第98話 悪役なら黒幕を挑発する
王城地下。
禁制魔法の資料庫。
黒い魔石から現れた仮面の男。
「我々は。」
「この国を作り変える者だ。」
男は静かに言った。
「古い制度。」
「腐った貴族。」
「力を持たない者を守れない王国。」
「全て変える必要がある。」
「……。」
俺は黙って聞いていた。
すると。
「どうした?」
仮面の男が笑う。
「恐怖で声も出ないか。」
「違う。」
「?」
「長い。」
「……。」
セレナが隣で小さくため息を吐く。
「そこですか。」
「重要だろう。」
悪役なら。
ここで相手の計画を否定する。
嫌われる。
「くだらない計画だ。」
仮面の男の笑みが消える。
「何?」
「国を変える。」
「大きなことを言っているが。」
「やっていることは。」
「魔物を操る。」
「資料を盗む。」
「隠れているだけだ。」
「……。」
空気が変わる。
「君に何が分かる。」
男の魔力が膨れる。
「力を持つ者は。」
「いつもそうだ。」
「自分たちが正しいと思っている。」
「弱者の苦しみなど知らない。」
「……。」
王女が一歩前へ出る。
「あなたがしていることは。」
「人々を苦しめているだけです。」
男は笑う。
「王族に何が分かる。」
「……。」
その瞬間。
俺は前へ出た。
「一つ聞く。」
「?」
「お前。」
「本当に国を変えたいのか。」
「当然だ。」
「なら。」
「なぜ。」
「最初に守るべき人間を傷つける。」
「……。」
「北部の村。」
「魔物で苦しんでいた。」
「お前の研究のせいだ。」
男の表情が揺れる。
「必要な犠牲だ。」
「……。」
その言葉。
嫌いだった。
「なら。」
「お前は失敗だ。」
「なぜ?」
「簡単だ。」
「守る相手を間違えている。」
沈黙。
仮面の男は怒りを露わにする。
「偽善者が!」
「君も同じだろう!」
「力を持って。」
「結局、自分の正義を押し付けているだけだ!」
「……。」
少し考える。
「そうかもしれない。」
セレナが驚く。
「認めるんですか?」
「ああ。」
仮面の男も意外そうにする。
「だが。」
俺は続ける。
「少なくとも。」
「目の前で困っている奴を。」
「実験材料にはしない。」
「……。」
その瞬間。
仮面の男が魔法を放った。
黒い炎。
地下全体を覆う。
「危ない!」
王女が叫ぶ。
しかし。
俺は前へ出る。
「男爵様!」
「大丈夫だ。」
手をかざす。
黒い炎が消える。
「な……。」
「消した?」
「違う。」
「消えただけだ。」
「……。」
男は震える。
「やはり。」
「君の力は。」
「この国にとって危険だ。」
「……。」
俺はため息を吐く。
「面倒だ。」
「何?」
「お前みたいなのがいると。」
「静かに暮らせない。」
魔力を解放する。
その瞬間。
地下の壁が震えた。
「終わりだ。」
しかし。
仮面の男は笑った。
「まだだ。」
「これは。」
「始まりに過ぎない。」
魔法陣が光る。
「次は。」
「王都全体だ。」
「……。」
姿が消える。
残ったのは。
黒い魔石だけ。
セレナが拾う。
「逃げられましたね。」
「ああ。」
王女は不安そうに呟く。
「王都全体……。」
俺は天井を見る。
「……。」
また。
面倒なことになった。
第98話を読んでいただきありがとうございます!
王城地下で黒幕の思想が少し明らかになりました。
単なる悪人ではなく、「国を変える」という目的を持った敵。
しかし、その方法は多くの人を傷つけるものでした。
次回、王都を巻き込む事件が始まります。




