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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第一章:魔法少女になってからしばらくの話

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第百二十四話:リボン

 光がしばらく僕を包んで――消えた。

 さっきまでより、視点が高い。


 両手を見る。さっきまでより大きい。

 小さな可愛い手じゃなくて、力強い、男の手だ。


 軽く自分の身体を確認すると、ちゃんと服を着ていた。

 革製のジャケットと、革製のズボン。


 ともかちゃんに男の全裸を見せるわけにはいかないから、よかったと思う。


「あなた……誰?」


 ともかちゃんが、僕を見て不審者を見るような目をしている。

 突然見知らぬ男が現れたのだから、当たり前だよね。


「ひよりちゃんは……?」


 きょろきょろと辺りを見渡したあと、もう一度僕を見る。

 これまで、僕に向けたことのないような目で。


「ひよりちゃんになにかしたの? もしそうなら……許さないから!」


 ともかちゃんが僕を睨みつけながら、レーザーブレードを振りかざした。

 これまで一度だって、彼女が怒っているところを見たことなんてない。


 そんな彼女が、『佐倉ひより』になにかが起きたことを察知して、怒りを露わにしている。

 原口くんのことが目に入らないぐらいに、我を忘れて。


 どこまでいっても、彼女は彼女のままだ。

 ともかちゃんのままだ。


 だけど、敵だ。


 人類の、敵。


 『変身能力を持つ敵性宇宙人』


「……変身」


 どうするべきか、わかってる。

 今はただ、為すべきことを。


 再び眩い光が僕を包み、身体中に『なにか』が装着されていく。


 光がおさまると、僕の身体はメタリックブルーの装甲に包まれていた。


 とてつもない力が、みなぎっている。

 さっきまでとは文字通り、桁違いの――鉄をも砕く力が。


 その『力』を拳に込めて――隙を突くように襲い掛かってくる『変身能力を持つ敵性宇宙人』に叩き込む。

 『敵』は、悲鳴を上げながら吹っ飛んで、壁に叩きつけられた。


 それでも『敵』は、敵意を露わにこちらを睨みつける。

 やっぱり人間じゃないって、嫌でもわかってしまう。


 だけど、その『悲鳴』はもう、聞きたくないんだ。

 だってそうだろ、だから――


「スターゲイザー、もう1回だけ、頼む」


 意識を集中し、紅の刃を再度生成。

 次で、決めなきゃ。


「それ……ひよりちゃんの……?」


 壁際で身体を起こした『敵』が、僕の手元のスターゲイザーを見つめていた。


「ひよりちゃんをどうしたの? 私の友達を、どうしたの!」


 怒りを剥き出しにして、『敵』が再び襲い掛かってくる。

 レーザーブレードをスターゲイザーで受け止め、そのまま弾き返す。


 『敵』は、想定よりも強い。

 身体能力が、人間のそれとは段違いだ。


 でも――僕にかなうわけがなかった。


 だって、僕は強いから。

 だって、僕は『ヒーロー』だから。


 人類の敵を、世界の敵を、倒さなければいけないのだから。


「返して! ひよりちゃんを返してよ!」


 満身創痍になって、それでも飛び掛かってくる『敵』を再び弾き返し――深紅の刃を振りかぶる。


 『星を見つめる者(スターゲイザー)』


 僕の剣。

 僕の力。


 立ちふさがるすべての『敵』を打ち砕き、いつか『夢』の彼方へたどり着くための――


 『応援する』って、言ってくれたよね。


 一閃。


 すべてを滅ぼす深紅の刃は――『ともかちゃん』の身体をすり抜けた。


 傷つけることなく。

 傷つけることが、できなくて――


 だって、スターゲイザーは……僕の斬りたいものしか、斬れないんだから。


 体勢を崩した僕へ、ともかちゃんのレーザーブレードが迫っていた。

 これはきっと、避けられない。


 だって、身体に力が入らないんだ。


「切断」


 ともかちゃんの右手が、地面に落ちた。

 僕と一緒に、小春さんの震える手を握ってあげた、優しいあの手が。


「私を、恨んでいただいて構いません」


 美しい、銀色の髪。

 あの日、月光に照らされて――僕の目を奪った髪が、僕と『ともかちゃん』の間を遮っていた。


 右手を失ったともかちゃんは、もう動けない。


「分解」


 ただ一言。

 月城さんの放った光が――ともかちゃんに直撃した。


「あ――」


 光が、ともかちゃんの身体を塵に変えていく。

 それは、あっという間のことで、僕にはどうすることもできなくて。


 だけど――ともかちゃんは。

 僕の、大切な、大切な友達は。


 最期に、残った左手を髪に伸ばした。


 自分の身体が光の中へ消えていく中で、蒼いリボンをほどいて――

 まるで『分解』から逃がすように、そっと手を離した。


 愛しいものを――見つめるように。



 さっきまで、あの子がいた場所で。

 今はもう誰もいない場所で。


 ひらり、ひらりと。


 蒼いリボンだけが、舞っていた。

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