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公爵家を勘当された僕は薬屋ソルシエールで働きます  作者: 雪下月華


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再会を願って



 魔物との戦いから数日が経ち、僕たちは《黄金の麦穂亭》を訪れていた。


 店内は今日も多くのお客さんで賑わっており、厨房からは食欲をそそる料理の香りが漂ってくる。


 僕はギルさんたちと奥のテーブル席につき、運ばれてきた料理を囲んでいた。


 「いやぁ、それにしても無事に帰ってこられてよかったぜ!」


 カイルさんが肉料理を頬張りながら、満足そうに笑った。


 「まったくだ。あのときはさすがに肝を冷やしたからな」


 ガルドさんも苦笑しながら頷く。


 「でも、みんな無事で本当によかったです」


 僕がそう言うと、ミレイユさんが優しく微笑んだ。


 「そうね。ルークがマナポーションを届けてくれたおかげよ。本当にありがとう」


 「い、いえ! 僕も皆さんに助けてもらいましたから……」


 「ふふっ、お互い様ね」


 ミレイユさんの言葉に、僕も小さく笑った。


 「それにしても、今回の調査は予想以上に厄介だったな」


 「ええ。でも、魔物が増えていた原因が分かっただけでも収穫だったんじゃない?」


 リナさんの言葉に、僕は思わず顔を上げた。


 「えっ? 原因が分かったんですか?」


 「ああ。そういえば、ルークにはまだ詳しく話していなかったな。今回の調査の結果、あの地域で瘴気が異常に濃くなっていたんだ。おそらくそれが魔物の増加につながっていた」


 「瘴気……?」


 「瘴気というのは、魔物に影響を及ぼす有害な魔力のようなものだ」


 「瘴気が濃くなると、魔物が集まってきたり、凶暴になったりするんだ」


 カイルさんは手にしていたグラスを傾けると、一口飲んでから話を続ける。


 「今回みたいに大量の魔物が押し寄せてくることもあるからな。まったく、勘弁してほしいぜ」


  そう言って、やれやれと肩をすくめた。


 「漏れ出していた瘴気はひとまず封じておいたわ。でも、これで安心というわけにはいかないの」


 ミレイユさんは食事の手を止め、少し表情を曇らせた。


 「どうしてですか?」


 「魔法で抑えているだけだから、いつまで持つか分からないの。それに、瘴気が漏れ出していた原因も、まだ分かっていないわ」


 「そうなんですか……」


 「ああ。それに、瘴気が漏れ出している場所が、あそこだけとは限らないからな。ほかの地域でも同じようなことが起きている可能性がある」


 ギルさんが難しい表情で言葉を継いだ。


 「そうなると、また魔物が増えるかもしれないってことか」


 ガルドさんが腕を組んだ。


 「ああ。だからこそ、ギルドにも早急に報告する必要がある」


 ギルさんはそう言うと、僕に視線を向けた。


 「それで、俺たちは明日、首都へ戻ることにした」


 「えっ、もう帰っちゃうんですか?」


 「ああ。今回の調査結果をギルドに報告しなければならないからな」


 せっかく仲良くなれたのに、もうお別れだと思うと少し寂しい。


 そんな僕の様子に気づいたのか、カイルさんが笑いながら声を掛けてきた。


 「そんな寂しそうな顔するなって! また会う機会もあるだろ?」


 「そ、そうですよね」


 「そうそう。またこっちに来ることもあるだろうし、そのときはソルシエールにも顔を出すからね」


 「はい! ぜひ来てください!」


 さっきまで落ち込んでいた僕が急に元気になったのがおかしかったのか、リナさんたちは思わず笑い出す。


 「も、もう! 笑わないでくださいよ!」


 少し恥ずかしくなって頬を膨らませると、ミレイユさんも一緒になってくすくすと笑っていた。




 「――そうだ、ルーク」


 和やかな雰囲気の中、不意に声を掛けてきたギルさんは、先ほどまでの笑みはなく、真剣な表情で僕を見つめていた。


 「これは俺たち冒険者としての助言なんだが、あの山にはしばらく近づかない方がいい。一時的に瘴気は抑えているが、何が起こるか分からない。それに、ソルシエールは街外れにある。もし魔物が現れたり、何か異変が起きたりしたら、無理をせずにすぐ避難するんだぞ」


 「はい。気をつけます」


 ギルさんの言葉に、僕も自然と背筋が伸びる。


 「俺たちはマケドニア共和国の首都アルヴェインを拠点に活動している。もし、何か困ったことがあったら、遠慮なく俺たちを頼ってくれ」


 「ありがとうございます。そのときはよろしくお願いします」


 僕がそう答えると、ギルさんは安心したように頷いた。



 首都アルヴェインか……。


 いったい、どんな街なんだろう。


 いつか機会があれば、僕も行ってみたいな。



 それからギルさんたちに冒険者の仕事やギルドについて色々話を聞いていると、あっという間に時間が過ぎ、気づけばテーブルの料理もすっかりなくなっていた。


 僕たちは席を立ち、店の外へ出た頃には、夕暮れの空が街並みを赤く染めていた。



 「それじゃあ、ルーク。またな!」


 「はい! 皆さんもお元気で!」


 僕がそう答えると、ギルさんたちは笑顔で手を振ってくれた。


 「本当にありがとうございました!」


 最後にもう一度お礼を伝え、僕は《黄金の麦穂亭》を後にした。



 


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