第99話 悪役なら王都の危機を放置する
王城地下。
仮面の男が消えた後。
残された黒い魔石。
そして。
『次は王都全体だ』
その言葉だけが残っていた。
「……。」
面倒だ。
俺は静かにため息を吐く。
「帰る。」
王女が目を丸くする。
「え?」
「もう調査は終わった。」
「ですが。」
「黒幕は逃げた。」
「なら追う必要があるのでは?」
「ない。」
即答。
「王都全体を狙うと言っていたんですよ?」
「脅しの可能性もある。」
セレナが腕を組む。
「……。」
「確かに可能性はあります。」
「ですが。」
「あなたは。」
「本当に放置するつもりですか?」
「……。」
沈黙。
悪役なら。
放置する。
関係ないと言う。
そうするべきだ。
しかし。
頭に浮かぶ。
王都の人々。
学院の仲間。
北部の村。
「……。」
俺は立ち上がる。
「調べる。」
王女が微笑む。
「ありがとうございます。」
「勘違いするな。」
「?」
「面倒になる前に片付けるだけだ。」
「はい。」
翌日。
王城では緊急会議が開かれた。
騎士団。
魔法省。
王族。
そして。
俺。
「敵の目的は不明。」
クラウス隊長が説明する。
「しかし。」
「王都各地で魔力異常が確認されています。」
「……。」
地図を見る。
赤い印。
複数。
「魔法陣か。」
俺が呟く。
「おそらく。」
魔法研究員が答える。
「古代式の大規模魔法陣です。」
「完成すれば。」
「王都全域に影響する可能性があります。」
貴族たちがざわめく。
「止められるのか?」
「分かりません。」
その時。
一人の貴族が言った。
「ならば。」
「男爵に任せればいいのでは?」
「……。」
視線が集まる。
嫌な予感。
「断る。」
即答。
「なぜです!」
貴族が驚く。
「あなたほどの力があるなら!」
「面倒だからだ。」
「……。」
会議室が静まる。
しかし。
クラウス隊長は笑った。
「だが。」
「彼は行くでしょう。」
「?」
俺を見る。
「違いますか?」
「……。」
なぜ分かる。
「王都には。」
「君が大切にしている者がいる。」
「……。」
「違う。」
即答。
だが。
誰も信じていなかった。
その時。
「報告!」
騎士が飛び込んでくる。
「東地区で魔力爆発!」
「巨大な魔法陣が起動しました!」
会議室が騒然となる。
「始まったか。」
クラウスが剣を抜く。
王女も立ち上がる。
「行きましょう。」
「……。」
俺は窓の外を見る。
王都の空。
黒い光が伸びている。
「……。」
静かな生活。
また遠のいた。
「男爵様。」
セレナが隣に立つ。
「行きますよね。」
「……。」
「分かっている。」
俺は歩き出す。
「ただ。」
「敵は嫌いだ。」
「?」
「静かな時間を奪うからな。」
セレナは少し笑った。
「それが。」
「あなたらしいです。」
王都を覆う黒い魔法陣。
そして。
その中心で。
仮面の男が笑っていた。
「来るか。」
「アルベルト・フォン・グランディア。」
「ならば。」
「君の力。」
「全て見せてもらおう。」
第99話を読んでいただきありがとうございます!
王都全体を巻き込む事件がついに始まりました。
アルベルトは「面倒だから」と言いながら、結局は王都を守るために動き出します。
次回、王都決戦編へ突入します!




