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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第二章:小学校を卒業してからの話

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第百三十一話:それでも陽は昇る

「ふぅ……」


 変な踊りをやめた如月さんが、額の汗をぬぐった。

 疲れるぐらいならやめときゃいいのに。


「はい、そんじゃ結論から言いまーす」


「どうぞ」


 落ち着いたのか、得意げに胸を張る。

 今時の子供よりも子供っぽくて、なんなんだろうねほんとこの人。


「咲さんの件、正式に『誘拐事件』として扱うことになりましたー」


「え……?」


 誘拐事件。


 言葉の意味は、もちろんわかる。


 『誘拐事件』っていうのは普通、人をどこかに連れ去ったりする犯罪のことを意味するはずだ。

 でも――咲は今も、澪の家にいて、僕の隣の部屋でずっと眠っているわけで……


 要件に合致していないような気がするのだけど。


「ですが、『魂』の実在を法的に認め、さらにその略取を違法行為として扱うというのは……」


「そうだね。本来なら法整備に何年かかるかわからないし、そもそも認められるかどうかって問題もある」


 ふうむ、なんのこっちゃ。

 澪はさっきので理解したみたいだけど、2人とも……僕にわかるように話してほしいなぁ。


「つまり――咲の『魂』が何者かによって連れ去られている現状を正式な事件として、警察が捜査することになったということですわ」


「うん、そゆこと」


「あ、どうも」


 なるほどなー。


 咲の『肉体』は誘拐されていないけれど、『魂』は誘拐されている。

 それを事件として、警察が動いてくれるというわけか。


 僕でもわかるように説明してくれて、たいへんありがたい。

 たぶん顔に『?』って書いてあったんだろうな。


「これはクシエルからの情報が決め手になったことでね。あのドブカス天使でも、役に立つことはあるもんだね」


「あいつやっぱり、咲についてなにか知っていたんですか?」


「私たちが知ってることと大差ないよ。でも、あいつは『天使』だからね。一定の信憑性ってものが生まれるのさ」


「……そういうものですか」


 うーん……

 あのうさん臭い天使の言うことなんて、何一つ信用できそうにないんだけど。


「そういうものだよ。実際に『天使』なんてものが顕現しちゃえば、盲目的に信じる人間だってそれなりにいる。おかげで今、国際問題になりかけてるしねぇ」


「国際問題って……なにがどうしたらそんなことに?」


「そりゃそーさ。だってなんといっても『天使』だよ。例えば『聖書』の上に大統領が手を置いて宣誓する国なんかが、ほっとくと思う?」


「でも、殺人鬼ですよ」


「でも、天使だ」


「いや、殺人鬼ですよ」


「うん。でも天使なんだよ」


 なんだその理屈。

 天使だからなんだってんだ。


「『天使様を国家権力が拘束しているなんて許せない』って思う人間はいくらでもいるってことさ」


「納得いきませんよ」


「私だってそうさ」


 ぬー。

 本当に納得いかない。

 誰がクレームを付けてきているのか知らないけど、あいつがどれだけ危険なのか実際に知りもしないくせに。


「まー、あいつのことはともかくさ」


 如月さんが、ぱん、と軽く手を叩いた。

 まとめに入るつもりだ。


「これからは咲さんのために、正式に警察のリソースを使えるんだ。ここは素直に喜ぼうよ」


「……そうですね」


 釈然としないけど、助かるのは確かだ。

 如月さんはともかく、伊吹さんや芦屋さんまで正式に力を貸してくれるなら、こんなに心強いことはない。


「なんて失礼な。クシエルの証言からここまで持っていくのに、私がどれだけ頑張ったか!」


 ごめんごめん。

 感謝してるよ、いつもありがとう。


「えへへ」


 チッ、可愛いなこいつ。

 こっちの思考を誘導しようとしてくるのが、実に腹立たしい。


「職場でいちゃついてんじゃないピュイ」


「いちゃついてませんよ……」


「そうだね、帰ってからいちゃつこうね」


「いちゃつかないですよ」


「けちー! おじょーさまとはいちゃついてたくせに!」


「いちゃついてませんよ!」


「いちゃつきましたわ」


「はぁ……」


 なんだろうなぁ、この感じ。

 本当に、ばかばかしくて、騒々しくて。


 つまり。


 それでも――陽は昇るってことなのかな。

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