始まりとこれから
お待たせしましたー!
「つまり蒼眞様は異世界の出身で、此方にいる天野照さんに発動した召喚魔法に飛び込んで一緒に召喚されたと」
「はい」
「そして気が付いた場所はどこかの森の中。森から出る時にアルくんとウルくんに襲われて、その時に紋章を獲得、アルくんとウルくんが仲間になったと」
「はい」
「その後、私達が襲われてる事を察知したアルくんとウルくんに乗って私達の元へ急行したと」
「その通りです」
どうも、橘蒼眞です。只今、お姫様に尋問されております。
「どうして、仰ってくれなかったのでしょうか?」
「い、いや。信じてもらえないだろうと思って……」
「確かに…異世界から来たとは、俄かには信じられませんでしたね」
怖かった………いやマジで。今でこそお姫様の雰囲気はいつも通りになったけどさっきまで笑顔の後ろに鬼神が見えてたんだぜ?さっきから体の震えが止まらないんだ。もしかしてあれも魔法なのかね?そうだといいな…。
「ですがこうして証人、しかも一国の姫様が仰っているのです。信じぬわけには参りませんね」
「お、おう」
「それに、蒼眞様のお陰で助かったのも事実ですし、これでお終いにしましょう」
お姫様の優しい笑顔が向けられる。それにちょっとドキッととして慌てて顔を逸らす。顔は赤くなってないよな!?赤くなるほど純粋ではないはずだぞ!
「大変だったみたいだね蒼眞」
「みたいじゃなくて大変だったんだっつぅの!お前は相変わらずって感じだったみたいだけどな」
ベッドの上で胡座をかいて頬杖をつく。そのまま視線を二人の女の子に向けた。
「あはは、転移したが教室でね。その教室に2人が居たんだよ」
「なるほどね…。で、どっちが召喚者?」
「「!?」」
俺の言葉に照が連れて来た二人が驚愕の表情を浮かべる。あるあるだしなぁ…此れくらいで驚かれてもなぁ…。
「蒼眞はなんでもお見通しだね」
「ありそうな事を言ってみただけだ、あれだろ?召喚者は魔法が苦手です的なアレだろ?」
「「!!!」」
もう一つのあるあるを口にするとまた当たったようだ。存外あるあるもバカにできないなこりゃぁ…。
「蒼眞、それって相手に失礼な発言だよ?」
「あ、そうだな…。すみませんセラム姫、ウィルム姫、いらぬ発言をした事を謝罪します」
「あ…はい…」
「え、えぇ…」
照に注意されて不用意な発言をした事に気付いて素早く謝る。これで泣かれでもしたら大変だしな…。呆然って感じで反応が薄いけども。
『凄いね君、各国の姫君達が棒立ちになってるじゃないか。中々見れるものじゃないね』
「っ!?」
いきなり頭の中に声が響いて来て身体が跳ねた。そういやこいついたなぁ…。バタバタしててすっかり忘れていた。
『あ、頭で思った事を読み取るから声に出さなくてもいいよー。独り言が激しい子だと思われたくないでしょ?』
親切にどうも、つーか今思い出したけどあの激痛はなんだよ!あんなの来るなら先に言っとけよ!
『言ったじゃん、直前に』
もっと前もって言えや!心の準備ってもんがあるだろうが!
『ごめんごめん。でもそのおかげであれだけの大魔法を使えたんだから許してよ』
楽しそうに弾んだ声が頭に響いて来る。気楽に言いやがって…。しょうがねぇな…そういう奴だと割り切ろう。にしてもあの大魔法って、やっぱり【魔書】のおかげだけじゃねぇのか?
『うん。魔霊は魔源の集合体だからね。契約者の魔源に混ざる事で魔法の効果が跳ね上がるんだよ。まぁそれがなくても君は想像力豊かだから凄い魔法は使えただろうし、契約する時に結構膨大な魔源が混ざるから、君の魔源が反発して激痛は免れないけどね』
なんか取り方によっちゃ酷いこと言われたような気がするが、納得した。じゃあなんで激痛が引いたんだ?
『【紋章】のお陰だね。この【紋章】は、魔源の反発を抑えちゃうみたいだから』
セルマの言葉に思わず納得してしまう。確かそうじゃないとに面倒なことになりそうだしな、この【紋章】。
『うん。あ、そろそろ喋るみたいだよ』
セルマの声に反応して周りを見ると、如何やら照がお姫様達に説明してるようだった。説明というより、説得か?なんか恐怖が混じったような視線向けられてねぇか俺…。
『あれだけズバズバ物事を言い当てちゃったんだから怖がられて当たり前だよ。しかも僕と話すせいで黙り込んじゃったからね』
半分はお前のせいじゃねぇか!やべぇ、取り敢えず話に戻らねぇと色々誤解される!
『そうだね、それじゃあまた後で』
セルマとの話を切り上げて意識を二人に向け直す。よく見ると恐怖っていうよりは、なんか怒られて怯えてるような様子だ。なんで?
「彼はいつもあんな感じなんだよ。別に怒ってるわけじゃないから気にしないで喋るといいよ」
「は、はい…」
やっぱり怒ってるって思われてるみたいだな、にしても何でだ?怒ることなんてあったか?
