第3話
ちょい長め
朝食を食べ終わった俺は、家の外に出た。父さんは、、、と。あ、いた。
父さんは庭にある倉庫の前に座って刃をつぶした練習用の剣を洗っていた。
使ってなさ過ぎて埃まみれにでもなってたのだろう。
「食べ終わったよー」
「お、エルディア、結構早かったな。」
父さんはチラリとこっちを見た後、視線を剣に戻し、洗い流した剣の水気を拭きながら言った。
「手伝おうか?」
「いや、もうこいつを拭けば終わるから、準備運動でもして待っててくれ。
「ん、分かった」
準備運動っつってもな。何したらいいのか。
取りあえず俺は家の横の空き地になってるスペースに出て、屈伸して膝を曲げ伸ばししたり、軽く柔軟したりすることにした。
俺は割と毎日寝る前に柔軟する習慣があるからか、体はそれなりに柔らかいと自負している。
少なくとも、この目の前で嬉々として剣を拭いている父親よりは柔らかいだろう、なんて、立ったまま手を地面にぺたりとくっつけながら考える。
「よし、これで完璧。」
父さんの方は手入れが終わったらしい。
拭くのに使っていた布を最後にジャバジャバと洗って、キツく絞った後、物干し竿に掛けた。
そのまま2本の剣を持って空き地の方にやってきて、
「お、エルディア、お前意外と体柔らかかったんだな。」
「まあ、毎日夜に柔軟してるからな。」
なんてことを言いながら準備運動を始めた。
屈伸して、軽く跳んで、アキレス腱を伸ばして、あ、俺アキレス腱やってないわ。
俺は手を地面から離して、アキレス腱を伸ばした。
「いてててて」
父さんがの方から変な声がして、父さんの方を見る。なんか呻きながら柔軟をやっている。というか待て。
地面に足を伸ばした状態で体がぺたりと2つ折りになってるんだが。
うせやん、俺より柔らかいんだが。さっきたてたフラグは数分で回収されたらしい。俺ではあんなぺたりとはならないが!?
「いやぁ、久々にやると何気に硬くなったのを実感するなぁ」
なに?それで硬いだって?それじゃあ何か?俺はガッチガチだって言いたいのか?
俺は断じて認めないぞ!?
「さて、準備運動はこのくらいにして、早速始めようか。」
「ん、分かった」
そう言うと、父さんは俺に剣を1本渡してくる。って意外と重、、、ん?重く、ない?
持った感じだと1kg位か?全然片手で持てるな。
「ハッハッハ、意外と軽いだろ?まあ、昔は父さんは双剣使いでな、その時の練習用のを一本ずつ持ってるわけだから、片手剣な分、一般的なロングソードよりは軽いんだよな。一応相手を切ることが目的とされるもんだから、あんま重くならないように設計されてるんだよ。ま、中には15kgとかするのを使う物好きもいたけども。ただ、使っていけば分かるだろうけど、比較的軽いとはいえ、片手剣でもずっと片手で振りっぱなしだと意外と疲れるんだよ。」
「ふーん、そういうもんか?」
「そういうもんだね。ま、やってみれば分かるさ。それじゃあ軽く振ってみるか。」
「おう、分かった。」
父さんがまず剣を振る。それを真似て俺も同じように振っていく。
片手剣の振り方は主に「叩き切る」「突く」「引き切り」「押し切り」の4つがある。
まぁ振り方と言えばそれぞれの名前の通りって事になるわけだが。
叩き切る切り方は、上から下の方へ下ろす感じだ。俺は利き手の右手に持ってるから、右上から左下へ向かって切り下ろす形になる。
突きは2通りあって、脇を開いて、右手を右耳の横まで持ってきて、そこから若干下に向かった突く方法が一つ。もう一つは脇を締めて、肘を軽く曲げて構え、少し上に向かって突く方法である。
引き切りと押し切りは、どっちも鍔迫り合いになった状態からの切り方だ。相手の剣の重心を避けるように剣を滑らせ、引いて、前のめりになったとこを切るのが引き切り、押して切り込んでいくのが押し切りである。
そうしてそれぞれ相当回数、父さんと一緒に素振りし続けること数時間。
一旦休憩とのことで、俺は大量の水をがぶ飲みした。
「流石に疲れたー。もう腕パンパンだわ。」
