街と魔物
大変お待たせしてしまい申し訳ありません!
「取り敢えず、どこから回る?」
「そうですわねぇ…。先ずは制服を採寸しに行きましょう。時間がかかりますでしょうしね。その後に必要な道具を買いに参りましょうか」
「そうですねっ!行きましょう!」
方針が決まった僕達は、制服のサイズを採寸してもらうために店に向かって歩き出した。
「それにしても、セラムさん張り切りすぎじゃない?」
「仕方がないですわ。授業では同じことばかり続けていて、気が滅入ってしまっていたのですわ」
先頭を歩くセラムさんに聞こえないように、僕の横を歩いているウィルムさんに声を掛ける。なるほど、学校が嫌いな学生みたいなものかな?
「まぁそれも、魔法を使えれば話は別なのでしょうけれど…」
「………」
ウィルムさんのいきなりの自虐爆弾に思わず言葉が詰まる。
「私とセラムさんは魔法が全く使えませんの。他の方はそれほどでもないのですけど」
「そうなんだ…」
そう言えば、学園長室に向かう時もセラムさんは魔法が使えないって言ってたね。ウィルムさんも使えないんだ…。
「照さんはきっと使えますわよ。そんな予感がしますの」
「そうだといいな。でも、セラムさんとウィルムさんだけが魔法を使えないって何か変だね」
「適性がないわけではないのですけれど…何故かは分かりませんわ」
「二人とも何してるのー?早く行こうよー!」
ウィルムさんと話し合っていると、先を歩いていたセラムさんが催促してきた。敬語が抜けてきてるのは僕に対する緊張が抜けてきたのかな?
「そんなに急がなくてもお店は逃げたりしませんわよ。それよりもセラムさん、口調が戻ってますわよ」
「あっ!」
「気にしないで、むしろ砕けて話してくれた方が僕も嬉しいよ」
ウィルムさんの指摘で両手で口を抑えるセラムさんに僕は笑いかける。
「うん!わかった!」
僕の言葉に、セラムさんは笑顔で頷き返してくれた。
「でも、それなら私からもひとついい?」
「?どうしたの?」
「私の事は呼び捨てで呼んで!敬称付けられるとかしこまっちゃいそうだから」
呼び捨てかぁ…女の子をあんまり呼び捨てで呼ばないから慣れてないんだけどなぁ…。
「あぁうん、わかったよセラムさ——」
「むぅ〜!」
「せ…セラム」
「ふふっうん!」
さん付けで呼びそうになると頬を膨らませて講義の目を向けてきたセラム。慌てて呼び方を変えると彼女は笑顔で返事をしてくれた。
「イチャイチャするのはよろしいんですがそろそろ先に行きませんこと?」
「「わぁあっ!」」
ウィルムさんの声に思わず驚いてしまう僕たち。意識から抜けちゃってたよ。
「私の事も忘れないで欲しいですわね」
「「ご、ごめんなさい」」
「さぁ、行きますわよ」
「「うん!」」
ウィルムさんの言葉を合図に、僕等は最初の目的地である服屋に歩き出した。
「採寸終了です、お疲れ様でした」
服屋に到着すると、早速僕らは制服の採寸を行なった。
「おかえり!照さん」
「お疲れ様ですわ」
「ありがとう。それにしても、時期じゃないのに普通に作ってくれるんだね。ビックリしたよ」
「編入してくる人も多いからね、問題なくしてくれるよ」
「制服の販売だけで生計を立てているわけでもありませんし、服の採寸と変わらないと思いますわ」
「なるほど」
見渡すと、店の中には確かにいろんな服が飾られている。稼ぐ為の知恵って感じなのかな?
「店主さん、制服は学園に送っていただけませんこと?代金の請求は学園長に」
「畏まりました」
僕らは、店員さんにお礼を告げてから店を出た。
「さて、次は教材を…あら?」
「どうしたの?」
前を歩いていたウィルムさんの言葉が止まった。それに反応してセラムが問いかけている。
「なにやら騒がしいですわね」
「あ、ホントだね。何かあったのかな?」
言われてみると、確かに店に入る前より街が慌ただしい。僕は慌てて走っている男の人を捕まえて問いかけることにした。
「すみません、何かあったんですか?」
「街の中に魔物が出たんだ!見たことない双頭の狼みたいな魔物だったらしい。多分オルトロスの変異種だそうだ!あんたらも避難したほうがいいぞ!」
「魔物!?」
「街の中にですの!?」
二人に緊張の表情が浮かぶ。それにしても魔物かぁ…。さすが異世界、蒼眞が聞いたら目を輝かせそうだ。
「その魔物はどこに?」
「聞いた話だと気絶した奴を数人背中に乗せて王城の方へ向かったらしい!労働組合が避難所を開放してる!俺はこの情報を街に回さないといけないから案内できないが、大丈夫か?」
「っ!?」
「はい、ありがとうございます。気を付けて」
「おう、そっちもな!」
別れを告げてそのまま走り出した男の人を見送る。
そしてゆっくりと振り返る。そこにはこちらの様子を伺うウィルムさんと、顔を伏せているセラムさんがいた。
「さて、行こうか」
「避難所に向かうんですの?」
僕の言葉にウィルムさんが反応してくれる。でも——
「違うよ、王城に」
———避難するんじゃないんだ。
王城という言葉にセラムが顔を上げた。その表情は暗い。
「でも…!」
「心配なんでしょ?家族のことが」
「うん……」
「なら、行ってみよう。大丈夫、何があっても僕が守るから」
「……うん!」
セラムに笑顔が戻ってくる。うん、やっぱり女の子は笑顔じゃないとね。
「私も行きますわよ」
「ウィルム!?危ないんだよ!?」
「二人が向かうのに、私が向かわないなんてありえませんわ。それに、こんな状況で帰ってもモヤモヤするだけですわ」
「うぅ…」
「あはは。うん、行こう。危なくないように僕がいるんだから」
「お願いしますわ」
「うぅ…仕方ないかぁ…」
思わず笑みが溢れる。二人とも仲良いよね。
「よし、行こう!」
「うん!」
「はい!」
僕の掛け声を合図に、僕たちはセラムの家である王城へ向けて走り出した。




