第二十話:レベル10
「レベルが、上がった……?このタイミングで?……日向さん、何が起きたかわかる?」
伊吹と名乗った刑事がなにやら驚いている。化け物だの大悪魔だの、驚きたいのはこっちなのだけど。
とはいえ、レベル……?ゲームとかで強さの指標になったりする、あれのことだろうか?
何が起きたかと言われれば、そんなのはあれしかない。
「時々、頭の中でなんというか……ファンファーレのような音が響くんです。今も、突然それが……」
「へぇ……じゃぁそれがレベルアップの合図なのかもね。いつ頃とか、何かをした後にとか、パターンみたいなのはあったりするかな?」
不快なファンファーレが鳴り響いた状況を思い起こしてみる。
「いや、特には……寝てる間に突然爆音で起こされたり、今みたいに突然だったり……共通点は思いつかないです」
「なるほど、ね……だとすると、日向さんの行動とは無関係な現象だという可能性が高い」
どういうことだろう、勝手にレベルが上がって、勝手に強くなっていく?
意味がわからないし、恐怖すら感じる。
「今の情報は……レベル10、力14、素早さ14、器用さ14、体力14、魔力14……と。見事に均等だね」
「……なんですか、その数字は?」
「日向さんの『ステータス』だよ。見たところ僕のいた異世界とはシステムが違うみたいだけれど、レベルが上がることでステータスが上昇するのは同じみたいだ」
「力が強くなったり、疲れにくくなったり……心あたりはあるんじゃないかな?」
「……はい」
言われてみれば、納得できることばかりだ。
それぞれの数値が何を意味しているのかはともかく、明らかに以前とは何もかもが違う。
「職業は……戦士で、職業レベルは6か……おや、斧を使ったスキルが使えるみたいだね」
「職業、ですか?僕はサラリーマンですが……」
「現実の職業とは違うものだよ。うん、実際に試してみるのが早いか……はい、どうぞ」
そう言うと、伊吹さんがどこからともなく……大きな斧を取り出し、手渡そうとしてくる。
「え、いや……」
どこから取り出したのか、それはもう忘れよう。
でもこれはどこからどう見ても……
「どうしたの?受け取ってほしいんだけど」
「はぁ……伊吹くん、何を考えているんだい?賢さのステータスとやらは異世界では上がらなかったらしいね」
心底呆れたという様子で如月さんが横から口を挟む。
「なんだいそのバカでかい斧は。そんなものを署内で手渡して、銃刀法違反で別件逮捕でも狙っているのかな?」
「ははは、如月さんはバカだなぁ。そんなことあるわけないじゃない。斧のスキルを見たかっただけだよ」
「……いっそ君を現行犯逮捕したいところなんだがね」
「怖い怖い。それじゃこれはしまっておくかな」
そう言うと、斧が不意にその場から消える。手品……なわけないんだろうな……
「さて、と。僕にわかるのはそれぐらいだね。あとは転職可能な職業がいくつかあるみたいだけど……転職の方法って、わかる?」
「……見当もつきません」
わかるわけがない。
転職エージェントでもいてくれれば話が早いのだけれど。
「それじゃ、僕の仕事はここまでだね。あとは如月さんに任せるよ」
そう言うと、ひらひらと手を振りながら、伊吹さんは取調室から出て行った。




