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第15話 オモインは、エロいん。

俺は風呂でとにかく入念に身体を洗い流した。細胞の隙間にまで染み込んだ聖女の残り香(呪い)を消し去るために。


そして風呂から出た後は、幼馴染による麻薬探知犬も真っ青の入念な匂いチェックを受け……ようやく、それについて説明する権利を獲得したのだった——


包み隠さず放課後に起こった事の顛末を説明し、全てを聞き終えた耀は、どこか納得しきっていない顔で俺のベッドの上にぺたんと座り、両頬をハムスターばりにぷっくりと膨らませている。


「む〜〜……まあさ。護の言ってる事はわかったし、仕方なかったってのはわかったよ。百合園さんがそんな感じになっちゃったのは確かにウチらのせいでもあるしさ、護が身体張って守ったのはすごい事だよね」


……よかった、わかってくれて……。

俺が安堵の息を吐きかけた、その時だった。


「で・も・さ!!——」


ベッドの上で向かい合って座る俺に向けて、耀がズイッと身体を寄せて不機嫌に眉をひそめた。


「でも!そんなに匂いが付くまで長く密着しなくても良くない!?いや、てか密着すんなし!」

「……だからそれは、俺のせいじゃ……」

「護がそっと身体逸らしたりすればよかったじゃん!」

「いやっ……あんまりにも急だったから……」


実際あんな事が起こるとは予測不可能だったし、あの状況で恐怖に震える彼女を慰める必要があったのも事実なのだが。

まあ、耀の理不尽な思考にはそんな正論は一切通用しないのも事実。

目の前の国民的オモインは、ものすごく不満タラタラな顔で俺を睨みつけている。


「ぶぅ……そんなに匂いが付くまで百合園さんとくっついたんなら、絶対おっぱいとかも密着してたでしょ!?」

「えと、それは……」


脳裏にあのシーンがフラッシュバックする。深月さんの、耀を超えるであろう圧倒的な質量ともっちりした感触……。


うん。とは流石に言えない。

しかし、その黙秘権の行使も結局、肯定の答えになってしまうわけで。


「あ゛っ!ああっ!!その反応……やっぱだ!うわぁぁ!?護が別の女のおっぱいを味わいやがったんだが?!マぁ!?」

「別の女ってお前言い方!?深月さんは一応、味方なんだぞ?!」


お口わるわるな清楚女優は、勢いよく俺に詰め寄ってきて。


「そうやって鼻の下伸ばして、そんで気がつけばウチの事なんてどうでも良くなったりするんだ!絶対そうだ、それしかあり得ないんだっ!もうウチは過去の女なんだぁ!!」

「過去の女?!どういうコト……お前なに言ってんの?てかおい!勝手に自己完結して凹まないでくれって!そんな事、絶対ないから!!」


感情ぐちゃぐちゃのまま、耀は俺のベッドの上の枕を抱きしめ、それをベッドに叩き付けるという謎の行動をしてから、次の言葉を飛ばしてくる。


「もうウチ怒ったかんね!護、今日はお仕置きだから!!」

「は?……お仕置きってなんだよ!?」

「今日はウチと寝るの!いい?わかった!?護に拒否権ないから!!」

「一緒に寝るって……マジか……」

「マジだよっ!護が浮気したんだから文句言わない!!」


ここで断れば、さらに状況が悪化するのは目に見えている。

これはもう、従うほか無い。彼女のメンケアと俺自身の平穏の為にも。


まあ、一応お互いの関係性という大事な線引きだけはしておこう。


「浮気って……その言い方は……俺たちそういう関係じゃ——」

「幼馴染でも浮気は浮気なの!!護はウチ以外の女と親密になっちゃダメ!!」

「おい……お前ガチでそれ言ってる……?」


なかなかに異常な束縛力。初代オモインの名は伊達じゃない。

まあ、今はメンタル的に不安定になっているだけで、一部には誇張が含まれているものと思いたい。


俺にも……一応、人並みの青春を謳歌する権利はあるんだから。

まあ、それを全て投げ打ってでも耀のキャリアを守ってやりたいと思ったから、今回の事を計画したのは確かなのだが。


そんな俺の言い分はお構いなしに、耀は急にベッドから立ち上がり、せわしなく隣の自分の部屋へ続く窓間に梯子を渡し始める。


「護は寝る準備してちょっと待ってて!ウチも寝る準備してくるから!」

「おいっ、寝る準備って!?どこ行くんだよ!?耀!?」


するすると慣れた手つきで自分の部屋に帰っていった耀。


そして待つこと五分ほど——いそいそと、どこか恥じらうように俺の部屋に戻ってきた耀の姿を見て、俺は完全に言葉を失った——



「……おい……耀、その格好……」

「なによ、暑い日はいつもこれで寝てるもん!」


目の前の耀の格好は、いつもの触り心地の良いフワフワなルームウェアではなく、身体のラインがはっきりと浮き出る薄手の白いTシャツに、太ももの付け根ギリギリまで露出した短いドルフィンパンツというあまりにもエッチぃ格好だったのだ。


