魔従
「来た!」
【紋章】が大きく輝き始める。その輝きが目に入ったのか、オルトロスが動きを止めた。
「なに…?この魔源の量…」
セルマの言葉を聞き流す。今はそれどころじゃない。
頭の中に【紋章】に宿ったスキルの力が流れて来てまるですでに知ってたかのように馴染む。
「これなら…」
態勢を整え、頭の中にあるスキルの情報を確認しながらオルトロスを見据える。オルトロスも、さっきの光を見てから動きを止めたままだ。
「………」
頭の中にある情報で、幾つか気になるものがあった俺は、その一つを試すためにオルトロスに向かって歩き出した。
「グルルルルル…」
オルトロスは威嚇するように喉を鳴らす。だけどさっきまでの威圧感がないんだよな…。
「落ち着け、俺はお前に何もしない」
まるで怯えてるみたいに見える。さっきは一種の錯乱状態になってたみたいだな。誰のせいかっていやぁ…。
「え?なに?」
俺はセルマに視線を向ける。本人は全く気付いてないだろうけど、此奴だろうなぁ…。
「いきなり大きい魔源が現れてびっくりしたんだな、ごめんよ」
近くまで寄ってオルトロスの頭を優しく撫でる。落ち着かせるようにゆっくりと。
「グルルゥ…」
最初はびくりと体を震わせたオルトロスだったが、撫でられているうちに落ち着いたようでそのまま草原に寝そべる。
「ふぅ…落ち着いたか」
「凄い…一体どんなスキルを使ったの?」
もう危険はないと感じたのかセルマが俺の近くに近づいてくる。てか…
「お前魔霊なのになんで逃げてんだよ…」
「魔霊でも怖いものは怖いんだよ!」
魔源の集合体が聞いて呆れるぞおい。
「んんっ、それで、どんなスキルを使ったの?」
「ん?あぁ、スキルはまだ使ってないぞ」
「へ?」
話題を変えるようにスキルについて聞いてきたセルマに言葉を返す。
「いや、これから使おうとしてるんだけどな」
そう言いながら寝そべったオルトロスの前に腰を下ろす。
「なぁ、お前ら俺たちと一緒に来ないか?」
「えっ!?」
「俺の言葉を理解してるみたいだし、お前ら頭いいからな、どうだ?」
俺がオルトロスに告げた言葉にセルマは驚愕する。
「グルル…」
オルトロスは少し悩んだように唸りそして小さく頷く。
「よし!あとはこれで…」
頭の中の情報を元にしながらオルトロスの双頭に手を置く。
「魔従」
俺は呟くようにスキルを発動させる。小さな光が俺の手から発し、少ししてそれが止む。
「これでいいはずだけど…」
ゆっくりと手を離すと。オルトロスの頭に六芒星の紋様が浮かび上がってくる。
「よし、これからよろしくな。名前は…お前がアル、お前がウルな」
右の頭にアル、左の頭にウルと名付ける。するとオルトロスの体が黒く光りだすのだした。
「なんだ!?」
「えぇ!?」
暫くして、オルトロスから発せられていた光が消える。するとそこにはーーー。
「はぁ!?」
「はい!?」
ーーー美しい黒く長い毛並をなびかせた双頭の狼がいた。




