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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第二章:小学校を卒業してからの話

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第百三十七話:茶色い毛玉と白い毛玉

 どういう状況なんだ、これ……


 なんかよくわからない鎧の巨人を、小春さんがなにかの魔法で消し飛ばした。


 その小春さんはいつもと違う黒い髪で、茶色いピューイさんみたいなのと、にらみ合っている。

 おまけに道路の脇には、なんか肌がどす黒く変色して倒れて……痙攣している3人の『魔法少女』


 そして――


 『こいつらはひよりちゃんを殺すつもりなんだよ!?』


 小春さんは、確かにそう言った。


 情報が多すぎて思考が追いつかない。

 誰か説明してほしい。


 でも、一つだけ間違いないのは……小春さんに、この『聖魔界人』を殺させるわけにはいかないってことだ。

 茶色い毛玉みたいな姿でも、意思を通わせることのできる『人間』なんだから。


「とにかく……小春さんに、これ以上やらせるわけにはいきません。じきに警察も来ますから、あとは任せてください」


「またそれ? いい加減にしてほしいんだけど……って」


「はい?」


 小春さんが、じっと僕の顔を見る。

 顔というか、メタリックブルーのヘルメットなんだけど。


「なんで私の名前、知ってるの? 名乗った覚え、ないんだけど」


「あ……」


 しまった、つい癖で。

 『佐倉ひより』として小学校に通い出した日と、まったく同じ失敗を……


 なにをやっているんだ、僕は。


「そ、それぐらい、調べますよ」


「なにそれ? そんな感じに見えなかったんだけど」


「いや、それはですね……」


 どう誤魔化そうか。

 そう考えたところで、視界の端に動くものが見えた。


 おっと、茶色い毛玉がどさくさに紛れて逃げ出そうとしている。


 そうはいかない。


「よっと」


 一気に加速して、急接近。

 空中に浮かび上がった毛玉を、がっしりと両手で掴んで確保する。


「なっ、なんだプモ!?」


「なんだって、逃がすわけないでしょ」


「なんでだプモ!? プーモがなにしたって言うプモ!」


「なにって、『未成年者略取』に、『殺人未遂幇助』に……他にも叩けばいくらでも埃が出てきそうなので」


「はぁー!?」


 僕の手の中で、じたばたと暴れる毛玉の犯罪者。

 うーん、ちょっとぐらい力を入れれば、大人しくなるかな?


「そいつは私の獲物。『人間じゃない』んだから……止められる筋合い、ないよね」


 ……小春さんから、ものすごい圧力を感じる。

 凄まじい魔力の波動が、大気だけじゃなく――空間そのものまで震わせているようだ。


「心配しなくても、こいつの罪はかなり重い。そう簡単には自由にさせないよ」


「……そんな話をしているように聞こえた?」


 こっわ……

 11歳でどうやったら、こんな凄味が出せるんだ。


 でも、怯むわけにはいかないのだ。


 だって――『聖魔界人』を『人外の者』として処理してしまえば、それはピューイさんも同じように、『人外の者』として扱うってことだ。

 他でもない小春さんに、そんなことはさせられない。


 断じてだ。


「そんな話にさせてもらうよ、断固としてね」


「……そう」


 小春さんが、小さく息を吐いた。


「マジカル・タイムストップ」


「え……?」


 消えた。


 僕の手の中から毛玉が消えていた。

 慌てて小春さんの方を見ると、茶色い毛玉は――小春さんの手に握られている。


 いつの間に?

 いや、ていうか今――『タイムストップ』って言った?


 時間止めたの? マジで?


「わからない? 手加減してるんだよ」


「ぐえええええ……」


 まずい……毛玉が絞られている。

 聖魔界人の耐久力というのは正直よくわからないけど、外見からはそれほど頑丈そうな印象を受けない。


 『少女』の腕力でもひねりつぶすことができそうに見えるし、そうでなかったとしても『方法』はいくらだってあるだろう。


 なので、急いで奪還しようと手を伸ばして――


「なっ!?」


 かわされる。

 そんなばかな、全速力だぞ?


 何度繰り返しても……小春さんがいつの間にか、少しずれた場所に立っていて、触れることすらできない。

 僕の『素早さ』は、常人とは比べ物にならないのにだ。


 まさか、『時間を止める魔法』を、『魔法の言葉』なしで短時間ずつ、連続で発動しているのか?


「くっそ……!」


「諦めなよ」


「うげぇぇぇぇ……プ、プモ……」


 なんか、毛玉の様子が本当にヤバイ感じになっている。

 急がなければ……まずいんじゃないか?


 もちろん小春さんは、手を緩めない。


 どうする……どうやって止める?

 そう考えた、そのときだった。


「コハル! やめるピュイ!」


「えっ……」


 茶色い毛玉を力任せに握り締める小春さんを、聞き覚えのある声が制止した。

 振り向いた小春さんの手から、ふっと力が抜ける。


 暗闇の中から現れたのは、別の毛玉。

 それは見間違えるはずもない、白い毛玉。


 そこにいたのは――ピューイさんだった。

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