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終わらない物語  作者: 衛刀 乱
仰ぎ見る偽りの空
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議会の行方

ガチャ


フェンローナ城の中の一室にノーブリア州の各地を統治する主要な10名が入室したファラエルとゴーザを迎えた。ファラエルが席に着くとゴーザはファラエルの斜め後ろに立ち、あとは全員着席する。


「では始めるとしよう」


「ではズワルテ殿、此度の騎士団の所業どう責任を取るつもりだ」


ファラエルの第一声を受けて早速、ガラドールが席から立ちあがり、ズワルテを指を差しながら声をあげる。騎士団による被害は小さくないため心は痛むが、派閥の勢力争いで不利な状況を覆そうと躍起になる。


「確かにわたくしめが全面的に騎士団の応対をしておりましたが、もとより制御できるような者達ではありませんからな。こればかりは致し方ないかと」


「ふざけるな!あのような横暴な振る舞いは許されるものではない。何故事前に止められなかったのだ。まさか止めるどころか手引きしたのではあるまいな」


「言いがかりも甚だしいですな。私を愚弄するおつもりか」


ガラドールからの指摘をズワルテが何食わぬ顔で受け答えるが、次第に両者とも熱を帯び始める。


「二人ともそこまでだ。騎士団については放置するのは業腹だが、今はノーブリアから追い出し、被害の復旧も始まっている。今日は議題が立て込んでいる。中央との共同事業を多数決で決めるのであったな。本題に入れ。」


騎士団の件はここまでだというファラエルの言葉に、ズワルテの肩をもっているためだと断定しているガラドールは、苦々しい表情を浮かべ着席する。対してズワルテは勝ち誇ったように席を立つ。


「今まで散々議論を尽くしましたが、平行線ですので、前回の取り決め通りに多数決を取らせて頂きますぞ。賛成の方は起立願います。」


ズワルテの声に反応して、次々と席を立つ者が増えていく。ズワルテの他に3人は共謀者で、あと中立だった3人が立ち上がった。席に座ったままのガラドール、レバンズ、ルータスの3人以外の7人が賛成だった。ガラドール達は悔しげに歯を食いしばる。これからは政策に口を出すことが困難となる。負けた方は全面的に協力することが取り決めに含まれていた。


「賛成が7で反対が3か。ならばこの件はズワルテの主導で進めろ。と言いたいところだが」


当然のように勝ったと思っていた賛成派の者達は、ファラエルの言葉を訝しんだ。次の言葉を緊張した様子で待っている。すると、ゴーザの指示で衛兵が書類を持ち込むとそれを受け取り、ファラエルの手元に渡る。


「さて、ここに不正が行われた数々の証拠があるのだが、ズワルテ、お前が関わっているものがかなりあるが、何か申し開きはあるか。」


「えっ、いや、一体何のことでありましょう。私にはさっぱり分からないのですが……」


動揺するズワルテのもとに、隣の者が隣にと読みまわしながら届ける。内容を見たガラドールの目に力が戻り、額には青い筋が浮かび上がっている。


「関わる各所を調査させて裏は取れている。残念だが、処罰せねばならんな。」


「いや、あの、ファラエル様?」


予期せぬ展開に狼狽えていたズワルテだが、ファラエルの瞳に宿る何かを見た瞬間、それに気付いた。


おのれ、謀ったな


人を欺き続けたズワルテだからこそ確信した。誰のお陰でここまでこれたと思っているのか。

怒りで顔を赤く染め上げると、殺意の目をファラエルに向けて声を荒げる。


「ふざけるな!そもそも」


「ゴーザ」


ファラエルが名を呼んだ瞬間、言葉を言い終わらない内にズワルテが頭を射抜かれる。続けざまに星弓で二人を即殺すると、もう一人が背後にいた衛兵に斬り殺された。あまりにも迅速に事が起きたため、その場にいた者たちは言葉を失っている。


「これで、賛成が3人、反対が3人か」


ファラエルの声でようやく我に返った皆が、予測不能な事態に脂汗を浮かべている。


「同数だった場合は私を加えるのであったな。では、私は反対を支持する。これで賛成が3、反対が4だ。よって否決だな」


反対派のガラドール達は未だに呆けているが、賛成派のズワルテと懇意にしていた者は歯をガチガチ鳴らしながら自分も殺されるのではないかと怯えていた。殺された者達はいずれもノーブリアを壊そうとした共謀者達で、立っている三人は中立派と呼ばれる者達だった。


「心配せずともこれ以上は殺さぬ。ゾリ、苦労をかけたな。」


「ファラエル様のこれまでを思えば、これしきのことは何ともございません。悲願成就、ようやく報われましたな」


ゾリという男は老齢であるが、長きに渡ってノーブリアを支えてきた忠臣である。地方領主の座を息子に渡していたが、ファラエルが打ち明けた時に、再び立ち上がってくれた。間者の役回りを買って出て、色々と力を尽くしてくれていた。周りからは金欲しさに出しゃばる老人と揶揄されることもあった。だが、ファラエルとのやり取りを聞いて、この場の皆が理解したのだった。


