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異世界転生で奪われた娘を取り戻すために戦う父親は、魔法少女になって娘の親友の銀髪お嬢様に愛される  作者: 古川智明
第一章:魔法少女になってからしばらくの話

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第百四話:白峰さんの王子様

「卓也、がんばれえぇぇぇぇぇ!」


 成瀬さんの応援に、気合いが入りまくっている。

 こんなに大きな声を出しているところを見たことがないから、ちょっと新鮮だ。


「がんばれー」


 そこまで全身全霊で声を張り上げるのは、さすがに照れくさい。

 一応、僕も応援はするけどね?


「暑くはありませんか? どうぞ、お茶ですわ」


 そう言って、冷たいお茶を渡してくれるのは白峰さん。


 急になんなんだろうか、よくわからん。

 今日はやけに甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだけど、どういう心境の変化なのだろう。


「う、うん……ありがとう」


「礼には及びませんわ」


 確か白峰さんは、玉田くんのことをいつも応援していたはずだ。

 玉田くんは原口くんほどじゃないけどデキる男で、この間の口裂け女配信騒動でも、無謀なクラスメートたちを止めてくれていた。


 サッカー部にはなかなかいい男が揃っている。

 特に今日の試合に出ている5人は、文字通り5本の指に入るモテ男だと考えて相違ない。


 もちろん筆頭は原口くんだ。


 ただ、原口くんはどう考えても成瀬さんとくっつくだろうと誰の目にも明らかなので、関心を向ける女子は少ない。

 必然的に次点の玉田くんあたりが候補となるわけだけど……客観的に見て、あからさまに容姿に優れた白峰さんと勝負したい女子もこれまた少ない。


 その結果、残り3人に声援が集中する。


 女子の世界というのは実に複雑で、僕には理解が難しい。

 ……ちなみに上記はすべて、今日はここにいない小春さんの受け売りだ。


「いっけぇぇぇぇぇ! 卓也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 成瀬さんは、他の誰にも負けないぐらい声を張り上げ……誰よりも全力で、あらん限りの力で応援している。

 他の女子が3人に向ける応援の声を、1人で圧倒するぐらいに。


「白峰さんはいいの?」


「なにがでしょうか?」


「応援。玉田くんの」


「ええ。必要ありませんわ」


「そうなんだ?」


「ええ。わたくし、王子様を見つけてしまいましたから……」


 おお、なんだろう。

 あの白峰さんが頬を赤らめている。


 王子様ねぇ……原口くんじゃないだろうし、どこの誰だろうか。

 サッカー部のメンバーなら、今日も力いっぱい応援しているはずだから……例えば野球部の子とか?


 いや、待てよ……学校内とは限らないか。

 そういえば病院の時、月城さんだけじゃなく、朝霧のこともじっと見つめていた気がする……


 だとしたらそれはまずい。許容できる年齢差じゃないぞ。

 朝霧め、女子小学生を惑わすとは……


「卓也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 おっと、ものすごい声援だ。


 成瀬さんだけじゃない。会場全体が湧いている。

 原口くんのオーバーヘッドキックで、ダメ押しの1点が追加されたからだ。


 うむうむ。


 わしの教えを守っておるな。

 我が弟子ながら、大道芸のような技を本番で決めるとは、やるではないか。


 派手な技が決まると、敵味方の戦意に大きく影響する。

 ただでさえ原口玉田のコンビに翻弄されている相手だ、心が折れても無理はない。


 さらに続いて玉田くんがゴールを決めて――勝負はついた。




「かっこよかったよ、卓也!」


「へへ……成瀬の応援のおかげだな」


「違うよ、卓也の実力だよ」


 ……ハハッ、もう付き合っちゃえよ。


 試合が終わり、昼休憩。

 お弁当を広げての光景が、これである。


 いつもは奥ゆかしい成瀬さんなのに、今日はテンションが上がりきっている。

 小春さんの言う通り、この中に突撃できる女子はどう考えても存在しないだろう。


「さ、わたくしのお弁当もお食べくださいませ」


「あ、うん。ありがとう、白峰さん」


 なんだろう、めっちゃおいしい。


 成瀬さんの作ってくれた素朴なお弁当も、とても素晴らしいのだけれど……白峰さんのは段違いだ。

 なんかよくわからないけどやたら美味しい肉料理と、なんかよくわからないけどやたら美味しい魚料理。


 フランス料理かなんかかな?

 これで手作りらしいから、恐れ入る。


 さらに隅っこには、なんとすあまが配置されている。

 何度僕の前に立ちはだかってくるというのだ……すあま。


 別に嫌いってわけじゃぁないけども。

 少なくとも、こういうお弁当のデザートとして食べたいものじゃないよね。


 そして……かわいそうなのは玉田くんだ。


 白峰さんがなぜか僕の世話をしていることで、結果的に梯子を外された形になっている。

 他のメンバーが女の子たちに囲まれている中、彼は独りぼっちでもぞもぞとお弁当を食べていた。


「玉田くん、一緒に食べよ? 私、食べきれないからさ」


「…………」


「玉田くん?」


 玉田くんが、僕の顔をじっと見る。

 一瞬だけ、なにかを考え込むような顔をした後で、大きく息を吐いた。


「……佐倉。前も言ったけど、俺は時々お前が怖いよ」


「ええー、なんで」


「……自覚しろよな」


 自覚って言ってもなぁ……なんの話かさっぱりわからない。


「はぁ……そういうとこだよ」


 『?』みたいな顔をしている僕に、玉田くんが再度ため息をつく。

 なにか気に食わないことをしてしまったんだろうか?


「これ以上犠牲者が出ないことを祈るよ、俺は」


 ええー、犠牲者って……ほんとに、なんなの。

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