第百十六話:ダイジェスト治安維持
みーつけーたぞー。
水曜日の夜。
目撃情報のあった辺りの、人気のない高架下。
頭上を電車が通りすぎ、音と光が遠ざかっていく。
次の瞬間、異様な気配を感じて周囲を見渡してみると――『ターゲット』が少し離れた暗がりから、こちらを凝視しているのに気づいた。
それにしても……ぐろいな。
少しばかり時代を感じさせる、ひどく汚れたセーラー服。
乱れた髪から血走った目だけがぎょろりと覗いていて、いかにもホラーという感じ。
なにより特徴的なのは、下半身が無いことだ。
セーラー服も無惨にちぎれていて……垂れた腸を引きずりながら、両腕だけで地面を這っている。
明らかに、『テケテケ』だ。
痛ましい姿になんとも言えない気持ちになるけど、子供たちを狙うのであれば、容赦はしない。
きっちり成仏させてやろう。
しばらく見つめ合っていると、こちらから襲い掛かるまでもなく、テケテケが飛び掛かってきた。
どこからか取り出した鎌を手に持って。
時速50kmぐらいだろうか。
口裂け女と比べると、半分以下の速度かな。
「よっと」
横に飛んで避ける。
鎌が空を切り、そのままテケテケは数メートル先へ滑っていった。
とはいえ、油断するべきではない。
テケテケだってかなり有名な怪異だ。相応の力を持っているはず。
「ケケケケッ」
お、おう……そういう声なんだ。
テケテケは甲高い声をあげながら器用にターンして、再び鎌を振り上げて飛び掛かってくる。
向かってくるテケテケに向けて、右手を振った。
グリーマルのエネルギー衝撃波を参考に……魔力を破壊のエネルギーに変換して――放出。
「ゲゲェッ!」
テケテケが血をまき散らしながら吹っ飛び、高架下のコンクリート壁に激しく叩きつけられた。
……だめだな、これは。ビジュアル的に気分のいいものじゃない。
下半身がなくて色々気味が悪いといっても……見た目は子供なんだから。
新しい技をこれ以上試すより、早く終わらせよう。
「スターゲイザー、頼む」
『パラッパッパー!』
真っ二つになったテケテケが爆発四散した直後、いつものファンファーレが脳内で鳴り響いた。
……これでレベルは『91』か。
レベルって、上限とかあるのかな?
帰り道。
せっかくだから、変なのがいないか確認しながら、ゆっくり歩いて帰ることにした。
すると――道中の公園で、早速なんかいた。
ぬめぬめした巨大なナメクジの怪物みたいな奴と、金属製の四足歩行の機械が激しくぶつかり合っている。
「こんばんわー」
あ、だめだ。
一応、対話を試みてみると、機械の方がこちらに向き直ってビームを撃ってきたので――破壊。
「あー、こりゃあ狂気の科学者・諸口博士の殺戮マシーンですねぇ」
回収班の人が言うには、諸口博士の殺戮マシーンとやらは割とメジャーなものらしい。
嫌な世の中だよね。
ちなみに、ナメクジの怪物みたいな奴は、この辺りの守り神だかなんかだそうで。
見た目だけならどう見ても殺戮マシーンよりきっついんだけど、人類には友好的な存在みたいだ。
お礼にと差し出されたよくわからない石ころみたいなのは、なんかぬめぬめしているから持ち歩きたくなくて……丁重に辞退させてもらうこととする。
さらに河川敷を通りかかると、今度は中学生ぐらいの子供が2人、よくわからない超常能力を繰り出して争っていたので、ぐるぐる巻きにした。
このぐるぐる巻き用の紐みたいなやつは、芦屋さんが作ったものらしく、ラジエルみたいな魔術系の天使でさえ完全に無力化できるすぐれものだ。
子供の扱う謎の能力ぐらい、封じるのはわけないのだ。
芦屋さんはなんか用事があるらしくて連絡がつかなかったけど、代わりに伊吹さんが来てくれるらしい。
――夜風に当たりながら、待つこと十数分。
その間に事情を聞くと、前世からの宿命で、12人の能力者たちが争いを繰り広げているんだとかなんとか。
勝ち残った者が世界を統べるだとかなんとかかんとか。
知らん、そんなことは。
前世がどうあれ子供は子供だし、そのへんで許可なく暴れ回るなら、それは犯罪ですよ。
はぁー、ほんとに多いなぁ、こういうの。
世の中どうなってるんだろうね。