そして極めつけは、いつもと同じ『ノーブラ』であり、ということはその……薄いTシャツ越しの柔らかな双丘の先に小さな突起が、くっきりと……なんでもない。


「護も、もう寝れるよね?」

「まあ……寝れるっちゃ寝れるけど……」


耀は少し顔を赤らめ上目遣いで俺を見てきた。

多分、自分でもこの格好がどれだけヤバいか自覚していて恥ずかしいのだろう。


「じゃあベッドに入って横になって!」

「おいっ?!急にそんな怒んなって!?」

「早くっ!寝るんだから横になって!」


照れ隠しなのか、まるで小さい子の我儘のように俺を強引に横にしようとする耀に、俺はタジタジになりながら従ってゆく。


「わかった、わかったよ耀!横になるから!」


渋々ベッドに仰向けになると、耀は慣れた手つきで俺の部屋の電気を消しに行き、ベッドの上に戻ってくる。


そして、おもむろにその短いドルフィンパンツに手を掛け、サラッと脱ぎ捨てた。


微かに窓から漏れる月明かりに照らされた、耀の純白の……布面積の少ない下半身に、俺は思わず悲鳴のような声を上げてしまった。


「ひっ、耀?!おまっ、なにしてんのガチで!?」

「ちょっ、バカ!こっちあんま見ないでっ……護は寝てて!」


……こんな状況で、見れるかバカ……。


俺は慌てて顔を逸らし、ぎゅっと目を瞑る。

しかし、既に俺の全身は血液が沸騰したように熱くなってしまっているのも事実。


「よいしょ……失礼するぞ〜」


暗闇の中で布団がめくられ、俺の隣のスペースに耀が滑り込んでくる感覚がした。

すると、鼻先をいつもとは違う、どこか色気のある甘くて優しい香りが掠めてくる。


「耀……この香り……」

「えへへっ、気づいた?香水つけてきたんだよ、いい匂いでしょ?」

「ああ、まあ……そうだな」


動悸が激しすぎて心臓が爆発しそうだ。

いつもの香りをさらに官能的にグレードアップしたようなその香りに、俺は必死に禅の心へと移行しようと試みた。そうしなければマズい。

そして、至近距離にいる耀から告げられたイカれた言葉。


「じゃあ、今から護の雌臭をウチの匂いで上書きしてあげるから、動いちゃダメだよ?」

「ん?上書き……えっ上書きって耀、ちょっ、あぁっ!!う゛っ……」


仰向けに寝る俺の半身に、覆い被さるようにしてぴったりと密着してきた耀。

ダイレクトに伝わる滑らかな素肌の感触。耳を撫でる甘い吐息。脳を溶かすいい匂い。そしてTシャツ越しに押し付けられる……マシュマロおっぱいの感触。


……これは……よくない……。


「護はウチのなんだから、ちゃんとマーキングしとかないと……全く油断も隙もないんだが?」


そんな小言を言いながら、せっせと俺の身体に自分の身体をこすりつけてくる。

……猫か何かかコイツ。


そして、彼女のすべすべとした柔らかな太ももが、俺の……最も敏感で大事なところの周辺をいったり来たりと擦れるように動いていて……。


「・・・・・・」


……あ、ああっ……イケませんよこれ。耀さん……非常にイケませんよ……。


俺は既に言葉を絶たれ、呼吸のコントロールを失いそうになり、全身の血液が抗いようもなく『とある場所』へと集中していくのを感じていた。


そんな極限状態の俺の耳元に、甘く鼓膜を揺らす声が響く。


「どう?ウチの太もも、すべすべで気持ちいいでしょ?」


流石は天才女優。その妖艶な声色も完璧だ。


……コイツはバカなのか?こんな事して……普通の男ならとっくに理性のタガが外れて押し倒してるぞ?!

なんて必死にクールな幼馴染を気取ってみるも、俺も健全な男子高校生で——


「あっ……なんか当たったんだが?……まっ、護……これ……♡」


「・・・・・・・・・」


「……護??」


何も言うまい。俺は全てを放棄し死んだように寝たフリをした。

耀の素肌の太ももは、俺の意志に反して若干元気になってしまった『それ』の存在に確実に気づいているようだ。

すると、耳元で控えめに、少しだけ残念そうな、それでいてどこか嬉しそうな声が。


「ぶぅ〜……寝ちゃったの?ま〜もるっ?……じゃあコレは、無意識なのかな??」


そんなはずないだろ。

強引に寝たふりをしなければ、俺の理性がもう限界だったんだ。


というか、完全にバレているこの状況でまともに会話なんてできるわけがない。

もし話せば、その先を越える展開が待っていそうで。

それだけは……絶対にダメなんだ。

彼女の女優としての未来を守る為にも、俺の『サポーター』という立場を維持する為にも、絶対に越えてはならない一線。


「えへへっ……なぁんだ、ちゃんとウチで反応するんじゃん……よかったぁ」


なにがよかったのだろうか。

そう言って耀は安堵したように俺の首筋に顔を埋め、ぎゅっと抱きついてくる。

地獄の拷問のような、それでいて天国のように幸せな時間は、その後もしばらく続いた。


そして、俺はずっと寝付くことができないまま……必死に寝たフリを続け、朝方までしっかり『男限定の極刑』を受け続けたのだった——



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