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第5話
昼休み、七海に手を引かれて、私は購買へ向かった。廊下の角を曲がったところで、前から二人組が歩いてきて、私は思わず足を止める。桜井くんと、その友達の蓮くんだった。
蓮くんは桜井くんといつも一緒にいる男子で、口数は少ないけれど、よく人を見ているという噂だった。すれ違いざま、桜井くんが「あ」と小さく声をあげて、私のほうを見た。
「この前の、電車の。だいじょうぶだった?」
まさか覚えられているなんて思わなくて、頭が真っ白になる。は、はい、と裏返った声が出て、私はそのまま逃げるように歩き出してしまった。背中のほうで、七海が「今の、何?」と目を丸くしているのがわかる。
少し離れてから振り返ると、蓮くんがこちらをじっと見ていて、それから桜井くんに何かを耳打ちした。桜井くんが、照れたように笑う。その意味は、私にはわからない。ただ、心臓だけが、まだうるさく鳴り続けていた。
七海が私の腕をつついて、にやりと笑った。「詩織、あんた、なんか面白いことになってない?」




