第10話
良いにおいがする。
おいしそうなにおいに誘われて、俺は目を覚ました。
もう朝か。昨日と一昨日はめちゃくちゃ運動したからか、今日はいつもより起きるのがだいぶ遅くなってしまったらしい。ただ、たくさん寝た分疲れはだいぶとれたようで、体は軽い。
庭に出て顔を洗い、軽く歯を磨いてダイニングへと向かう。
机には朝食のパンやらスープやらが並んでいた。
「おはよう」
「おはよう」
ネルアはまだ寝ているらしい。
「父さんはもう仕事に出たのか?」
「ええ、もうだいぶ前に出て行ったわ」
昨日の話、どうしたものかな。やはり心配だ。
「エルディア、食べないの?スープ冷めちゃうわよ」
おっと、ぼーっとしてしまっていたらしい。
「ああ、いや、食べるよ。いただき美味しいなコレ」
「まだ食べてないのに何言ってるのよ~」
俺はパンを手に取っただけである。
今度こそ俺はパンをかじり、
「いただき美味しいなコレ」
「何も塗ってないパンだけどおいしいのかしら?」
特に何も味がしなかった。
閑話休題
「ふー、ご馳走様でした。」
「は~い。お皿はあとでネルアちゃんのと一緒に洗うからそこにつけておいてくれるかしら?」
「了解」
「あ、あとネルアちゃん起こしてきてくれないかしら~」
「分かった」
俺はネルアの部屋に向かっていってノックする。
「ネルア―、朝だぞー、起きてるか―?」
「う、うぅ~ん、はぁ~ぃ。」
眠そうだな。
「ご飯もうできてるから早く起きて来いよ~」
「は~ぃ、あ、お兄ちゃ~ん、ちょっと待ってぇ、、、」
「ん?どうかしたか?」
「んにゃ、今開けるからちょっと待っててぇ」
少しして扉が開く。眠そうなネルアが立っていた。
「おはよう、相変わらず朝に弱いなぁ」
「うるさいよぅ、お兄ちゃん」
ジト目でにらまれる。かわい。
「それでさ、お兄ちゃん。例のことなんだけどさ。昨日色々考えてみたんだけど、、」
「あー、ネルア、そのことについて一つ俺はお前に謝らなければならないことがある。」
「え?もしかして」
「俺が独断で父さんに一部言った」
「!!」
「ネルアの返事を聞いてからにしようとも思ったんだけども、俺の話の持って生き方が悪かったせいで言わなきゃいけない流れになってしまって、、。」
「許さない」
「ほんとごめん」
「はあ、まぁ良いよ。私もどうせ話すつもりだったし。」
「そうか。ネルアは話すことに決めたんだな。」
「うん。まあお兄ちゃんに約束破られて先言われちゃったわけだけど。」
「ごめんよ、、、」
「「ああ。ゆっくり考えれば、良い。言わないって約束する」って言ってくれてたから信じたんだけどな―」
「本っっっっ当にすみませんでした!」
俺は土下座した。
「ところでなんだけどさ。一部ってどういうこと?」
俺は土下座の姿勢から起き上がりながら答える。
「ああ、予知の話だけして、ネルアがそれを伝えてくれたことを黙ってある。」
「あ、そういうわけね。ま、じゃあお父さんには、お父さんが帰ってきてから説明する。」
「そうか。俺も隣にいて応援してやるから。それで、母さんには朝食べた後にすぐ言うのか?」
「うん。そうするつもり。」
「よし、なら一緒に話すとするか。」
「うん!」
「よし、それじゃ、寝間着から着替えてさっさと食べに来い。もう朝ご飯はすっかり冷めてしまってるかもだけどな」
「分かった!」
その返事を聞いて俺はネルアの部屋を出て、ダイニングの方へと歩いて行った。
さて、どう話したものか。
「ネルア起きたぞー」
「ありがとう。じゃあもう一回スープあっためないとね~」
母さんはそういうとネルア用に用意されていたスープを温め始めた。
それから少しして、ネルアがやってくる。ネルアは俺らと喋りながらご飯を食べ、母さんが皿を洗い終わったタイミングで、母さんに声をかけた。
母さんが席に着く。俺とネルアが隣で、ネルアの向かいに母さんが座る形だ。
「で、ネルアちゃん、話って何かしら?ネルアちゃんからなんて珍しいわね~」
「うん。お母さんとお父さんに今まで黙ってたことを話そうと思って。」
「あらあら、お母さんたちにヒミツにしてたこと?何かしら~?」
「えっと、ね。いつからかは分からないんだけど、私、変な夢を見るの。」
「夢?」
「うん。一年に一回くらいのペースなんだけど、その夢を見ると、その夢で起きたことが現実になるの。」
「それは予知夢、、?みたいなものかしら?」
「多分そう。例えば、お父さんが私の誕生日にぐちゃぐちゃのケーキを持って帰ってきたとき。あれも実は夢で見てたんだ。」
