護衛と前途
お待たせしやした!
「姫!危険ですこの様な場所に出てこられては!先程まで盗賊に襲われていたのですよ!」
こちらに近づいてくる。エシル姫を咎めるように声を荒げるゲルグ。まぁ確かにさっきまで襲われてたしな、まだこの近辺にいるかも知れない。
「大丈夫ですよ。あのオルトロスさんがおられますし蒼眞様もいらっしゃいますしね」
「ですが…」
口ごもるゲルグ。俺の方をちらっと見ながらの行動ということは俺を完全には信用してないな。まぁ当たり前だが。
「お姫様。ゲルグの、えぇと、ゲルグ殿のおっしゃっている事の方が正しいと俺、あぁいや私は思いますが。私とは今日初めて出会ったわけで信用するのはいささか早すぎるような…」
お姫様を視界に移さないようにしてゲルグの援護射撃を行う。最上級の敬語なんて普段使わないから変な喋り方になってしまった。お姫様を見ない理由?可愛すぎて直視出来ないのと、俺が女の子に慣れてないからだが、この話はまた今度にしよう。
「ふふっ、普段の喋り方でよろしいですよ、それにそれに信用という面も問題ありません。先程"視させて"いただきましたので」
ん?"視た"?何を見たんだ?
お姫様の言葉に疑問を覚えた俺は顔をお姫様に向ける。視たと言っていたお姫様の目が元々の紅色に光が宿ったように淡く輝いていた。
「目が…光ってる…?」
「お気付きですか?」
聞こえないように呟いたつもりが思いっきり聞かれてしまったようだ。お姫様はニッコリと笑顔を浮かべていた。
「姫、お使いになったのですね」
「はい。ゲルグ、貴方は他の者たちの確認を」
「はっ!」
お姫様の言葉を受けてゲルグは素早く動く。中々仕事のできる人なのだろう。
「蒼眞様、少しお話でもしませんか?」
立ち去っていくゲルグを見届けていると、目の前にいるお姫様からそんな提案をされるのだった。
場所は変わり、今は馬車の中。お姫様が降りてきた馬車である。
因みにエシル姫一行はさっき見つけた街に向けて出発していた。死んでしまった馬が引いていた馬車は変わりにアルとウルが引いている。
「それで、お姫様は俺に何が聞きたいんだ?」
「何のことでしょう?」
俺の質問にお姫様は惚けるように首を傾げる。それがまた一つの絵になり、思わず見惚れそうになるのを必死に我慢する。…顔を逸らして。
「はぐらかすなよ、俺をわざわざ呼び出すみたいなことしてるんだ。何か聞きたいんだろ」
「ふふっ、そのくらいはわかるんですね」
「こんなもん小さい子でもわかるわ」
お姫様が自分を呼び出すなんて、お子様でも疑問に思うのは間違いないだろう。
「それで、用件はなんだ?」
「実は、一つ依頼を受けていただきたいのです」
依頼、依頼ねぇ…。
「どんな?」
「私達が今向かっている都市、魔導都市ラルフィードにある私が編入する予定の魔道学園ペンタゴン。そこでの私の護衛です」
「護衛…」
魔道学園ねぇ…。魔の道か…魔源にはまだ色々と使い道があるのかね?
「…ここにいる護衛たちは?」
「彼等は学圏に入ることが許されていないのです」
は?なんで?
「ペンタゴンは学生達に"公平で安全な学園生活を"という言葉を世界的に掲げています」
ふむふむ、それで?
「其処に他国の大人たち、貴族や王族が入ると下賎な思考誘導を行い兼ねないと。実際に何度かあったようですしね」
へぇ…。でもそれじゃあ教える人がいないんじゃ…。
「学園の教師は、すべて魔道都市ラルフィードの有能な魔法使いが担当していると聞いています。ラルフィードは世界情勢に不干渉を謳っており、各国もラルフィードには不可侵条約を結んでいると」
なるほどな、だからラルフィードは公平を謳えるわけか。それだけじゃ不十分な気もするが…。まぁ其処は気にしないでおこう。
「俺は入って大丈夫なのか?」
「各国の貴族や王族もいますし、その方達は幼馴染などを世話役につけていると聞いています」
「あんたは?」
「恥ずかしながら、私は帝国での立場が強くないのです。今回も、弟達にとって邪魔になるからという思惑で学園に入れられる予定ですので…」
眉尻を下げながら困ったように笑うお姫様。だが確認しなければいけないことがある。
「最後の確認と行こう。護衛を受けた時の俺の自由と、仕事に対する給料、それと期間はどれくらいになる?」
正直、照を放置していると何か大事を起こすだろうからなるべく早く見つけたい。何かあってからじゃ遅いからな。
「そうですね…。私に申告していただければなるべく自由は確保します。給料は私のポケットマネーになると思いますので、そこまでの額は…すみません。期間ですが、なるべく長くとは思っていますが蒼眞様の御予定に合わせていければと思います」
ふむふむ、なかなかいい職場じゃないかね?護衛もアルとウルがいれば問題ないだろうし、自由はそれなりにあるとみていいだろう。お金はこの際気にしないとして、まぁ向こうでお姫様の護衛を見つければすぐにでもやめられるだろ。
「…俺に世話役なんて無理だぞ?」
「其処は気にしないでいただいて結構です。家事なども嗜んでいるので基本的な事なら一人でも出来ます」
俺の言葉ににっこりと笑うお姫様。でも、一国の姫にそんなこと覚えさせて大丈夫なのか?
「帝国では力が全てとしています。ですから比較的力の無い女性の身分は基本的に発言力が強くないのです。私も戦闘はそこまで得意ではないので弟達に軽く見られていますし」
少し前の日本みたいなもんか?もっと酷そうな気もしてくるが、そこはおいおいだな。
「わかった、依頼を引き受けよう」
この世界の情報が少しでも欲しい。あの馬鹿が何かする前に合流しないと。
「ありがとうございま…。ん?」
「どうしたんだ?」
お礼を言ってる途中に不自然に会話をやめるお姫様。何か上を向いてる?
「何者かが探索魔法をかけた様です。この馬車のお陰で見られることはなかったでしょうが、気を付けておいたほうがよろしいかもしれませんね」
「……そうだな」
前途多難と思われるこの先に、俺は少し憂鬱になりながら馬車の天井を見上げた。
次は照編です!




