第十三話:魔法少女 坂口小春
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(殺意が見え見えだよ、お兄さん)
おじさんはヒナタさんって名前らしい。
そして、おじさんをそう呼ぶなんかすごくキラキラしたイケメンお兄さんは、ヒナタさんの後輩?らしい。
さっきはちょっと不覚をとったけれど、私だって魔法少女になってもう1年。
殺意や敵意ぐらい見破れなければ、生き残れるわけがないのだ。
問題は、このイケメンが、どうしてこんな剥き出しの殺意をおじさんに向けているのかだけど……まぁ、それはどうでもいいや。
「ねえ、おじさん。起きてすぐで悪いんだけど、もうちょっとだけ走れる?」
無理だろうなーとは思うけれど、一応聞いてみる。
「走るって、なんで……まさかまた何か……?」
そうだけど、ちょっと違うんだよね。
「うん、そんな感じ」
適当に答える。説明している暇はなさそうだし。
「ごめん、ちょっと無理そう……立ち上がれる気がしない……」
そうだよね、私を庇ってあれだけ戦って、走って、最後は忍者にノックアウトされたんだから。
どこからどう見たって、すぐに走れるようには見えない。
「そっかぁ……なら、しょうがないか」
小さく息を吐いて、覚悟を決めてみる。
たぶんあのお兄さんはすごく強いけど、やれるだけやろう。さっきヒナタさんがしてくれたみたいに。
手の中でステッキを強く握り直す。
「黙れッ!簒奪王ペプラモト!宇宙連合法に従い、お前を消去する!」
お兄さんが叫ぶ。消去ときたかー、困ったな。
引けない理由が増えちゃった。
「……変身」
そう言うと、まばゆい光に包まれるお兄さん。
光が収まると、そこにはなんだろう……いわゆる変身ヒーローみたいな、クラスの男子が好きそうな……赤いメタリックな奴がいた。
「マジカル・アイスウォール!」
赤い奴がヒナタさんに向かって殴りかかる――でもこっちの方が早い。
魔法の冷気が分厚い氷の壁になって路地をふさぐ。これは簡単には破れない……はずなんだけどなぁ。
鉄より硬い氷の壁に、鈍い音を立てて赤いメタリックな拳が突き刺さる。いくらなんでもめちゃくちゃだ。
でも、足止めにはなってるみたい。
見た感じ、パワーはともかくスピードはそれほどでもないのかも?
だったらこのまま、力づくで来るんじゃないかな。
とはいえ、うーん……こっちの攻撃が通用する保証は無いよね。
「マジカル・アイスウォール」
念のためにもう1枚。ここは一旦逃げよう。
「ピューイ、お願い」
「しょうがないピュイねぇ……」
以心伝心、ピューイは台車みたいな姿に変身してくれる。
「さぁ、ピューイに乗るピュイ!」
「ええ……朝霧、ええ……?」
うん、わけわかんないよね。
でもそれどころじゃないから。今も氷の壁が砕かれる音が響いてるから。
ヒナタさんをピューイに乗せると、持ち手を力いっぱい押して走り出す。
魔法少女というのは魔法を使う少女なので、おじさんを抱えて走ったりはできないのだ。




