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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第一章:魔法少女になってからしばらくの話

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七十五話:いいのさ

「それじゃ、お邪魔します」


「自分の家だと思ってくださいな」


「お邪魔するよー」


「邪魔をするなら帰ってくださいます?」


 僕と如月さんは、今日から月城さんの屋敷で暮らすことになる。


 なぜこの日になったかというと、今日が月城さんの誕生日だからだ。


 月城さんは今日で18歳。

 法的には成人ということで、保護者兼監視役である如月さんから同居の許可が出たというわけだ。


 まぁ、しばらく月城さんは如月さんの家で暮らしていたわけだから、なにがどう違うということもないのだけど。


 今日の月城さんは、普段とはまるで違う姿をしていた。


 銀色の髪は綺麗に結い上げられ、華やかなドレスに身を包んでいる。

 いかにもお金持ちのお嬢様という感じだ。


「早速で申し訳ありませんが、咲のことをよろしくお願いします」


「もちろんです。楽しんできてください」


 ここ数日はずっと、月城さんが咲のそばにいてくれた。


 今日は僕たちがその役目を引き継ぐ。

 警備を交代して、月城さんを誕生パーティへ送り出すというわけだ。


 大金持ちのお嬢様ともなれば、誕生日は一大イベントだ。

 僕たちのような庶民では見たこともないぐらい、盛大なパーティが開かれるのだろう。


 今日は事件のことは忘れて、本当に楽しんできてほしいと思う。



 月城さんを見送った後、僕はあてがわれた自室で荷ほどきを進めていた。


 九条は逮捕された。


 だけど、だからといって咲を守る必要がなくなったわけじゃない。

 いや、むしろ必要性は以前よりも高くなったと言えるだろう。


 原因は――今でも黙秘を貫いている、あの天使、『クシエル』だ。


 都内で起きていた『連続殺人事件』は、『悪の組織』のリーダーみたいな、強大な力を持った異能犯罪者ばかりを狙ったものだったらしい。

 そこから考えると、九条みたいな小物をクシエルがわざわざ狙うのは、ひどくアンバランスに感じる。


 九条の特徴といえば、咲を狙っていたことだ。

 だから、クシエルに襲われた――というのが、月城さんの考えだった。


 正直、その話に僕はいまいちピンとこなかった。


 咲は僕の娘で、僕にとっては命よりも大切な存在だ。

 だけど、あくまで普通の人間だ。


 『天使』みたいな特別な存在が行動する理由になるとは思えなかったからだ。


 でも、あの時。

 クシエルは確かに言った。


 『なぜヒロシが』と。


 僕の名前を知っていた。


 少し考えれば、誰にだってわかる。僕にだってわかる。

 奴が関心を向けているのは僕じゃなく、咲なのだと。


 咲と比べれば、僕なんてもっともっと取るに足りない存在だ。

 少なくとも僕は、『異世界』なんかとは無縁の生活を送っているサラリーマンでしかなかったのだから。


 『あんな奴』が咲を中心として動いているなら、これからなにが起きるか本当にわからない。

 だから、この屋敷には『戦闘力のある誰か』が常にいる状態にする必要があるのだ。


「ハロー、ひよりちゃん。元気してる?」


「元気に決まってますよ。なんですか、如月さん」


 段ボールから荷物を出していると、如月さんがひょっこり顔を出した。

 この人、自分の荷ほどきは終わったのだろうか。


「いやぁ、お金持ちの家ってすごいよね。なんでもあるから、荷物広げなくてもいいかなって」


「……なにか用事があるんですよね?」


「うん」


 如月さんが、僕の目をじっと見ている。

 きっと、重要なことだ。


 部屋の中へ入ると、僕のそばまで歩いてきて一息に言った。


「すごく迷ったんだけどね、言うことにした。咲さんと九条に、血の繋がりはない」


「……そうですか」


 今更、その言葉を疑ったりはしない。

 彼女がそう言うのなら、そうなのだろう。


 この人は『心が読める』という能力を、自分のアドバンテージだと思っていない。

 だから、『それ』で知ったことを他人に漏らしたりはしない。絶対に。


 それは法律とか、憲法だとかが理由なのかもしれないし、この人なりの能力への向き合い方なのかもしれない。

 どちらなのかは、僕にはわからない。


 だけど、それを曲げて教えてくれた。

 その意味がわからないほど、僕は鈍くない。


「ありがとうございます」


「いいのさ」


 しばらくお互い黙ったままで、僕は荷ほどきを続けていた。

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