第9章 亡霊の容貌
「ロン……チェン……チェン……」
その名は、ほぼコルヴォスの奥歯の隙間から死に物狂いで絞り出されたものだった。冷たく、激しく震え、彼自身すら気づいていないほどの恐れと驚愕が混じり合っている。
上海の地下深淵で灰燼に帰したはずの、自らの手で黒紅の刃をその心臓に突き立て、再生コアを完全に破壊したはずの高階擬態魔物——それが今、寸分違わぬ顔を掲げ、「見捨てられし深淵」の揺らめく火光の中に怯えた様子で立ち、彼と遥かに対峙していた。
「ギャアアッ——!」
クロードがコルヴォスのトレンチコートの襟元から飛び出し、全身の漆黒の羽を逆立てて、刺さるような鋭い悲鳴を連発させた。カラスの瞳は少女を死に物狂いで見つめている。まるでその華奢に見える躯体の下に、使い魔にしか感じ取れない恐ろしい異物が渦巻いているかのように。
「そんなはずはない……」
コルヴォスは呟いた。彼は強がって立ち上がろうとしたが、傷口の激痛に呻き声を上げ、再び無様に膝をついて倒れ込んだ。
「俺は確かにこの目で見届けたんだ……お前のコアが魔燼となって灰になるのを……お前は一体……どんなバケモノなんだ?」
少女は彼の激しい反応に怯えて華奢な体を震わせ、慌てて後ろへ半歩下がり、隣に立つ両腕を失った老人の背後に身を縮めた。そして蚊の泣くような細い声で囁いた。
「あ……あなた、私の知人なのですか? 私は数日前、あの研究機関の地下三階から逃げ出してきたばかりで……無休止の残酷な実験に耐えかねて、全身傷だらけのところを皆さんに拾っていただいたのです……ロン・チェンチェンなんて人が誰なのか分かりませんし、何も覚えていないのです。」
彼女は怯えた様子で言葉を補い、両目を真っ赤にして、目尻に涙をいっぱいに溜めた。
「あなたの顔、とても怖いです……私、何か……悪いことでもしてしまいましたか?」
コルヴォスは記憶にある顔と何一つ変わらないその顔を死んだような目で見つめ、右目の水晶の義眼を狂ったように回転させて、ほんの僅かな魔力の残渣の波動でも捕らえようとした——しかし、何も得られなかった。
綺麗だ。毛骨が生えるほどに無垢だった。
目の前にいる者は、かつて無数の血肉を喰らい尽くした高階魔物の気配など微塵も纏っておらず、かえって心底怯えきった、脆く儚い無辜の少女のようだった。
傍らのスカベンジャーは、コルヴォスと少女の間で視線を何度も往復させ、鼻柱を横切る傷痕を微かにヒクつかせた。彼は声を低く落とし、隣のコルヴォスにだけ聞こえるように囁いた。
「探偵さん、あんたの顔色を見るに……あの子を知ってるのか?」
コルヴォスは答えず、ただその無垢で怯えた瞳を死んだように見つめ続けていた。胸の中で心臓が狂ったように鐘を打つ——これは彼の手で処刑されたバケモノが皮を被り直した姿なのか、それともこの躯体の下に、全く異なる別の魂が眠っているのだろうか?
まさにその時、周囲の揺らめく火光が急に暗転した。
炎が消えたからではない。あたかも恐怖をもたらす極高の熱によって瞬時に奪い去られたかのようだった——狭い坑道の奥深くの空気には異様な底冷えする寒気が立ち込め、スカベンジャーの背後にある萎縮した黒い骨翼すらも、不安げに激しく震え始めた。
「あらあら……どうやら私、お邪魔するタイミングを間違えてしまったかしら?」
聞き覚えのある、怠惰で嘲笑を含んだ声が、何の前触れもなく全員の頭上から降ってきた——柔らかく、セクシーでありながら、氷水に浸した生の絹のように冷たい声。
全員が本能的に見上げた。
アンバー・パンセラが、下水道の破損した天井の縁に逆さ吊りになっていた。錆びついた鋼管を片手で掴み、暗金色の長髪が垂れ下がって、昏い火光の中で危険な金属の光沢を反射させている。
彼女のヒョウの形態と化した後脚は軽やかに丸められ、黒い猫の瞳は見下ろすように、興味津々で「見捨てられし深淵」の全貌を眺めていた——身を寄せ合う残骸のような住民たち、壁際に崩れ落ちているコルヴォス、そして老人の背後に隠れる少女。
「こういう場面って、久しぶりの再会って言うべきかしら? それとも……永遠の別れと言うべきかしらね、探偵さん?」
アンバーは思わせぶりに赤い唇を開閉させ、舌先で軽く歯列を舐めた。まるでこの言葉がもたらす悪趣味な愉悦をじっくりと噛み締めているかのように。
言い終わらないうちに、彼女の姿は一筋の音もない金色の流光となって天井から躍り下り、コルヴォスの正面から五歩も離れていない場所に着地した!
