太の前に立ち、正拳突きで気衝撃を出せるかやってみよう?)

気衝撃は通常攻撃と気衝が合わさるから威力が増す技だ。気衝が早いと通常攻撃がその反動で弱まってしまう、逆に遅いと単独の攻撃になり相乗効果は得られない、通常攻撃が弾かれると気衝は当たらず最悪の結果になることもある。


三人はコツを掴んだのか失敗がなくなってきた。


(好きな体術技でやってもいいぞ、手刀、肘うち、蹴り、膝蹴り、何でもいいけど頭突きは禁止な)


三人は技を最初は単発で気衝撃を出す訓練をする、次は連発、連携技など入れながら訓練しだした。手数が増えるたびに上手くいかなくなる、今日のところは好きなようにやらせておこう。


あと2本追加すれば瞬歩の訓練に使えそうだな?・・・  そうだ! 5×5=25本にすれば三人同時にできる、色んな角度からもできるし訓練に不自由しないかも知れない?


思いついたが吉日、早速三人に説明し山林に出かけることになった。



練習場の完成に2日かかった、実際は3×3で十分だと分かり5×5は止めにした。

等間隔に立てるのも止めにする、これを正確に跳べても意味ない。実戦で相手が5m先にいてくれる保障はない、必要なのは距離を正確に割出し跳ぶ能力を求めている。


本数は少なくなったけど十分訓練に役に立ってくれそうだ。



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