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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第一章:魔法少女になってからしばらくの話

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第百十九話:2次予選開始

 日曜日の朝。


「おはよー」


「おはよ、小春さん」


「2人とも、おはよ!」


 少し眠そうで勢いのない小春さんと、対照的に元気いっぱいの成瀬さん。

 いつもとは正反対の雰囲気が、少しおもしろい。


 2人の髪にはもちろん、お揃いの蒼いリボンが結ばれている。

 僕の髪に結ばれた『蒼穹のリボン』と、よく似たリボンが。


 今は朝の8時半。


 試合が始まるのは9時半だから、それまでには少々時間がある。

 今日は現地集合だったのだけど、少し集合時間が早すぎる気がする。


「みなさま、ごきげんよう」


 少し遅れて到着したのは白峰さんだ。

 いや、別に集合時間に遅れたわけではないから、ぜんぜん問題はないんだけど。


 白峰さんの髪には赤いリボン。

 輝くような金髪に、ちょこんと結ばれている。


 いつも律儀につけてくれているようで、贈ったかいがあったというものだ。


「白峰ちゃんさー、なんか最近ちょっとこう、キャラ違うくない?」


「う、うん……前はほら、もう少し……ね」


「な、なんのことでしょう? わたくしはずっと同じですわ」


 そう言いながら、白峰さんがちらりとこちらを見る。


 2人の言葉はもっともだ。

 以前の白峰さんは、なんというか少し他人を見下しているようなところがあった。

 でも最近はまったくそんな様子もなくて、それは良い変化と言えるだろう。


 しょうがない、ちょっと助けてあげるかー。


「まあまあ、2人とも。白峰さんなりに歩み寄ってくれてるんだよ、きっと。だから、ね?」


「ふぅん。ひよりちゃんがそう言うならいいんだけどさー」


「うん……ひよりちゃんがそう言うなら」


 そんなことを話しているうちに、今日の試合に出ないサッカー部員や、応援するために集まった部外の少年少女たちもやってくる。


 目立つのはやはり女子だ。

 最近活躍が目覚ましく、白峰さんのターゲッティングからも外れた玉田くんが特に大人気で、目当ての女子が日に日に増えている。

 本人は『くだらねー』なんて言ってどこ吹く風だったけど、玉田くんがモテるのはどう考えても当たり前なんだから、そこは『自覚』してもらいたいところだ。


「そろそろ入れるようですわ。みなさま、参りましょう」


 ぞろぞろと、応援席へ。


 どういうわけか白峰さんが端の席を譲らず、席順は『小春さん・成瀬さん・僕・白峰さん』の並びになった。


 端の席が好きな人って、いるよね。

 そうじゃないと落ち着かないならしょうがない。



「がんばれええええええ! 卓也あああああああ!」


 2次予選、第1試合。


 大盛り上がりの会場の中、相変わらず成瀬さんは全身全霊だ。


 その応援の効果もあったのか、原口くんは絶好調。

 ハットトリックを決めて、完全勝利だった。


 試合終了後、こちらを見ながら両手を上げて、勇ましく雄叫びを上げる。


「卓也あああああ! かっこいいよおおおおお!」


 成瀬さんも大興奮だ。

 後ろの席の人の邪魔にならないかなって、少し心配になるぐらいに。



 続いて、第2試合。


 なんとか女学院の初等部と、地元の公立小学校の試合だ。


 女学院というぐらいだから、当然全員が女子のチーム。

 なんか知らんけど人気があるらしく、応援席からもちらほら黄色い声が飛んでいる。


 僕らとしてはどっちが勝ってもらっても構わないので、さすがの成瀬さんも特に興奮することなく、大人しく試合を観戦していた。


「……お気づきになりましたか?」


 ものすごい小声で、白峰さんが僕に声をかけてきた。

 なんのこっちゃ。


「あの方ですわ」


 白峰さんが僕の手を握る。

 すると――突然、視界がぐにゃりと歪んだ。


「うわっ」


 急になに。


 変化した視界の先には、1人の女子選手。

 白峰さんに少し似た金髪を、ショートヘアに綺麗にまとめている。


 ……よく見てみると、素晴らしい動きだ。


 無駄がなく、機敏で、正確。


 あの少女1人を止めるために、常に2人。時には3人もの選手が対応を強いられていた。


 フットサルというのは5対5のスポーツだ。

 たった1人にそこまで翻弄されてしまえば……


 結果は、5対0。


 勝負にすらなっていなかった。


 全員女子のチームだし、男子相手なら多少は不利だと思っていたのだけど。

 そんなものは関係ないと言わんばかりの圧勝だった。


 ……ちなみに、さっき視界が変化したのは『視界の共有』といって、ダンピールの能力の1つらしい。

 白峰さんは人間離れした視力をしているから、細かいところまでよく見えて助かるのは助かるのだけど……急にされるとびっくりするよね。


「すごい子だったね」


「あの方……同族ですわ」


 小声で話す白峰さんの言葉には、少しだけ焦ったような響きがあった。

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