「トッ……」
ヒョウの後脚の筋肉が一瞬で緊張し、いつでも空間を切り裂くほどの超絶的な速度を爆発させられる状態になった。
「なぜお前が……」
コルヴォスの顔は紙のように蒼白になり、傷口から込み上げる刺すような劇痛を必死で耐えたが、再び片膝をつくことしかできなかった。
彼の心の中に強い寒気が広がった——地上にあるあの下水道は、複雑怪奇な迷宮のようであり予想を遥かに超えていたはずだ。アンバーは血生臭さだけを頼りに追跡してきただけでなく、駆魔公安すら知らされていない中立の地下深淵にまで正確に侵入してきたのだ。
「まあまあ、そんな幽霊でも見たような顔をしないでちょうだい。」
アンバーは人差し指で軽く自分の顎を持ち上げ、猫の瞳の中の笑みをいよいよ濃くした。
「こんなドブに隠れれば、本お嬢様の鼻がバカになるとでも思っていたの? 探偵さん、私を買いかぶりすぎよ。」
彼女の視線は周囲で身を縮めさせる住民たちを適当に見渡し、その口調には隠そうともしない嫌悪感が漂っていた。
「でも本当に……ここは吐き気がするほど臭いわね。実験の失敗作に、生きる屍、いろんな腐敗した甘ったるい悪臭が混ざり合っていて、ここまで追ってくるのに本当に一苦労させられたわ。」
スカベンジャーはさりげなく前へ半歩踏み出し、コルヴォスと住民たちを背後に庇った。暗の瞳には野獣のような凶暴な光が閃いている。
「ここは『見捨てられし深淵』だ。部外者は歓迎しない。ここで手を出すなら覚悟しておけ、敵に回すのは彼一人だけじゃないぞ。」
「ふーん?」
アンバーは眉をひそめ、唇の端に残酷で愉快な弧を描いた。まるで大きな笑い話でも聞いたかのように。
「立ち上がることもままならないその出来損ないどもで、私と『対抗』する気かしら?」
彼女は親指の付け根に残る乾ききっていない血跡を無頓着に舐めた——それは先ほどコルヴォスから残された痕跡だった。
「でもあなたの言う通りよ。今日の私の目的は、あなたたちのようなゴミ屑ではないわ。」
彼女の視線は再びコルヴォスにロックオンされ、猫の瞳は危険な隙間へと細められた。
「上の連中から速戦即決の絶対命令が出ているの——情緒のない依頼は好きじゃないけれど、仕事は仕事だからね。」
彼女はゆっくりと右手を掲げ、指先の鋭い爪が冷酷な寒芒を放った。
まさにその瞬間、彼女の余光が無造作に老人の背後に隠れていた少女を捉え、動きがピタリと凍りついた。
「えっ?」
アンバーの表情に、滅多に見られない亀裂が走った。戯れの笑みが不気味に顔の上で固まった。彼女はその顔を凝視し、瞳孔が急速に収縮した。声には初めて隠しきれない驚愕が滲み出ていた。
「ロン・チェンチェン? どうしてあなたが……」
「いや……私をあんな場所へ連れ戻さないで!」
少女は突然、悲痛で絶望に満ちた叫び声を上げた。悲痛で引き裂かれるような絶望を宿して。
彼女は爪が剥がれて血が滲むほど力任せに、粗末な壁の隙間を死に物狂いで掴んだ。
あの研究機関は、彼女にとって永遠の悪夢だった。冷たい薬品、刺さるような鋼の針、そして終わりのない解体と再構築。
こんな場所で魂が消滅しようとも、人間性を喰らい尽くすあの地獄へ戻るくらいなら、死んだほうがマシだった。
しかし、普段は深謀遠慮で無数の計算をめぐらせる女が、今や怯えた小動物のように震え上がり、涙を流している様子を見て、アンバーは一瞬呆然とした後、まるでこの世で最も荒唐無稽な笑い話を聞いたかのように、頭を仰ぎ切って大笑いし始めた。
「クックック……ハハハハハッ! 一体何の寸劇をやっているのよ!?」
アンバーは太ももを叩きながら笑った。その笑い声は空洞な地下坑道に響き渡り、この上なく耳障りで皮肉に満ちていた。
彼女は笑いを収めると、一歩前へ踏み出し、上から見下ろすようにロン・チェンチェンの顎を強く掴み上げ、強制的に自分を疑い深げな視線と合わせさせた。
「ロン・チェンチェン、あなた一体どんな企みを企てているの? 急に世間知らずの純粋な少女のフリをしちゃって? 普段のあの躊躇なく人を殺す冷酷さはどこへ行ったのよ? 獲物を騙す演技が得意だって噂には聞いていたけれど、この演技はちょっと真に迫りすぎじゃない? 情報員の私ですら騙されそうになったわ!」
ロン・チェンチェンは彼女の指を力任せに振り払い、涙が目から溢れ出た。瞳の奥には刻まれた恐怖だけが残されていた。
アンバーには到底理解できないし、永久に知る由もないだろう——「研究機関」という四つの言葉が、彼女にとってどれほど深淵のような絶望を意味しているのかを。




