第11話
「エルディア!!」
夕方。俺が庭に出て洗濯物を取り込んでいると、キールが駆け込んできた。
これ、確か前にもこんなことが、、、
「エルディア!大変だ!また、またお前の親父さんが、、、!」
「父さんが!?」
もしかして例のヤツか!?
大丈夫だよな?父さん。
「前と同じとこらへんにいる!前みたいに道のわきに寄せたけど、体中が熱くて!もしかすると医者を呼んだ方がいいかもしれない!」
「と、取りあえず、俺行ってくる!」
「おう!」
体中が熱い
それって、、
『なんでかは分かんない。でも、熱と痛みに苦しそうにしながら、そのまま弱っていっちゃうの。』
父さん、、、!大丈夫だよな?いや、父さんが大丈夫だって言ってたんだ。
大丈夫に決まって、、、!
「父さん!」
5分ほど走り、前とほとんど変わらない場所に父さんが倒れているのを見つけた。
ただ、前は壁にもたれかかっていたのに対して、今度はもたれかかることすらできず、地面に横向きに倒れこんでいた。
「父さん!大丈夫か!?父さん!!」
「、、、」
返事がない。というよりも、意識がないように見える。
凄く苦しそうにハァハァと息を吐く音だけが聞こえる。
「、、ッ!」
俺は父さんを何とか背中に背負いこみ、家まで歩いていく。
すごい熱だ。父さんを背負っている背中がめちゃくちゃ熱い。大丈夫なのか、これ。こんなの、普通の人間がなっていい体温じゃない。
10分ほどかけて歩き続け、なんとか家にまでたどり着いた。
「お父さん!」
ネルアがかけ寄ってくる。
母さんはキールからいろいろと話を聞いているのか、家の前に二人で立っていた。
「父さんは、今は意識がないみたいだ。俺が言ったときにはすでにこんだ状態だったが、キール、お前が見たときはどうだった?」
「俺が見たときも変わらず、今みたいな感じだった。」
「そうか。」
「、、、なあ、大丈夫なのか?なんか、普通の病にしてはあまりにも熱すぎたんだけど、、、」
「分からない。取りあえず、医者を呼んでこないといけない。と、その前に父さんをベッドに寝かせないと。母さん、父さんの部屋の扉をちょっと開けてくれないか?」
「ええ、分かったわ。」
母さんは父さんを心配そうな目で見て、その後すぐに父さんの部屋へと向かった。
俺も母さんに続いて、父さんの部屋へと向かう。
「そ、それなら、俺は医者を呼んでくる!ネルアちゃんはここで待っててくれな!」
「う、うん。」
キールがそう言って駆け出していく音が聞こえた。
父さんの部屋の前につくと、母さんが扉を開けて待っていてくれた。両手が塞がってたから助かった。
「お父さんは大丈夫、、、?」
後ろについてきていたらしいネルアが小さな声で聞いてくる。
「今は分からない。父さんが意識を取り戻すのを待つことしか、、!」
「あなた、、、」
母さんが、ベッドに下した父さんの手に自分の手を重ね合わせて、そうつぶやいた。母さんは普段父さんのことを「お父さん」と呼んでいたが、呼び方が変わっている。やはり、動揺しているのだろうか。
いや、してないわけがないんだ。ネルアの話を聞いて、その直後にこんなことが起きたんだ。動揺するし、怖いに決まってる。
「私が、もっと早くお父さんに夢のことを言ってたら、、、。私が、、!」
「それは違う!」
ネルアが自分を責め始める。
だけど、違う。
「違う、ネルア。お前は悪くない。このことに一番先に気づいていたのは俺だ。俺がもっと早く動けていたら。いや、むしろ、知ってるなら父さんの後をつけるくらいのことはできたはずだ。だからもし責任があるとするなら、何も動かずに大丈夫なんてタカをくくって、後回しにしていた、俺の責任だ。」
「でも、、!」
「それに、父さんにはこのことは事前に話してた。だから、これは絶対ネルアのせいじゃない。」
「、、、うん。」
そうだ、俺がもっと気を回していれば、、!
