第百三十八話:魔法少女 坂口小春と白い毛玉の友達
「ピューイ? なんで……」
静まり返った夜の高架下。
ピューイの後ろには遅れて到着した2台のパトカーが停まっていて、回転する赤色灯が、白い毛並みやアスファルトを交互に照らしていた。
言葉が、うまく出ない。
言いたいことはいくつもあるのに、なにから言葉にすればいいのか、わからない。
だって、ピューイは警察に連れていかれて、私はひとりになって。
なのにどうして警察と一緒にピューイが現れるの?
パトカーの横には、刑事らしき男の人が2人。
どちらも見たことのない顔だ。
「警視庁特殊二課の、ピューイだピュイ。聖魔界人プーモ。お前を逮捕する」
なに言ってんのか、わかんない。
わかるように言ってよ。
「コハル、そいつを引き渡してほしいピュイ」
「なんでよ!」
思っていたよりも、大きな声が出て――
自分の声なのに、やけにうるさかった。
「そいつが凶悪な犯罪者だからだピュイ」
「わかんないよ! ピューイはなにをしてるの!? 私をひとりにして、なにをしてるの!」
「あげげげげ……し、死ぬプモ……」
私は今、取り乱している。
こんなの私らしくないって、わかってるけど。
でも、しょうがないじゃない。
『どうして?』
そればっかり、わからないことばっかりだ。
ちゃんと教えてよ。
わかるように、教えてよ。
私だけを、置いていかないで。
「コハル、それ以上は――本当に死ぬピュイ。別にそいつが死ぬのは構わないけど、コハルにはやってほしくない。わかってほしいピュイ」
「なら、ちゃんと説明して! どうしてピューイがひよりちゃんといたの!?」
「……それは、言えんピュイ」
「なんでよ!」
一瞬、ピューイが『ヒーロー』のお兄さんの方を見た。
視線の先では、赤色灯の光がメタリックブルーの装甲を紫っぽい色に輝かせている。
なに?
あいつもなにか、関係があるの?
「さぁ、コハル」
ピューイが、少しだけ私の方に進んだ、その時――
「おおー? お前が坂口小春か? 派手に暴れてくれっからぁー、見つけやすかったぜぇー」
知らない男の声が――すぐ隣で聞こえた。
「えっ……?」
いつから?
なんで、気づかなかったの?
「マジカル――」
「させっかよぉ」
男の『蹴り』が、みぞおちに深くめり込んだ。
足が地面から離れて――気持ち悪い浮遊感。
そして、激痛。
「かっ……!」
息が、できない。
魔法を……だめ、集中が――
「おらぁ!」
『男』が右腕を振るのが見えた。
鋭い痛みが、身体を走る。
遅れて、夜の闇の中に赤いものが散った。
「お前えええええええっ!!!」
聞いたことのないような、声だった。
だって、あの人はいつも、穏やかな声で話していたから。
『お兄さん』が、凄まじい怒りの咆哮を上げながら――『男』の顔面に、その拳を叩き込むのが見えて――目の前が、真っ暗になった。




