魔法全開
「ちっ!気付かれていたのか!」
刺客のリーダーらしき男が忌々しそうに言葉を放つ。まぁ気付いたのはついさっきなんだけどな。王様のプレッシャーに耐えきれずに外を見た結果だし。
「仕方ない!やれ!」
リーダーの合図を受けて、何処からともなく複数の影が飛び出してくる。よく見るとそれは人で、魔法を使わない暗殺者のようだった。
「死ねぇ!」
刺客の一人がお姫様目掛けて飛んでくる。すごい跳躍力だけど、俺が作った水の壁忘れてるのかこいつら?
「その程度の壁など突破してしまえ!」
リーダーの言葉が木霊する。なるほど、突破出来ると踏んだのか。そう簡単に突破出来るようには作ってないんだがなぁ…魔法使いの方は気付いたみたいだけど。
「リーダー!あの水壁は!」
「黙れ!この任務は成功させねばならんのだ!」
「うわぁぁぁ!」
「なんだ!?」
リーダーらしき奴が部下の制止を無下にしている間にも事態は動く。飛び込んで来た暗殺者達は一人残らず俺が作った水壁に飲み込まれその中を渦に飲まれたようにぐるぐると回っていた。
「あとはお前らだ」
暗殺者のリーダーを睨みつけながら、小さく息を吐く。なんだかんだ水壁を作るのに結構な量の魔源を注ぎ込んだからな…。さっさと終わらせねぇとやばいか。
「一人残らず捕まえる!」
「くっ!総員撤退!」
俺の水壁から触手のように水が伸びるのと、リーダーが撤退を宣言するのはほぼ同時だった。
「逃すか!」
次々に暗殺者を捕まえて水壁に放り込む。
「な…なんだこの魔法は…」
水壁の中で守られている奴らが呆然としているのも御構い無しに、どんどん放り込んでいく。
だが、人数が多く、リーダーを含む数人を取り逃がしてしまう。
「ちぃっ!逃げられた!アル!ウル!」
だが俺にはこいつらがいる。まだ逃げることが出来たと安心するのは早いぞ!
「「ウォォォン」」
召喚魔法陣から登場するなり遠吠えを放つ二匹。気合いは十分だな。
「ここから逃げた奴らを捕まえろ!時間がない、城から出すなよ!行け!」
俺の言葉を聞き終えるとアルとウルは颯爽と走り出す。さてと、こっちも処理しないとな…。
「王様、すみませんがこいつらを捕らえる人数を集めてくれませんか?」
失礼かと思ったが、もうこっちも体裁を取り繕う余力が残ってないから勘弁してもらいたい。
「あ、あぁ、用意しよう。おい」
「は、はっ!」
水壁に人が出られる穴を開ける。王様に声を掛けられた家臣達はその穴から一斉に飛び出していった。仕事が早くて何よりだ。
「はぁ…はぁ…」
にしても疲れた。息が切れちまったぞおい。照といるせいで結構体力ついたと思ったんだけどな…。にしても、なんで俺がいるときに来るかなぁ…狙いは…お姫様?
「蒼眞様、大丈夫ですか?」
「おう…もう少し大丈夫…」
「もう少し?」
お姫様とやり取りしてると、家臣たちが兵を連れて戻って来た。よし、もういいか…。
「蒼眞とやら、兵は用意したぞ」
「ありがとうございます…。俺のペットが残りを連れて戻って来ると思うので…そいつらもお願いします」
「分かった。ゆっくり休まれよ」
王様にはバレてたか…。流石というべきか?それじゃあお言葉に甘えますか…。
「はい…お願いします」
魔法を解除すると同時に、俺の意識が落ちていく。やべ…瞼が重いわ…。
落ちていく意識の中で、何か柔らかいものに包まれる感触だけが意識に残った。
「蒼眞様!?」
蒼眞が意識を失って倒れそうになるのを防いだのは、横にいたエシル姫だった。
そこへ、玉座から立ち上がったラルフィード王が近付いていく。
「エシル姫、其奴何者だ?此れ程の魔法、世は初めて見たぞ」
「私は2度目でございます。蒼眞様に襲われていた盗賊から助けていただいた時に」
「何?盗賊に襲われたとな、大丈夫であったのか?」
「はい。怪我人も蒼眞様が治してくれましたので、大事に至らずに済みました」
「ほう?なかなか高位の魔法使いなようだな。しかし蒼眞という名は聞いたことがないが…」
「此れ程の魔法の使い手、有名にならぬはずがないのですが…。ですが、今は私の護衛です。彼ほどの適役はいないでしょう」
「そうだな、蒼眞の編入を認めよう。役に立ってもらうが良い」
「ありがとうございます」
エシル姫が、王様にお礼を述べ終わる丁度同じタイミングで開きっぱなしだった謁見の間に一つの影が現れる。
「「グルルゥ」」
「蒼眞様のペットの…」
「背中にさっきの者共を乗せておるな。おい」
「はっ!」
ラルフィード王に声をかけられた兵士がアルとウルに近付いていく。それに伴い、アルとウルは体を伏せて暗殺者達を下ろしやすいようにしていた。
「ふむ、なかなかに高い知能を持っておるな。蒼眞とやらは中々に規格外なようだ」
「そうですね。盗賊に襲われた後も、馬車を引っ張ってくれたのはこの子達でしたし」
「おい、姫と従者を客室へお連れしろ。丁重にな」
「はっ!」
「エシル姫。今日は我が城でゆっくり休むといい。この蒼眞にも、礼をしたいしの」
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
「ではこちらへ、客室までご案内致します」
蒼眞をアルとウルの背中に乗せたエシル姫は護衛とアルとウルを連れ、案内の任を受けた兵士の後ろをついていくのだった。