「エルディア、それも違うわ。今回のことは誰も悪くない。悪いのは、お父さんをこんな風にした、その原因の方よ。お父さんだって注意してたし、あなたやネルアちゃんもできるだけのことはやってた。お母さんももっと早く知ることができていたら、、、いえ、そんなことはもう過ぎたこと。今は、自分を責めるんじゃなくて、お父さんを助けるのが一番よ。」
「、、、それも、そうだな。父さんを助けないことには始まらないよな。」
「ええ。」
「でも、お父さんを助けるって、どうしたらいいの?」
ネルアが母さんに聞く。確かにそうだ。具体的な理由がわからない今の状態じゃ効果的な対応をとることもできない。
「そうね。お父さんがなんでこんな風になっちゃったのかがわからない以上、いろいろ探ってみるしかないわね。キール君がお医者さんを呼びに行ってくれてるのでしょう?なら、私たちは他の方向で探っていくべきだと思うの。そうね、お母さんは魔法にそれなりに詳しいから、魔法の痕跡とかを探ってみるわ。
エルディア、あなたは、お父さんが倒れていたあたりをもう一回見てきてくれないかしら。もしかしたら何か痕跡とかが残されてるかもしれない。
それからネルアちゃんはお医者さんが来るまで、お父さんの看病をしてあげてくれないかしら。おしぼり持ってきて、汗を拭いてあげたりとか。
お願いしていいかしら?」
「うん!」
「ああ、もちろんだ。」
「ありがとう。エルディア、もしかするとその場所にはまだお父さんをこんな風にした人がいるかもしれないし、そういう原因も残ってるかもしれない。危ないかもしれないから、もし危険だと思ったらすぐ戻ってくるのよ。あなたまで同じようになったら、、、」
「大丈夫、分かってるよ。俺まで巻き込まれるつもりはない。」
「そう。ならいいわ。お願いするわね。」
「任せとけ。それじゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい。」
俺とネルアは一緒に父さんの部屋を離れ、ネルアはタオル片手に庭の井戸の方へと向かっていた。
俺は、万が一のためにさやに入った剣を倉庫から持ち出し、剣を片手に、父さんが倒れていた場所へと再び向かっていった。
父さんが倒れていた場所につく。あたりを見渡してみたが、パッと見た感じではやはり何も見つからない。普通にある街に景色の一部だ。さて。
俺は、まず父さんが倒れていたところを見てみる。も、特に何も変わったところはない。
その後もその周辺をいろいろ回り、何も見つからないことに落胆する。
ふと顔を上げると、前の家から、一人のおじさんが出てきた。俺はその人に声をかけてみることにした。
「あの、すみません」
「なんだい?」
「あの、先ほどこの辺に人が倒れていませんでしたか?30代から40代くらいの男性だと思うのですが。」
「うーん、ここに人が?倒れてるとこなんて見てないねぇ。その人がどうかしたのかい?」
「いえ、少しその人について情報を集めているところで、、、それ以外にも、何かこの辺でそういう人を見かけたとかいう情報はありませんか?」
「うーん、ちょっと待ってなさい。今家内に聞いてみるから。おーい!」
「はーい、はいはい、どうしたね?」
中から、その男性の奥さんが出てきた。
「この子が聞きたいことがあるんだとよ。」
「どうしたんだい?」
「あの、この辺で、30代から40代くらいの男性を見かけませんでしたか?」
「うーん、30代くらいの男なんてそこら中にいるからねえ、、この道も小さい通りとはいえ、それなりに人が通るからねぇ、、、でも、そうだね、最後に見たのが3~40分前くらいだったかね。ピシッとした服を着たそのくらいの男が10歳かそこらの男の子としゃべっていたよ。なんかあんまり良い雰囲気じゃなかったから、関わり合いにはなりたくなくてすぐ家に入ってしまったけどね。」
「!!」
「ん?もしかしてその人なのかい?」
小さな男の子!
「はい!おそらくその人だと思います。40分前、、ありがとうございます!助かりました!」
「なに、良いってことよ。」
「おう、見つかると良いな、そのおっさん!」
「あんたも十分におっさんじゃないかい。ハッハッハッ」
おばさんとおじさんが軽口を叩き合いながら、家の中に戻っていった。いい人たちでよかった。
そういえば、おじさん、外出て、俺としゃべってそのまま帰っていったけど、元の目的は果たせたのだろうか?
「あんた!洗濯物取り込んでって言ったじゃないかい!何やってんだい!」
「スマンスマン、忘れとった!」
あ、やっぱり何も目的達成してなかったらしい。
それはそれとして、男の子と喋ってた、か。気を付けるんじゃなかったのかよ、父さん。
俺は唇を強くかみしめながら、軽くうつむいた。
「いや、こうしていても仕方ない。これ以上ない情報が手に入ったわけだし、いったん戻るか。」
俺はそのままくるりと体の向きを変え、家の方へと戻っていく。
父さん、、、絶対、助けるから。
ちーす。つむぎんこと綴莉紡だよ。
最近なんか最近急に寒くなってきたな―。
ちょっと前に一日の寒暖差が―とか言った気がするけどもうずっと寒いわ。雨なんか降ろうもんならガクガク震えながら家に帰ることになるレベルで。そろそろ厚めの長袖に代えるかなー。




