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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第二章:小学校を卒業してからの話

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第百三十九話:草原の決闘

「お前えええええええっ!!!」


 こんなにも、激しい怒りは――いつ以来だ。

 小春さんの衣装が切り裂かれ、赤い血が夜の闇に飛び散るのが見えた。


 殺す。


 地面を蹴る。

 一瞬で『男』との距離を詰め、その顔面に拳を叩き込んだ。


「おおおおおおおっ!!!」


 もう一撃。

 さらに一撃。


 次々に、『男』へ拳を叩き込む。


 バカみたいに高くそびえたつモヒカン刈りの髪。

 トゲトゲのついた黒い服。


 アニメに出てくる雑魚キャラみたいな見た目の男。


 なのに――


「へへっ」


 そいつは、『鉄をも砕く』僕の拳を繰り返し受けながら――にやりと笑った。


「芦屋さん! 小春さんをお願いします!」


 視線を向ける余裕はない。

 それでも、背後で芦屋さんが小春さんのところへ駆け寄る気配を感じた。


 強い……並の相手じゃない。

 雑魚キャラみたいな見た目のくせに、底知れない『力』を感じる。


 下手をすると、『口裂け女』以上に。


 『このまま』で、戦える相手じゃない。

 ……小春さんは、気を失っているみたいだ。


「変身……解除」


 全身を覆っていたメタリックブルーの装甲が光の粒となって消えていく。

 変身を解除し、デフォルトの姿に戻る。


 そして――


「あん?」


「マジカル・チェンジ」


 僕の全身を光が包み、それがはじけた。

 夜の高架下を一瞬だけ白く照らし、光が消えると、そこには――魔法少女『佐倉ひより』


「はぁ? なんだそりゃぁー!?」


「マジカル・ゲートオブアザーワールド!」


 こいつは強い。

 そして狙いは小春さんだ。


 なら、『ここ』で戦うわけにはいかない。


 視界が一瞬、白く染まる。


 次の瞬間、僕と『男』は、草原の真ん中にいた。

 『僕の世界』の草原に。


 どこまでも続く緑の草原。

 雲ひとつない空の下で、風に吹かれて一面の草がざわめいている。


「うお、んだこりゃぁ……?」


「スターゲイザー、来い!」


 問答無用。

 ここがどこかもわからないうちに、死ね。


 紅の刃を生み出し、地を蹴る。


 一閃。


「へへへ、あぶねぇなぁ」


「なっ……」


 そんな馬鹿な。

 スターゲイザーが、止められた。


 それも、素手で。

 紅の刀身を右手で掴み、『男』が再度、にやりと笑う。


「くそっ!」


「おらぁっ!」


 嫌な予感がした。

 男が『なにか』をする前に、スターゲイザーを引いて距離を取る。


 次の瞬間――見えない『刃』のようなものが、『男』の周囲の大気をとてつもない力で切り裂いた。

 草原の草が一斉になぎ倒され、悲鳴のような風切り音が空間に響き渡る。


「やるじゃねぇかぁー。テメェ、ナンだ? 名乗れよテメェ、それが礼儀ってもんじゃねぇのかぁ?」


「人に名前を聞く時は、自分から名乗るのが礼儀だろ。お母さんにそう習わなかったのか?」


「お母さん……? そんなのいたっけなぁ……いねぇ気がすんなぁ」


「マジカル・ストーンバレット!」


 ステッキの指し示す先に、『ストーン』とは名ばかりの巨大な岩塊が生まれ――『男』に向かって殺到した。


「おおっ!?」


 岩と岩がぶつかり合い、轟音とともに衝撃波が荒れ狂う。

 周囲の『草』が派手に巻き上げられ、男の姿を覆い隠した。


 質量弾と、衝撃波。

 ついでに目くらましだ。


 舞い上がった草と土煙の中を抜け、素早く『男』の後ろに回り――


 一閃。


「ぐおゎっ!?」


 手応えあり。

 スターゲイザーの刃が、男の身体を斬り裂いた。


「……血が、出ない?」


 斬り裂いた傷跡からは――血が流れなかった。

 なんだこいつ、まさか天使の一種か?


「なんて卑怯なやつだぁー! 許さねぇぞ!」


「許されようなんて、思ってないよ! マジカル・クリエイトストーンゴーレム!」


 地面が大きく隆起すると、浮き上がった岩が次々と組み上がり、人型を作り始めた。


 その間にも繰り返し――スターゲイザーを振るう。


「はあっ!」


 甲高い音。

 もう一度、角度を変えて……さらに一撃。


 やはり右手だ。

 僕の剣戟は、奴の右手に阻まれる。


「ゴーレムくん、隙を作ってくれ!」


「はい、マスター」


 今日のゴーレムくんは、見た感じ岩でできてるみたいだけど、驚くほど動きがいい。

 僕とそう変わらない速度で――巨大な岩塊が草を蹴り、移動する。


「おおぉ!?」


 ゴーレムくんの拳が、『男』を横から殴りつけた。


「マジカル・ストーンバレット!」


 もう1回だ。


 血が出なくたって、傷は傷だ。平気ってわけじゃぁないだろう。

 だって、悲鳴をあげていたし。


 土煙に紛れて、再度、死角から――


「おおっとぉ! 同じ手はくらわねぇよ!」


 男が上空に飛び上がり、スターゲイザーが虚空を切り裂いた。

 でも、『空』なら――僕の領域だ。


 『空』を蹴り、追撃。

 空中で身動きの取れないであろう男に向かって、一直線に突っ込んでいく。


「んだとぉ? おらぁっ!」


 『男』が両手をクロスさせるように振った。

 さっきと同じ、真空波か?


「マジカル・ガイアシールド!」


 僕の前に、巨大な岩壁が出現する。

 ダイヤモンドよりも硬い、『岩の壁』だ。


「なっ……!」


 なのに、それを切り裂くなんて――


「くっ!」


 真空の刃が、少しだけ僕の肌を切り裂き、血が流れた。

 でも、小春さんの痛みと比べたら……こんなもの、痛みのうちにも入るものか。


 そのまま地面に落下し、互いに距離を取ってにらみ合う。

 どこからどう見ても雑魚みたいな見た目のくせに、なんて威圧感だ。


「しょうがねぇ、俺から名乗ってやらぁ! 俺の名はベリアル! さぁ、名を名乗れぇ!」


 男――『ベリアル』は、高らかに名乗りを上げると――獰猛な笑みを見せた。

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