「そうだったの。凄い力じゃない。でも、今まで何も言わなかったのになんで急に話すつもりになったのかしら?もしかして、ちょっと前に見た、『怖い夢』ってやつが関係してるのかしら?」
「うん。そう。私、そういう夢を見たとき、あ、これ起こるんだなって言うのがなんとなくわかるの。」
「なるほどねぇ。それで、その見た夢って言うのはなんだったのかしら?」
「、、、」
ネルアはそこで少し黙ってしまう。
「俺が言おうか?」
「、、いや、私が言う。お兄ちゃんはそこで聞いてて。」
「分かった。」
母さんがこちらをチラリとみる。
『あら、エルディアは知ってたのね?』なんて声が聞こえてくる気がした。
「私が見たのは」
ネルアが言うと母さんが再びネルアの方を向く。
「お父さんが死んじゃう夢。」
「!」
母さんがそれを聞いて固まる。
「そ、それはどういうことかしら?」
「なんでかは分かんない。でも、熱と痛みに苦しそうにしながら、そのまま弱っていっちゃうの。」
「そ、そんなこと、、!そもそも、それがホントに予知夢かどうかなんてわからないじゃない、、!」
いつもはのほほんとした母さんが取り乱している。
「さっきも言ったけど、私には何となく予知夢だって分かるの。今までその感覚が来て外れたことがないの。」
「そう、、、。信じたくはないけど、でも、ネルアちゃんがそんなことを冗談で言うわけないものね。それにエルディアも一緒にいるわけだしね。それで、ネルアちゃんはそれを知ってどうしようと思ったのかしら?私に相談したのは何で?お父さんには言ったの?」
「えっと、、、」
一気に聞かれ、ネルアが混乱してしまっている。仲介に入るか。
「母さん、一旦ストップ。父さんには俺から言った。ネルアも、急にそんな夢を見て混乱してるんだ。でも、父さんを死なせたくない。だから、何かできることがあるんじゃないかって母さんにも相談することにしたんだ。父さんに言ったときにも、警戒するって言ってくれてた。だから、みんなでこの危険を乗り越えなきゃいけない。」
「ええ、そうね。お父さんが死んじゃうなんて、お母さんも絶対に嫌。でも、どうすべきかしら。お父さんは何でそんなことになっちゃうのかしら?」
「それについては俺から。といっても、その直接的な原因かはわからないけど、このことはネルアにも言ってない。昨日の夜父さんに聞いた話だ。でも、父さんはこれを知らないでいて欲しいって言ってた。多分、危険そうだし、首をわざわざ突っ込んでほしくないって理由だろうけれど。」
そう前置きをして、昨日の夜の話をそのまま二人に伝えた。ネルアは父さんが倒れてたことを知らなかったから、ずいぶん驚いていたけど、母さんは難しい顔をして聞いていた。何か心当たりでもあるんだろうか?
「母さん、何か心当たりがあるのか?」
「いえ、、お父さんはその知り合いが誰か言っていたかしら?」
「いや、知り合い、とだけ。」
「そう、、」
確かに、誰だろう?知り合いという言い方だったから俺は知らないのかと思ってスルーしていたが、もしかして会ったことある人なのだろうか?
「分かったわ。とにかく、お父さんが帰ってきたらしっかり話し合うことにしましょう。」
「ああ。」
「うん、分かった。」
「ネルアちゃん、エルディア、教えてくれてありがとう。」
「みんなで力を合わせれば、何とかできる、よな。」
「ええ、きっと。」
そうして、俺らはいったん、父さんが帰ってくるのを待つって方向に落ち着いた。
しかし、直接的な原因がはっきりしないせいでどうしようもないんだよな、金曜の例の男の子ってのが原因って決まったわけじゃないから、話が面倒くさいことこの上ない。これで新種の病とかだったら手の打ちようがない。
今はその男の子が原因と考えるしかなさそうだ。
それでも、これから話し合って考えればなんとかなる。その時の俺達はそう考えていた。しかしすでに一歩遅かった。物語は、俺たちの知らぬところですでに動き出していたのだった。
うっす。つむぎんこと綴莉紡だよ。
んー。予定では10話でエルディアのたんじょーびが来るはずだったのにおかしいな。
この話長めにとることも考えたんだけどな。でも長めにとっても終わらなそうだったからやめたわ。
てなわけで、この物語、言うなればたんじょーびまでは前日譚。よくある転生モノなら事故って死んで転生して、「あれ?ここどこだ?」ってなるところに当たるワケ。
ま、普通の話よりも前置きがちょっと長くなるけど、あと少しだけついてきてくれなー。