「さて、これよりノーブリアは独立する。ガラドールを中心に王国と戦えるように防衛の整備を強化せよ。ムトールとヨリュカシアカに使者を出せ。ここからは無駄に費やす時間はないと思え」


ズワルテ達は衛兵によって運び出され、今この時も各地で一斉に不穏分子を一掃している。水面下で周到に準備をして、機を逃さなかった。

そして、これからを生き残る為の議論が日が変わるまで続いたのだった。



翌日、フェンローナ城からの使いがアウリス達が宿泊している宿に現れ、ノーブリア侯からの呼び立てらしく、今は小隊規模の兵達に連れられて歩いている。すれ違う人々の中には、助けられた人もいたようで、好意的な視線や感謝の言葉を受けることもあった。


「いやー!手柄を立ててみんなから感謝されるって最高だなー」


「そうだね、成り行きだったけど、役に立てて良かったよ」


頭の上で手を組んで歩くライは、足取り軽くご機嫌な様子だ。ジンも恥ずかしそうにしてはいるが、ライに同意している。軽やかなライに対してアウリスは体がバキバキで、竜剣レイアを宿に置いてきたにも関わらずに二人についていくのがやっとである。


「もしかしてムトールの時みたいに、たくさんお金もらえるんじゃねえか?だったらロキも喜ぶだろなー。あいつも一緒に来ればいいのによー」


使いの者からアウリス、ライとジンに声がかかったのだが、一緒でも構わないと言われた。

それでもロキは、手柄を立てた訳でもないのに行くのは面倒だということと、まだ眠っている

カイゼが目を覚ましたら、包帯を替えるつもりなので行かないと言っていた。


そうしてたどり着いた謁見の間の入り口で、三人は中の様子に息を呑む。中央に敷かれた赤いカーペットを空けて両側には、たくさんの人がこちらを向いていた。衛兵に促されて前に進めば、拍手で迎えられた。


ファラエルの側に立つゴーザから立ち止まるよう声が掛かったところで、後ろから衛兵と一緒にフェリスが歩いてきた。アウリス達との違いは周りからのフェリスに対する視線がどこか複雑なものだったことだ。


「フェリス!無事だったんだな!」


「ああ、カイゼは無事か?」


「宿でロキから手当てを受けてるよ。心配ないって言ってた」


「そうか、感謝する」


アウリスからの返答でフェリスの表情が穏やかになったが、どこか陰がさしていることが気になった。


「お静かに」


ゴーザからの注意の言葉の後に、ファラエルが口を開く。


「まずはお前の処罰が決まった。フェリス、お前は追放する」


!?


「はい、……兄上、俺は…」


ファラエルの言葉を受け入れたフェリスは、何か言おうとしたが、途中で口を噤んだ。


「待ってよ!追放って何故!フェリスは皆の為に戦ってたのに!」


「そうだぜ!こいつが頑張ってたのを俺らは知ってる。そうだ!俺らの手柄でフェリスを許してやってくれよ!」


アウリスとライの反論にファラエルは眉を顰める。


「何を言っている。何か勘違いをしているようだが、お前達が騎士団と戦ったことは評価してやるが、我が街を破壊した事は度し難い」


「へっ?」


思っていた展開との違いにライは面を食らったように狼狽え、アウリスは薄々感じていた事が現実になったと頭を抱える。不可抗力?だっとも言えなくはない気がするがレイア曰く、力加減が出来ていないと言われていたので、自分がやり過ぎてしまったのだという自覚があった。


「お前達を呼んだのは断罪の為だ。即刻この国から出ていけ」


「そっ そういう事なら早く行かねえとな」


英雄扱いされると思いきや真逆の扱いに居心地が悪くなったライが、素早く反転すると。


「罪を犯してこの国から出るだけとは思うまいな。贖罪の為にその男を責任をもって連れ出せ。どちらかでもこの国で見つけた場合は、全員を追わせてでも捕縛して処罰する。以上だ、行け」


冷や汗タラタラでアウリス達三人が足早に退出しようとすると、フェリスはファラエルに向かって深く頭を下げた。


今は伝えたい言葉が上手く出てこない…


思いつめたフェリスに向かってライから急かすように声がかかると、四人は宿へ向かうのだった。


「追放とはいささか厳しすぎたのでは」


「フン、どうせお前を筆頭に多くの者から嘆願書が来るであろう。それを赦せば民からの支持も上がるというものだ。いずれ知れようがあいつはその時まで罪悪感に苛まれればいい」


「またそのようなことを」


呆れた様子のゴーザだが、その表情は喜色に満ちていた。


今は気ままに旅でもすればいい。故郷ぐらいまもってやる


表情を変えないファラエルが胸の内で呟いたのだった。


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