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第1話
私の朝は、いつも同じだ。六時半に目覚ましが鳴って、まだ眠い目をこすりながら制服に着替える。鏡の前で前髪を直してみても、そこに映っているのは、結局いつもどおりの自分でしかない。葉山詩織、高校二年生。クラスでは目立たない、教室のうしろのほうの席にいる、ただの女の子だ。
家を出て、駅までの道を歩く。改札を抜けて、毎朝決まった時間の電車に乗りこむ。朝の車内はいつもぎゅうぎゅうで、誰かの肩と誰かの鞄のあいだに、私はそっと自分の居場所を見つける。イヤホンから流れてくる音楽だけが、ざわめく世界から私を少しだけ守ってくれているような気がした。
窓の外を、朝の光がゆっくりと流れていく。その光をぼんやり眺めながら、今日もきっと何も起こらないんだろうな、と思う。誰かと話すこともなく、誰かに気づかれることもなく、ただ静かに一日が終わっていく。それでいいと、私はずっと思っていたはずだった。
電車が大きなカーブにさしかかったとき、突然、急ブレーキの音が車内に響いた。体がぐらりと前へ投げ出される。とっさに掴まるものもなくて、私は声をあげることもできないまま、前のめりに倒れ込んでいった。