「普段農具とか使う時とは違う筋肉を使うからね。でも、エルディア、結構筋がいいんじゃないか?もう基本的な形はだいぶできるようになってる。まだまだ自分のモノにしきれてはいないからこれからも練習は必要だろうけれども。」
「ホントかよ。素振りしただけなのにもうヘットヘトだぞ。父さんは息一つ乱れてないじゃないか。」
こう言うところ見ると、現役時代はどれほど凄かったんだろうってやっぱ思うよな。
「ああ、そうか。エルディアはまだステータス判定を受けてないんだったな。」
「ステータス判定?」
「そうそう。冒険者になる人は皆なる前に受けるんだよ。自分の強さがどんなもんなのかってのを把握する為にね。一回判定を受けた後は自分で自由に確認できるようになるから、成長した後もちゃんと強さが確認できる。これで皆自分の身の丈にあった魔物の討伐依頼を受けるんだ。その目安みたいなモノだな。」
「てかそもそもステータスって何なんだ?」
「ふむ、、、」
父さんはそこで1拍おいて、何もない空中を見ながら話し始める。
「ステータスってのは、自分のレベルだとか、能力値、スキルの事を言うんだ。能力値は「魔力」「筋力」「持久力」「速度」「精神力」「物理攻撃耐性」「魔法攻撃耐性」の7つがある。それぞれ順に、魔力量、パワー、スタミナ、最高速度、魔法の出力と発動速度、物理防御力、魔法防御力を数値化したものだね。レベル1だと大体どれも1000くらいが平均だろうか。」
「ふむふむ。」
「スキルってのは、まあ特技とか異能みたいなモノだな。例えば父さんの場合「片手剣術」「速度上昇」「双剣術」「気配察知」「自然治癒」ってとこだな。だから父さんは双剣を使うようになったわけだ。で、このスキルってのは人は生まれながらにして5つ、授かるものらしい。だからエルディアにも、ちゃんとスキルはあるはずだ。ステータスの計測は冒険者が所属する、冒険者協会ってとこの専売特許だからな。そこでまあまあお金は取られるものの、確認しさえすればスキルが使えるようになると思うよ。まあ俺みたいに全部常時発動型だったら使うもなにもないけどな。ハッハッハ」
なかなか複雑な仕様なんだな。
「で、結局それがさっきのとどう繋がるんだよ?」
「ああ、このステータスってのがまた不思議なもんでな。これ、本人が実際に数値とかスキルを目にして自覚するまでは能力値についてもスキルについても、なにも恩恵を受けられないんだよ。」
「何だそれ」
「本当にな。自覚したら突如お菓子な力が使えるようになりました。とか変な話だよな。」
「もしそんな力があれば少なくとも餓死だけははしないで済みそうだな」
むしろ太りそう。
「え?何を言ってるんだい?」
「え?言い出しっぺが?」
閑話休題
「とにかく、進む道は色々あるけども、もしお前が冒険者の道に進むことがあるとするなら、そういうことだ。」
「そのステータスってヤツが父さんの言ってた「大切なものを守る為の力」ってヤツなのか?」
「ま、そうとも言えるし、それだけという訳でもない。」
「煮えきらないな」
「ハッハッハ、そうかも知れないな。ま、この話はまた今度するとしようか。もう十分休めただろうし、そろそろ練習を再開するとしようか。」
それもそうか。
「分かった」
「よし、それじゃあとりあえずさっきの復讐って事で全部の型の素振りを100回ずつ」
「俺が何をしたって言うんだ!!復讐されるような事をした覚えはない!」
「よし、それじゃあとりあえず服従って事で。全部の方の素振りを200回ずつ。」
「酷くなった!?てかとりあえずで服従させられてたまるかぁ!」
「さんびゃ「あ、うわー!やります!やりまーす!」
こうして俺は1kgの鉄の塊を全部合わせて1000回振り続けた。
っす。つむぎんこと綴莉紡だよ。
いやー、柔軟なんて最近全然やってないなー。
前やったのっていつだったっけ?あーダメだ。もう思い出せないわ。
ちな、剣の切り方は西洋の方の中世の頃のショートソードを参考にさせてもらったよー。




