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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第二章:小学校を卒業してからの話

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第百四十話:魔王

「ベリアル……だって?」


「おぉ? 俺のこと知ってんのかよぉ!?」


 聞いたことがある。

 ……といっても、ゲームでだけど。


 やたら難しいゲームの終盤に現れるボスで、完全回復する魔法を使ってくる奴だ。

 だとすれば、こいつも回復が得意だったりするのか?


「いや……やっぱり知らない」


「なんだそりゃぁ!?」


「僕の名前は『佐倉ひより』だよ、そう名乗ってる。なぜ小春さんを狙う?」


 スターゲイザーの切っ先をベリアルへ向けたまま、名を名乗る。

 その間にも、ゴーレムくんがベリアルを殴り続けていた。


 多分通用してないんだろうけど。


 ……シュールな絵面だな。


「ゴーレムくん、ちょっと止まって」


「はい、マスター」


 僕の声に反応して、ゴーレムくんがすっと後ろに下がる。

 そのまま両腕を身体の横に揃え、静かに停止した。


 さすがにうるさかったからね。


「なぜだとぉ? そりゃぁあれよ、天使どもがよぉー、なんだったか……」


「天使ども……? お前、天使じゃないのか?」


「誰が天使だおらぁ! 俺はベリアル! 魔王ベリアルたぁ、俺のことだ!」


 大声でうるっさいなぁこいつ、普通にしゃべれよ。

 ……それより魔王って、あの魔王か?


 すごい強い悪魔みたいなやつ。


「あぁ? もしかして天使に知り合いでもいんのかぁ、テメェ!」


「知り合いじゃない、敵だよ」


「天使が敵ぃ? テメェ、人間だろ? なにやらかしやがったんだテメェ」


「身内に悪魔とかがいてね。天使が襲ってくるからさ、戦うはめになっただけだよ」


「はぁ? 悪魔を庇って天使と戦ったって? お前頭はまともかよぉ?」


「うるさいなぁ、魔王とか名乗る人にそんなこと言われたくないよ」


 なんだか話が脱線している。


 そんなことより、なんで小春さんを狙うのか、なんで天使なんかの話が出てくるのか。

 それを問いたださないと……


「それより、どうして小春さんを狙うのかを教えろよ」


「だからよぉー、天使どもの計画だかなんかで、重要だとかなんとか……知らねぇよ!」


「……計画?」


 なんて要領を得ないやつだ。

 天使の計画っていうのは、聞き逃せない言葉だけど……まさかこいつ、詳細も知らないくせに、小春さんを傷つけたのか?


 よし、殺そう。


「わかった、知らないならもういい」


「んだおらぁ! もうちょっと話そうぜぇ? いーいこと教えてやるからよぉ」


「いいこと……?」


 スターゲイザーを構え直しかけた手を止める。


「坂口小春、松永優里、白峰愛理朱、日向咲。この4人だ」


「……そうか」


 どうにか平静を装いながら、ベリアルの話を聞く。

 天使って単語が出てきた時点で……咲の名前が出てくるのは、想定通りだ。


 でも……白峰さんと、知らない女性。

 特に『松永優里』って名前は、覚えておく必要がある。


「天使どもの計画によぉ、この4人、特に日向咲ってのが重要らしいぜぇー。詳しいことはわかんねぇがな」


「……どうして僕にそれを教える?」


「仮にお前をここで殺してもだ、ここから出る方法がわからねぇからなぁー。坂口小春のことは見逃してやるっつってんだよ」


 言ってないだろ。

 それよりこいつ、雑魚みたいな見た目でバカみたいなのに、実はまともに会話ができるのか?


「小春さんだけじゃダメだ。その4人全員に手を出すな」


「んだとぉ!? なんでだテメェー!」


「うるさいな……そもそも、お前みたいな奴が、女の子に危害を加えることを見逃せるわけないだろ」


「あぁん……? あー、そりゃぁ……そうか、そうだなぁー」


 やっぱりバカなのか?

 ほんとに、なんなんだよこいつ。


「どうせテメェも天使どもと敵対してんならよぉ、それでもいい気がするなぁー」


「……ああ。計画だかなんだか知らないけど、僕が好きにさせない」


 当然だ。


 咲と小春さんだけじゃない。

 白峰さんのことだって、守らなきゃ。


 松永さん……については、警察に任せた方がいい気はするけれど。


「んじゃぁ、こっから出してくれやぁー」


「出すわけないだろ」


「あぁ!?」


「小春さんを傷つけた落とし前がまだだし、口約束だけじゃ信用できない」


「テメェこのやろう! テメェだって俺のこと斬ったじゃねぇか! いてぇんだぞオラァ!」


「……痛かったのか?」


「痛くないわけねぇだろ! バカかテメェ!」


 ……バカにバカと言われた。


 しかし、『痛い』というのは有益な情報だ。

 血が出なくても、『痛い』ってことは――殺せるってことだから。


「このベリアルの名に懸けて、その4人には手を出さねぇーよ! 魔王が嘘をつくわけねぇだろうが!」


「そうなの?」


「あたりめぇだ! 言葉で偽るってぇのは雑魚のやることなんだよ、雑魚のよぉ!」


 知り合いの『悪魔』を思い浮かべる。

 まぁ……確かに、『嘘』をついたことはない気がする。


「……わかった」


「よっしゃぁー!」


「でも、お前をここから出しても、僕にメリットがないんだよね」


「んだとオラァ! 情報くれてやっただろうがぁー!」


「それはお前が勝手にしゃべっただけで、僕が話せと言ったわけじゃないよ」


「テメェ! 人間ってのはこれだからよぉー!」


 僕が卑怯なことを、人類全体のせいにされても困る。

 だいたい、勝手に話したことを条件にするなんて、ただの押し売りじゃないか。


「わーったよ! 外出たらテメェにいーいモンをくれてやる。それでいいだろうが!」


「……いいモン?」


「おうよ!」


 ものすごく怪しい。


 でも、ここでこいつと戦い続ければ、どれだけ時間がかかるかわからない。

 殺せない相手じゃないことはわかったけど、簡単に殺せる相手でもないだろう。


 それより今は――小春さんが心配だ。

 小春さんの無事を、この目で確認しなければ。


「……いいだろう」


「やっとかよぉ!」


「でも、さっきので小春さんにもしものことがあったなら、お前を殺すからな」


「テメェに俺が殺せるかよぉ! 心配しなくても死んでねぇよ、テメェが邪魔したからなぁ!」


 うるっせぇ……

 いちいち大きな声を出さないと話せないのか、こいつ。


「マジカル・ゲートオブアザーワールド」


 念のため、『入口』だった場所から少し離れた位置へと『扉』を開く。

 どこにでもってわけじゃないけど、『出口』の位置は『入口』の位置から多少なら動かせるのだ。


「よっしゃぁー! ベリアル様の帰還だぜぇー!」


 ベリアルが大声を上げながら、『扉』へ向かって歩いていく。

 そして、そのまま光の向こうへ姿を消した。


 出て行く時までやたらうるさい。


「はぁ……」


 このモヒカン野郎、ほんとに信用できるんだろうな。

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