二十五話:聖魔界人 ピューイ
窓の外の風景が、ものすごい勢いで後ろに流れていく。ボクは今、西に向かう電車に乗っている。
ちなみに運賃は、首から下げたポーチに入っているスマホを使って、ちゃんと支払ったピュイ。
本当なら、ボクたち聖魔界人は人間から見えなくなることができるから、そんなことする必要なんてない。
でも……あの法律クソ悪魔にタダ乗りなんかしたのがバレたら、どんなひどい目に遭わされるか分かったもんじゃないピュイ。
少しずつ、周りの建物が減っていく。人間界に来てから都心を離れたことがなかったから、こういう景色はなんだか少し新鮮に感じた。
……ボクは、聖魔界人の中でも最下層の生まれだった。
大した力もないボクは、向こうじゃいつも仲間にバカにされてばかりだったピュイ。
だから、人間界で偶然『小春』っていう素晴らしい才能の持ち主と出会えた時、とんでもない宝物を見つけたって思った。
小春と一緒に邪界獣をたくさん倒せば、もう誰もボクをバカにできない。ボクはすごい存在になれるって、そう思ってた。
でも……あの日、小春は怖くて泣いていたピュイ。
『サプライズニンジャ』が出てこなければ、小春が生き残れたかどうかもわからない。
あの法律クソ悪魔に言われなくたって、小春を戦わせることが間違いだってことぐらい、あの時に気づいたから。
どんな結果になったとしても……ボクの宝物が傷つけられるよりは、ずっといい。
終点近くの小さな駅で降りて、そこから山道を登っていく。
綺麗に切られて積まれた丸太を横目に、さらに山奥に入っていくと――
「……なにやってるピュイ、お前は」
ボクは思わず呆れた声を出したピュイ。
目の前で、おっさん……浩が、斧を振り回してものすごい勢いで木を切り倒し、そのバカでかい丸太をヒョイヒョイと抱えて運んでいたから。
「え、ピューイさん?逮捕されたはずじゃ……」
浩が丸太を抱えたまま、目を丸くしてこっちを見る。
「なんか、人間には適用されない特別な法律があるとかで……こき使われているピュイ」
「そ、そうなんですか……大変ですね……」
それからしばらく情報交換をしたところ、このおっさんは『戦士』の『斧スキル』とやらを活用して、知人からの紹介で林業の仕事に従事しているらしい。
機械を使うよりも効率的に仕事ができるから、稼ぎも大きいらしいピュイ。
「お前、力を使って稼ぐのは嫌だったんじゃないのかピュイ」
ボクがジト目で聞くと、浩は途端に視線を泳がせた。
うしろめたいことをしているからピュイ。
「そ、それはそうですけど、とりあえず会社はクビになってしまったので……どうせなら、稼げるうちに稼いでしまえばと思って。仮にこの力が無くなってもしばらくは大丈夫だろうし……」
歯切れ悪くモゴモゴと言い訳する姿は、あの時とは正反対でみっともなかったピュイ。
「……まぁいいピュイ」
ボクは小さく息を吐いて、浩を見上げた。
「お前に頼みがあるピュイ」