考えようとするとセラム姫がおずおずと一歩前に踏み出す。如何やら彼女が照の召喚者のようだ。
「え、えと、私の魔法が暴発して召喚魔法が発動してしまいました。そのせいで、二人には大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「へ?迷惑?なんで?」
「へ?」
セラム姫の言葉に間抜けな声を上げてしまう。その声を聞いて、セラム姫からも続いて間抜けな声があがった。なんか意識の齟齬が発生してないか?
「おい照!お前ちゃんと説明したんだろうな!」
「えっ?いや、ちゃんと説明したんだけど…」
「セラムさん全く話を聞いてませんでしたわね」
「えっ…あわわわっ」
「ふふふっ」
如何やらセラム姫は説明が全く聞こえてなかったらしい。目も当てられないほどに慌てていた。照とウィルム姫は呆れたように苦笑いを浮かべ、お姫様に関しては優しく微笑んでいる。
「セラム姫?大丈夫、ですか?」
「あわわわわっどどどうしようっ」
「照!如何にかしてくれ!」
「あ〜…取り敢えず落ち着いて、セラム」
「えっ、あっ、は、はい」
照にすぐさま救援要請、すぐに慣れたようにセラム姫を落ち着かせてくれた。まだ1日経ってない筈なんだが………ものすごい馴染みようである。流石照と言うべきか。てか一声かよおかしいだろ。なんでそれで落ち着けるんだよ逆に。
「あー落ち着いてくれたようで何よりです。取り敢えず、俺も照も召喚された事については怒ってません。俺に関してはむしろこれからが楽しみでもあります」
「は、はい」
「だからそんなに気負わないでください。帰る方法もそのうち見つかるでしょうし、見つからなければこの世界で暮らしていくだけですから」
「た、達観されていますね…」
「そういう性分なので」
為せば成る、為るようにしか成らない。昔とあるゲームで聞いた言葉である。この言葉を知ったから、今の俺があると思ってもいいかもしれない。それに照がいたからなぁ…こいつほんとに規格外だったから…。
「この馬鹿と一緒にいると、どうしてもそうなるんですよ」
「蒼眞、それひどくない?」
「うるせぇ主人公、テメェの近くにいてどれだけ俺が事件に巻き込まれてると思ってんだ」
「そ、それはまぁ……いいじゃないか」
「まぁ俺も楽しんでるからいいけどよ」
実際こいつの近くにいて、退屈という言葉を使った事がない。こういった事に耐性があるのは、偏にこいつのお陰である。
「そういう事なので、セラム姫もそこまで気にする必要はないですよ」
「はい、ありがとうございます」
俺の言葉に納得してくれたのか、セラム姫の顔に笑顔が浮かぶ。よかった、綺麗どころの悲しい顔見てるとこっちが居た堪れないからな。
「さてと、お姫様。これからどうする?」
「そうですね。私達の学園編入手続きはラルフィード王がなさってくれるそうなので、この後の予定はありませんが……」
「お父様が?」
「そうだ、世の命の恩人でもあるのでな。その手続きなどの面倒ごとは世が引き受けた」
部屋の入り口の横から王様が返事を口にする。そういやさっき一緒に入ってきてたな……バタバタしてすっかり忘れてた……。
「それでしたらお父様、照君の編入準備もお願いしたいのですが……」
「うむ、そうだな。我が娘が迷惑をかけたようだ、引き受けよう。教材などは学園長殿に届けさせるとしよう」
「ありがとうございますお父様」
なんて言うか……父親相手の方がえらく堅苦しいな、王族ってそういうもんなのかね?
「そんな堅苦しい呼び方をするでない。ここには外の目はないのだ、何時ものようにパパと呼びなさい」
「お父様!?」
あ、なるほど外向けの感じだったわけね。確かに他国の大使とかいる場所でパパとは呼べないわなぁ……ここに他国の姫が二人いるけど。
「ふむ、やはり人前では恥ずかしいか?」
「そういう問題ではありません!王としての威厳をお持ちください!」
「持っておるぞ、他者の前だけだがな」
だからここにお姫様二人いるって。
「シルーナ皇女、グラール王子、世の娘と仲良くしてやってくれ」
「パパーーッ!」
あ、とうとう化けの皮が剥がれてしまった。
「すごいお父様のようですわね……」
「そうですね、とても個性的です」
「助けてあげた方がいいのかな?」
「ほっとけ、家族団欒に水を差すんじゃねぇよ。そういや照、お前学園に召喚されたんだったら、編入すんのか?」
「うん、学園長に勧められて取り敢えず体験入学みたいな形になってるよ」
「なるほどな、そんじゃまぁ当分は学園が舞台になりそうだな」
「そうだねぇ……なかなかいいところだったよ?嫌な奴もいたけど」
「そんなもんどこにでもいるだろうが」
「まぁね。おっとセラムが助けを求めて視線を向けてきてるからちょっと行ってくるよ」
「あいよー」
雑談しつつ、状況確認を済ませる。取り敢えずまぁ……。
「物語の始まりか……どうなるのかねぇ……」
俺は天井を見上げながら今後の出来事に想いを馳せた。
面白い作品が多くて更新が遅れてしまう……。




