第96話 悪役なら報告会で余計なことを言う
北部の村。
魔物騒動が解決してから数日。
村は少しずつ元の生活を取り戻していた。
「本当にありがとうございました。」
村長が深く頭を下げる。
「男爵様のおかげです。」
「違う。」
俺は即答する。
「俺が魔物を倒しただけだ。」
「それが。」
村長は笑う。
「私たちには救いでした。」
「……。」
まただ。
普通に言っただけなのに。
ミリアも隣で微笑む。
「村の人たち。」
「もう男爵様のことを英雄だと思っています。」
「困る。」
「なぜですか?」
「目立つ。」
「……。」
リリアが笑う。
「まだそこなんですね。」
「当然だ。」
数日後。
俺たちは王都へ戻った。
王城。
報告会。
国王の前。
「北部の件。」
「報告してくれ。」
国王が言う。
俺は簡潔に答える。
「魔物を倒した。」
「終わりだ。」
貴族たちがざわつく。
「それだけ?」
「何があったのだ。」
国王は苦笑する。
「詳しく聞こう。」
「……。」
面倒だ。
しかし。
報告する。
「魔物は自然発生ではなかった。」
「誰かが魔法で誘導していた。」
空気が変わる。
「黒いローブの男。」
「魔物を研究していた。」
「目的は。」
「俺の魔力解析。」
「……。」
騎士団長クラウスの表情が変わる。
「つまり。」
「王国内で魔物を利用する者がいると?」
「ああ。」
ざわめき。
国王も真剣になる。
「その者の目的は。」
「分からない。」
「ただ。」
俺は続ける。
「王国の裏で何か動いていると言っていた。」
沈黙。
その時。
一人の貴族が口を開いた。
「それは。」
「男爵様の勘違いでは?」
「……。」
またか。
王都で会った貴族。
疑っていた男だった。
「証拠はあるのですか?」
「黒幕がいるという。」
「……。」
悪役なら。
ここで怒る。
怒鳴る。
貴族を黙らせる。
だが。
俺は。
「ない。」
即答した。
「……。」
全員が驚く。
「証拠はまだない。」
「なら。」
貴族が言う。
「問題ないのでは?」
その瞬間。
クラウスが口を開いた。
「いや。」
「問題だ。」
「?」
「彼が。」
クラウスは俺を見る。
「証拠がないことを認めた上で報告した。」
「それは。」
「危険を知らせるためだ。」
「……。」
国王も頷く。
「その通りだ。」
「不確かな情報でも。」
「国を守るためなら価値がある。」
「……。」
また。
評価されている。
俺はただ。
面倒事が増える前に言っただけなのに。
その時。
王女が静かに言った。
「父上。」
「?」
「アルベルト様は。」
「自分が評価されることを望んでいません。」
「ですが。」
「だからこそ。」
「信頼できるのだと思います。」
「……。」
貴族たちが黙る。
国王は微笑む。
「なるほど。」
「ならば。」
「正式に調査を命じよう。」
「アルベルト。」
「?」
「君にも協力してもらいたい。」
「……。」
嫌な予感。
「断る。」
即答。
しかし。
国王は笑った。
「そう言うと思った。」
「だが。」
「これは命令ではない。」
「?」
「君自身が選ぶことだ。」
「……。」
その言葉。
少し意外だった。
「分かった。」
俺は答える。
「調べる。」
「ありがとうございます。」
国王は頷く。
そして。
その夜。
王城の地下。
誰にも知られない場所で。
一人の人物が報告を受けていた。
「アルベルト・フォン・グランディア。」
「やはり。」
「計画の障害になるかもしれませんね。」
第96話を読んでいただきありがとうございます!
北部編から王城での報告へ。
魔物騒動の裏にある大きな陰謀の存在が少しずつ見えてきました。
アルベルト本人は相変わらず「面倒だから」という理由で動いていますが、周囲からの信頼はさらに高まっています。
次回、新たな敵の影が動き始めます。




