第93話 悪役なら視察先で嫌われる
王都を出発して三日。
俺たちは北部地方へ到着した。
「寒いですね……。」
馬車の中。
リリアが窓の外を見る。
雪がちらついている。
「王都とは全然違います。」
セレナも外を見る。
「北部は鉱山と農村が中心の地域です。」
「魔物の出現も多い。」
「……。」
俺は地図を見る。
今回の問題。
北部の村々で魔物被害が増えている。
国王は調査を頼んだ。
だが。
悪役なら。
まず現地の人間に嫌われる。
それが基本だ。
「到着したら。」
「厳しく言う。」
リリアが首を傾げる。
「何をですか?」
「甘えるな。」
「自分たちで何とかしろと言う。」
「……。」
セレナがため息を吐いた。
「またですか。」
「?」
「あなたは。」
「嫌われようとしている時ほど。」
「人のためになることを言います。」
「違う。」
「違いません。」
反論できない。
村へ到着。
小さな集落だった。
家は古い。
畑は荒れている。
村人たちが集まる。
「これはこれは。」
「王都からのお客様ですか。」
村長が頭を下げる。
「国から派遣された男爵様ですね。」
「ああ。」
俺は周囲を見る。
建物。
防壁。
武器。
全部足りない。
「酷いな。」
村人たちがざわつく。
「え?」
「こんな場所で。」
「よく今まで生きていたな。」
「……。」
リリアが慌てる。
「男爵様!」
しかし。
俺は続ける。
「魔物が出る場所なのに。」
「防壁は低い。」
「武器も不足。」
「避難場所もない。」
「これでは。」
「襲われて当然だ。」
村人たちは黙る。
「……。」
よし。
厳しい言葉。
嫌われる。
そう思った。
しかし。
村長は。
深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
「?」
「そこまで見てくださった方は。」
「今までいませんでした。」
「……。」
「皆さん。」
「魔物が怖いと言っても。」
「我慢しろと言われるだけでした。」
「でも。」
村長は荒れた村を見る。
「男爵様は。」
「最初に問題を見つけてくださった。」
「違う。」
「ただ事実を言っただけだ。」
「はい。」
村長は笑う。
「だからこそです。」
「……。」
まただ。
何を言っても。
良い方向へ取られる。
その時。
「男爵様。」
若い女性が近付いてきた。
茶色の髪。
農作業用の服。
だが。
目には強い意志がある。
「お願いがあります。」
「断る。」
即答。
女性が少し驚く。
「まだ何も言っていません。」
「面倒そうだから。」
「……。」
リリアが小声で言う。
「早いです……。」
女性は少し笑った。
「では。」
「簡単に言います。」
「村を。」
「守ってください。」
「……。」
俺は答えない。
守る。
それは。
悪役のすることではない。
しかし。
目の前には。
怯えている村人。
傷ついた家。
困っている人々。
「……。」
ため息。
「魔物の巣はどこだ。」
女性の目が輝く。
「え?」
「場所を言え。」
「調査する。」
リリアが微笑む。
セレナも小さく笑った。
「やっぱり。」
「何だ。」
「いえ。」
北部で。
新たな勘違いが始まった。
第93話を読んでいただきありがとうございます!
北部編が始まりました。
アルベルトは嫌われるために厳しい言葉を選んでいますが、現地の人々には「本気で問題を見てくれている」と受け取られてしまいます。
次回、北部を苦しめる魔物の正体へ迫ります!




